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52 とんでもない台詞が降ってきた
しおりを挟む「未歩は、今日も一成さんの所でお泊まりですか?」
一成って、お祖父ちゃんのことね。
「そうみたいです。なんでも、明日早いから、そのまま泊まるみたいです」
晩酌セットを縁側に運んで来ると、私はいつもと同じように陽平さんの隣に腰を下ろした。
「だから、機嫌が悪いんですね」
やけに、明るい声で言われると、なんか腹が立つ。
「悪いですか」
ぶっきらぼうな返答に、陽平さんは苦笑する。
仲が良いのはいいんだよ。でもね、距離縮め過ぎじゃない? 二人が仲が良いのは嬉しいんだけど、
「心配しなくても、一成さんと未歩の一番は一葉さんですよ」
焼き餅妬いてるって思われたわ。少しムッとする。
「そこまで、子供じゃありません」
陽平さんの言葉は嬉しかったけど、素直に受け入れられない。恥ずかしいのが先行して。そういう所が、子供なんだけど。
「……一葉さん」
陽平さんに呼ばれて、視線を彼に向けた。
「なんですか?」
イケメンに見詰められると照れるわ。少しは慣れたつもりだけど、この距離はまだ無理。さり気なく視線を外し、少し横にズレようとしたら、
「僕の一番も貴女ですよ」
とんでもない台詞が降ってきた。
「えっ!?」
反射的に顔を上げた。
瞬間、息が止まる。
至近距離に、陽平さんの顔があったから。
目をまん丸くする私。
陽平さんは首や耳まで真っ赤にして逃げ出した。
え~陽平さんが逃げ出すの!?
その結果、一人残された私は当然パニクるよね。
「ーーだから、私の所に逃げ込んで来たのね」
逃げ込んだ先は、お祖父ちゃんの家。
飛び込んだ先は、未歩ちゃんの胸の中。
そして、事情を白状した途端、襲ってきたのは自己嫌悪の嵐。
「ど、どうしよう!? 変な誤解しちゃった!! まさか、あの陽平さんが、私になんか、そんな気を持つわけないのにね。あ~明日から、どんな顔をしたらいいのよ!!」
頭を抱えている私に、未歩ちゃんは呆れたような溜め息を吐いた。ポカリと頭を小突かれる。よく、日向さんにもされたな……
「未歩、酷い!!」
私は未歩ちゃんに抗議した。すると、さらに呆れられた。
「どうして、素直に受け取れないのよ。あんなにあからさまな態度なのに。陽ちゃん可哀想。桜ちゃん、自己肯定低過ぎだよ」
「そんなことない!! 現実を知ってるだけよ」
「桜ちゃん、鏡見たことある? 他の人に言わない方がいいレベルの容姿してるのに、勿体ない。日本人形のように可愛いのに」
「それは、元妹の方」
断言するわ。あの子は人形のように可愛くて庇護欲をかられる生き物だった。私は正反対。平凡な容姿で陰キャ。そんな私が、可愛いわけないじゃない。
「桜ちゃんの元家族、マジ許せないわ。いい、桜ちゃんは可愛いの!! そして、誰からも愛されてるの、わかった!!」
真剣な顔で未歩ちゃんは言う。なんか、怒られてるみたい。でもそれが、嬉しいって感じてる。
「慰めでも、嬉しいよ」
「慰めじゃない!!」
これは本気で怒ってるみたい。
なんで?
首を傾げる私に、未歩ちゃんはこの部屋にきて最大の溜め息を吐いた。
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