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第4章 ここから始まる勇者様?

三十八日目⑧ トラブルはいつでもやってくる

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 ここでも頑張って、眠り苔を大量に回収することができた。
 ポール曰く、大収穫だといっても過言ではないそうだ。

 そして俺の足は、大ダメージを受けていた。
 ものすごく不快です……

 ポールに聞いたけど、ポールはフルプレート系のアーマーを使っているので、第2層に入ってからは足元はぐちゃぐちゃだったらしい。
 それが当たり前だから、あまり気にしたことが無いそうだ。

 うん。

 例のあれ、気を付けないとな……
 かゆくなるのは勘弁!!

 水が引き始め、眠り苔の残りが水から顔を出し始めた。
 残りの数は少ないものの、またボフボフと音をたてながら胞子をばら撒き始めた。
 きっとこの胞子が地面に根付き、また眠り苔の群生地を形成するのだろうな。



 眠り苔の群生地を離れ、見渡しのいい広い空間にやってきた俺たちは、一度休憩を挟むことにした。
 ここまで軽い休憩は挟んできてものの、長い休憩はとっていなかった。

「それにしてもブーツがぐちゃぐちゃだよ……」
「それは仕方がないわよ。慣れるしかないわね。」

 俺がそう愚痴ると、デイジーが諦めた表情を浮かべていた。
 冒険をしていれば日常茶飯事。
 これも一つの洗礼なのかも知らないな。
 だけど、それをどうにか出来ないもんかな?
 靴に乾燥材的なモノを仕込むとか。
 そう考えていると、クリエイター魂がむくむくと元気になってきた。
 その辺はガンテツさんと相談してみるのも一興かもしれないな。

「普段みんなってどうやってるんだ?」
「俺はほとんど諦めた。戻ってから【ドライ】の魔晶石と、【クリーン】の魔晶石できれいにするだけだな。」
「私もそうかな~」

 なるほど、ポールとデイジーは魔晶石で対応してるのか。
 エルダはどうなんだろうな。

「エルダはどうしてるの?」
「え?私?私はそうねぇ~。前はポールたちと同じだったけど、【魔光陣】を教わってからはそれを使ってるわね。【魔光陣】ってどこにでも描けるでしょ?だからね……」

そう言うとエルダはポールの足元を見つめていた。

「ヒート。」

 すると、ポールのブーツから蒸気が上がり始めた。
 ポールはとても驚いた表情を浮かべている。
 何があったんだ?

「これは驚いた。ブーツが渇いた。もしかして【クリーン】もできるのか?」
「待ってね……。クリーン。」

 そしてまたポールは驚きを隠せずにいた。

「いはやは、【魔光陣】は何でもありだな。ブーツの蒸れた感じとかが無くなった。」
「やっとここまで出来るようになったのよ。レイさんには感謝ね。」

 まじかよ!?
 エルダのマルチっぷりが日に日に増して来ている気がする。
 つか、俺の立場がどんどん脅かされている?!
 ポールの戦闘指揮力。
 デイジーの状況判断力。
 エルダのマルチプレイヤー。
 本当に俺は恵まれているな。
 シャバズのおっちゃんに感謝しないとな。
 後でオークの霜降り肉でも分けてあげようかな?

 俺たちはエルダに頼んで、ブーツの乾燥をしてもらった。
 おかげさまであの不快感が無くなって、快適になった。
 これはまじでありがたいね。

「本当にエルダって器用だよな。」
「そう?自分が快適になりたいから練習しただけよ。」

 そう言うと少し耳が赤みがかっていたので、おそらく照れ隠しだろうな。
 ほんと、かわいいよな。

「とりあえず、簡単な食事の補給を済ませよう。デイジー、作り置きの料理出してもらえる?」
「OK~。って机は?」

 そう言われると思ったので俺はあらかじめ用意しておいた木材をアイテムボックスから取り出す。

「机(簡易)×2。椅子(簡易)×4」

 すると木材が光に包まれて、形を変えていく。
 目の前に現れたのは机2卓と4脚の椅子だ。

「ほんといつ見ても不思議な光景ね。」
「だよね~。」

 大丈夫、俺もそう思ってるから。
 材料が一瞬で品物に変わるんだから、常識外れもいいところだな。

「とりあえずここに出して。あと、椅子と机の効果でSPの回復速度上がるからね。そうそう、デイジー。警戒だけお願いしてもらってもいい?」
「まっかせて~」

 デイジーには悪いが、これでゆっくり休憩が取れそうだ。
 ただ、周辺警戒用の魔導具とか作れるようになればもっと快適なんだけど、さすがにそれは欲張り過ぎだな。
 デイジーと協力して作り置きの料理を机に並べていくと、それなりの量になってしまった。
 まあ、ポールもデイジーも食べるから問題ないかな。

「いただきます。」
「「「いただきます。」」」

 ほんとエルダとデイジーには感謝だな。
 マジでうまい。
 今回の料理はサブウェイモドキを数種類作ってくれた。
 肉だけだと飽きるだろうと、魚もの用意してくれたようだ。

「うまい!!」
「あぁ、うまいな。」

 俺とポールは一口食べると、そのうまさに思わず声が出てしまった。
 俺たちの態度を見て、エルダとデイジーは微笑んでいたのが印象的だった。

 あらかた食べ終えて片づけをしようとしたとき、デイジーが何かに気が付いたようだ。

「ん?誰か来る⁉みんな、戦闘準備を始めて!!」

 俺たちは片付けをそこそこに切やめて、戦闘準備を急ぎ始めた。



ガシャンガシャンガシャンガシャン。

 甲冑が動く音が、ホールの先の通路から聞こえてくる。
 そしてそこに姿を現したのは、一人の神官騎士だった。
 だが、その体に左腕は無く、全身が傷だらけで、瀕死の重傷なのが見て取れた。

 またトラブルかよ!?
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