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第六章 友人からお使いを頼まれました
念願のおやつの時間です
しおりを挟む「大変でしたね、マリエールさん」
一枚目のスフレパンケーキを頬張ってると、二枚目を持って来てくれたニコさんから、労いの言葉を貰った。勿論、おかわりしますよ。
「もう、伝わってるんですか?」
食べてる手を止める。
二時間前のことだよ。驚きだわ。
「二時間あれば十分だよ。それに、魔封じの腕輪をされたとなれば、尚更だね」
ニコさん、簡単に言ってるけど、結構凄いことだよ。さすが、ニコさん。情報網凄っ。
それに、スフレパンケーキも最高!! フワフワでとても美味しい。口に入れた途端に溶けちゃう。卵白の匂いも全くしないよ。私が今まで食べてきたパンケーキの中で、堂々の一位だわ。これから先、ニコさんのスフレパンケーキを超えるパンケーキはないかもしれないわ。
「いい気味だな」
隣で吐き捨てるように言うのは神獣様。マズルをテカテカに光らせて可愛い。後で、マズルを拭いてあげなくちゃ。
「やっぱり、神獣様も知っていたのですね」
ニコさんが言った。
「知っていて当然ではないか。儂と一緒にいたのじゃ」
それに答えたのは魔王様。何故か、魔王様も一緒です。魔王様も甘い物に目がないからね~。
「一緒にいなくて、すまなかった。マリエール」
しょぼんとする神獣様。
「気にしないでください。それにしても、まさか、ダークエルフが直談判に来てるとは思いませんでしたよ」
普通なら、恥ずかしくて引きこもりになるよね。私だったら田舎に引っ込むわ。ましてや、魔王様を信仰している信者でしょ。その魔王様に拒否されたら、尚更出て来れないよね。這いつくばってでも、影から見守りたいタイプには見えないし。もしそうなら、そもそも第一魔術団に面接を受けに来たりはしない。
「魔王様に対する忠誠心にも格差があるのですよ」
苦笑しながら、ニコさんは答える。
「ですよね。でなければ、第一魔術団の面接受けには来ませんよね。厚顔無恥の極みですよね。受かるとでも思ってたのかしら?」
どこから来る、その自信。
「思っていたのだろう。でなければ、受けには来ぬわ」
神獣様が会話に加わる。
「それは、上位種だからですか?」
十中八九そうだと思ってたけど、訊いてみた。
「まぁ、そうじゃのう。奴らは、矜持は高いからのう。魔力も比例しておるから何も言えん」
魔王様が苦笑しながら答えてくれた。
「彼らの矜持は、魔王様に如何に忠誠を示せるか、ですけどね」
なるほど。ニコさんの説明で理解したわ。
「なら、あの馬鹿たちは上位種の中でも下位の奴らってことですね、ニコさん」
「そういうことになりますね」
よく聞く話だわ。
「……魔族も人間もかわりませんね。我が国にも、高位貴族出身だから何でも許される、自分は優秀だと勘違いする馬鹿はいましたもの。そういう奴ほど、変な方向に矜持が高かったですね。認められないのは、社会が悪いとかほざいて。他者のせいにするところも、よく似てますね」
にこにこと微笑みながら言った。
ほんと、よく似てる。違うのは見た目だけ。中身は、魔族も人も大差ない。優秀な者はいるし、優秀じゃない者もいる。愚かな者は、どこまでも愚かなのも同じ。能力差はあるけど、人族はそれを補うモノを発明し続けてきた。
会話ができるってことは、意思疎通ができるってことよ。
なのに、今も人族と魔族の溝は深い。
前魔王がアレクに討伐されてから、魔族は姿を消した。結果、接点はなくなった。
それに人族の中は、今だに魔物も魔族が生み出したモノだと信じている人も多い。学術的に違うって証明されてるのにね。
悲しいな。
とても悲しい。
でも、スフレパンケーキは凄く美味しいよ。
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