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「お前の姉は本当に酷い姉だな。そんな風にしてまで、おれの気を引きたいと見える」
後ろから伸びてきた腕がシーラを引き寄せた。
あーあ、出たよ。おれ様カッコいいだろう人間。自信家なのはいいコトなのかもしらないけど、物事には限度があるのよね。
周りに害を与えてる時点で、ホントにないわぁ。それに私、全く自分で捨てたモノになんて興味などないし。ああああ、うざーい。
「本当にいらないので、結構です。興味を引く理由も全くありません。私にはマルク様がいるので、間に合ってますわ」
「そんなこと言って、つっかかってきているのが興味がある証拠だろう」
「突っかかってきているのは、アレン様ではないですか? お仕事が上手くいかないのでしたら、シーラにでも手伝ってもらえばいいではないですか」
「シーラは今、大事な時なのだぞ」
アレンはシーラのお腹に手を当て、さも私が非常識かのように非難する。
いや確かに大事な時期かもしれないけど、それを引っ張りまわしてるのはまず誰なのかしらね。そしてそういう茶番は私の関係ないところでやってもらいたいんだけど。
「そうですか。でもそうであったとしても、私には何にも関係ないことですわ。仕事の手が足りないのでしたら、どなたか雇えばいいではないですか。むしろこんな風に私に纏わりつくなど、誤解されてしまいますよ」
「はっ。少しぐらい着飾って見れるようになったからといって、どこをどうしたらそんな自信が生まれてくるんだ」
いやいや、その言葉そっくりそのまま返すわよ。どこをどうしたら、未だに私が未練があると思うのか。頭おかしいんですかってはっきり言った方がいいのかしら。
「ああ、アレン様はつるぺたが好きでしたものね」
「な、お姉さま! それはどういう意味ですの?」
「え? それはアレン様にお聞きになったら~?」
「アレン様、どういう意味なのですの?」
ふーんだ。普通にそのまま返すと思ったら大間違いなんだからね。
さすがに腕を掴まれ、シーラに言い寄られるアレンを見ていると少しだけ胸がスカッとする。だって本当のことだもの。隠さなくてもねぇ。
まぁ、シーラは私よりも胸が小さいコトがかなりのコンプレックスなんですけど~。
「む、胸が大きくて下品な女が好きではないっていうことだよシーラ」
「……」
アレンをやや睨みつけるシーラは完全には納得していないようだった。
どうせならもっと言い方ってものがあると思うんだけど。元から他人を褒めるってことが、アレン様にはないからね。そういうことは出来ないと思ったのよね。
可愛いとか、君だけだとか。誰にでも同じセリフしか言ってこなかったもの。全く、それで騙される女の子が多いのも困ったもんだんだけど。
それもこれも大概は、あの顔と侯爵家という肩書があるからなのよね。
一時的な火遊びをするんなら良かったのかもしれないけど、なんせあの性格だから。さすがに私という婚約者から盗りたいなんて思ったのはシーラぐらいなのよね。
ある意味、他の女の子たちの方が賢いっていうか、人を見てるってことね。
「こんな不毛な会話を続けているほど私は暇ではないのです。そこをどいていただけますか? 王都で用事がありますので」
「まぁそうだな。こんなところで馬鹿みたいに話をしていても時間の無駄だからな。おれも忙しいんだ。とっとと、うちの屋敷まで来てもらおうか」
「は? 私の話を聞いていましたか? 私には用事があるって。いい加減にして下さい」
「あー。そんな口を聞いてもいいんですの、お姉さま」
シーラは勝ち誇ったような笑みを浮かべた。そして視界を遮るように立っていた馬車の扉の前から、数歩横にずれる。
その先にあったもの。護衛のような男に後ろ手に拘束をされ気を失っているのか、その表情を見ることが出来ない人が二人……。
全身の血がまるで沸騰したかのように、足からぞわぞわと頭に上っていくような感覚を私は初めて感じた。
後ろから伸びてきた腕がシーラを引き寄せた。
あーあ、出たよ。おれ様カッコいいだろう人間。自信家なのはいいコトなのかもしらないけど、物事には限度があるのよね。
周りに害を与えてる時点で、ホントにないわぁ。それに私、全く自分で捨てたモノになんて興味などないし。ああああ、うざーい。
「本当にいらないので、結構です。興味を引く理由も全くありません。私にはマルク様がいるので、間に合ってますわ」
「そんなこと言って、つっかかってきているのが興味がある証拠だろう」
「突っかかってきているのは、アレン様ではないですか? お仕事が上手くいかないのでしたら、シーラにでも手伝ってもらえばいいではないですか」
「シーラは今、大事な時なのだぞ」
アレンはシーラのお腹に手を当て、さも私が非常識かのように非難する。
いや確かに大事な時期かもしれないけど、それを引っ張りまわしてるのはまず誰なのかしらね。そしてそういう茶番は私の関係ないところでやってもらいたいんだけど。
「そうですか。でもそうであったとしても、私には何にも関係ないことですわ。仕事の手が足りないのでしたら、どなたか雇えばいいではないですか。むしろこんな風に私に纏わりつくなど、誤解されてしまいますよ」
「はっ。少しぐらい着飾って見れるようになったからといって、どこをどうしたらそんな自信が生まれてくるんだ」
いやいや、その言葉そっくりそのまま返すわよ。どこをどうしたら、未だに私が未練があると思うのか。頭おかしいんですかってはっきり言った方がいいのかしら。
「ああ、アレン様はつるぺたが好きでしたものね」
「な、お姉さま! それはどういう意味ですの?」
「え? それはアレン様にお聞きになったら~?」
「アレン様、どういう意味なのですの?」
ふーんだ。普通にそのまま返すと思ったら大間違いなんだからね。
さすがに腕を掴まれ、シーラに言い寄られるアレンを見ていると少しだけ胸がスカッとする。だって本当のことだもの。隠さなくてもねぇ。
まぁ、シーラは私よりも胸が小さいコトがかなりのコンプレックスなんですけど~。
「む、胸が大きくて下品な女が好きではないっていうことだよシーラ」
「……」
アレンをやや睨みつけるシーラは完全には納得していないようだった。
どうせならもっと言い方ってものがあると思うんだけど。元から他人を褒めるってことが、アレン様にはないからね。そういうことは出来ないと思ったのよね。
可愛いとか、君だけだとか。誰にでも同じセリフしか言ってこなかったもの。全く、それで騙される女の子が多いのも困ったもんだんだけど。
それもこれも大概は、あの顔と侯爵家という肩書があるからなのよね。
一時的な火遊びをするんなら良かったのかもしれないけど、なんせあの性格だから。さすがに私という婚約者から盗りたいなんて思ったのはシーラぐらいなのよね。
ある意味、他の女の子たちの方が賢いっていうか、人を見てるってことね。
「こんな不毛な会話を続けているほど私は暇ではないのです。そこをどいていただけますか? 王都で用事がありますので」
「まぁそうだな。こんなところで馬鹿みたいに話をしていても時間の無駄だからな。おれも忙しいんだ。とっとと、うちの屋敷まで来てもらおうか」
「は? 私の話を聞いていましたか? 私には用事があるって。いい加減にして下さい」
「あー。そんな口を聞いてもいいんですの、お姉さま」
シーラは勝ち誇ったような笑みを浮かべた。そして視界を遮るように立っていた馬車の扉の前から、数歩横にずれる。
その先にあったもの。護衛のような男に後ろ手に拘束をされ気を失っているのか、その表情を見ることが出来ない人が二人……。
全身の血がまるで沸騰したかのように、足からぞわぞわと頭に上っていくような感覚を私は初めて感じた。
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