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第七章 痺れを切らした婚約者が襲来しました
平凡な容姿は武器になります
しおりを挟む私が大神殿に身を寄せていることは、おそらく王城とグリード公爵家には届いているはず。だけど、大聖女様とカイン殿下のおかげで、私に接触できないみたい。いずれ、相対することもあると思うけど、今は正直勘弁して欲しい。私にはやるべきことがあるから。
やるべきことって、当然、私の立場と置かれた状況を知ることよ。こういう大事なことは、自分の目で直接確かめないとね。
というわけで、変装してのり込みます。
こういう時って、平凡な容姿って武器になるのよね。少し髪の色と目の色を魔法で変えるだけでいいから。あとは、念のために眼鏡でも掛けとこうかな。それでじゅうぶんね。
ちなみに、これがカイン殿下なら即バレるわね。全身から出ているキラキラ感は、ほんの少し容姿を変えたくらいでは到底消えないから。
なので、動くのは私一人です。
王都で私の護衛は必要ないけど、神獣様が姿を消したまま一緒に来てくれるみたい。心強いくて嬉しいな。
最初にやって来たのは、私たちが通っていた学園。
制服は、昨日の晩、こっそりと私の部屋から拝借してきた。ほんと、転移魔法って凄いよね。使い方間違ってるかもしれないけど。
貴族と平民、同じデザインの制服で助かったよ。デザインが違ったら、平民用の制服用意しなくちゃいけなかったもの。その間に、カイン殿下に手を回される可能性もあるし。助けてもらってるけど、じゅうぶん考えられるからね。この件に関しては、スピード勝負なの。
平凡な容姿をさらに野暮ったくしたら、平民の苦学生の出来上がり。あとは堂々としてればいい。大概の貴族は、平民の顔を覚えていないからね。困った時は、認識阻害の魔法を掛ければ大丈夫。
実際、バレてないからね。
久し振りに学園に登校すると、すぐに変化に気付いた。パワーバランスが完全に逆転していたの。
学園の一番は当然カイン殿下。
でも二番目は、私ではなく、隣国の王女様だった。
完全に、私は忘れられていたわ。まぁそれは、別に構わないけど。
問題は王女様。
直接会ったことがないから、私が回復している間に入園したのね。表向きは留学って形になってるけど、どうやらそうではないらしい。勉学よりも婚活。っていうか、自ら高らかに公言してたからね。
自分がこの国の王妃になるってね。
未来の王妃としての資質に関しては問題ありって思うけど、この学園で彼女を止める人はいないみたい。ある程度の成績をとってたら、学園側も文句はないでしょ。生活方面でよほどのことがない限り。学園も商売だから。
それにしても、注意する人いないのかな。あまりにも赤裸々すぎるわよ。なんとしても、カイン殿下を落とすって息巻いてたわ。あの勢いなら、少々強引な手を使ってきそうね。同時に、私のことをこけおろすことも忘れていなかったわ。一応、まだカイン殿下の婚約者で他国の公爵令嬢なのにね。それを諫める者は誰もいない。それはそれで問題よね。
王女様は吐き捨てる。
呪い持ちの醜い女とーー。
完全に呪いが解けたとはいえ、一度、呪いで死んだわけだし、そう思われてもしかたないわ。いくら王室と大聖女様が否定しても、胸の内に燻り続けると思う。自然な流れよね。
そんな女が、未だに王太子の婚約者の地位にいる。見苦しい。それが、王女様の言い分。おそらく、貴族の中にも、その考えが蔓延してるわね。王女側に人が流れてる。嫌な流れだわ。
あのカイン殿下がそれに気付かないわけない。今は違うかもしれないけど、必死で流れを変えようとしたはず。それで、この状況。
現状は、考えていたよりも悪かったわね。
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