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26:まさに人目を忍んで……
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翌日も森の中での練習となったが、ゴーストはスノーではなく、アズレークが魔法で作り出したものだった。
魔法で作りだしたのだから、本物のゴーストではないと分かっていたのだが。
昨日と同じく霧の中に何体ものゴーストが現れると、リアリティが増し、退治するより悲鳴をあげてしまう瞬間も多々あった……。それでもなんとか魔法で作りだしたゴーストをすべて退治することに成功した。
そして、本日。
今日もまた森の中でゴースト退治だ。
昨日同様、アズレークが魔法でゴーストを作り出すことになった。
でも、今回作り出すゴーストは昨日とは違う。
昨日のゴーストは人の形をとっていたが、今回はモンスタータイプとのこと。そしてモンスターゴーストは聖杯を使い、つまり聖水……塩水で撃退するという。
塩水の効果はすさまじいらしく、一滴ふりかけるだけでも、モンスターゴーストにとっては激痛らしい。聖杯には、アズレークがブリザード魔法をかけてくれている。聖杯から塩水をふりまくと、吹雪のように塩水が、モンスターゴーストに向かうことになっている。だから聖杯一杯分、丸々かける必要はない。だがいざとなれば、聖杯ごとモンスターゴーストに向けて投げるのもありだという。
説明を終えるとアズレークは「ではまず、魔力を送ろうか」と言い、私を大木の前に立たせた。昨晩、雨が降り、地面はまだ湿っている。だから先日から利用している倒木には腰かけず、立った状態で魔力を送られることになった。
大木の前でアズレークと向き合うと、本当に、恋人が逢引きをしてこれからキスをする……そんな風に思えてしまう。
アズレークはいつも通りの黒ずくめで、まさに黒騎士という姿。一方の私はボルドー色のコタルディに、アズレークと同じ黒のフード付きのロングケープを身に着けている。まさに人目を忍んで会っているような雰囲気だ。
「では、送るよ」
私のそんな妄想など気づいていないアズレークは……。
「……!」
いつもは腰に腕を回したり、背中に手を回したりして、私の体を支え、顎を持ち上げて魔力を送るのだが……。今日は私が大木に寄りかかっているからだろう。両手で頬を包むようにして、顔を近づけ、魔力を送りこまれた。
口の中と喉に、熱い魔力の塊が流れ込んでくる。
屋外にいるのに、両手で包まれた頬は温かい。
もちろん送られてくる魔力の塊の方が熱いのだが、アズレークの手も負けないぐらい温かく感じる。
頬を冷ます時のアズレークの手は、ヒンヤリしていた。
でも今は温かい。
もしかして、屋外だと頬が冷えるから、魔法で手を温かくして包んでくれているのだろうか。
きっと……そうなのだろう。
そう思うと、アズレークの優しさに胸が震える。
「今日はこれぐらいにしておこう」
アズレークが頬から手をはなし、両腕を背中に回し、私の体を抱き寄せた。
「今晩あたり、雪が降るかもしれないな。空気の冷たさが、昨日とは違う」
静かに私を抱きしめたまま、アズレークは曇り空を見上げている。その口元から漏れる息は白くなっている。
空気の冷たさ……。
今の私は魔力が体内を巡り、そしてアズレークの胸の中にいるからぽかぽかだった。
「今日でモンスターゴーストの討伐を成功させよう。明日からは屋敷で新たな練習だ」
「……分かりました」
「無理して声を出さなくていいのに」
笑みをもらしたアズレークは……私の髪に顔を埋めた。
魔法で作りだしたのだから、本物のゴーストではないと分かっていたのだが。
昨日と同じく霧の中に何体ものゴーストが現れると、リアリティが増し、退治するより悲鳴をあげてしまう瞬間も多々あった……。それでもなんとか魔法で作りだしたゴーストをすべて退治することに成功した。
そして、本日。
今日もまた森の中でゴースト退治だ。
昨日同様、アズレークが魔法でゴーストを作り出すことになった。
でも、今回作り出すゴーストは昨日とは違う。
昨日のゴーストは人の形をとっていたが、今回はモンスタータイプとのこと。そしてモンスターゴーストは聖杯を使い、つまり聖水……塩水で撃退するという。
塩水の効果はすさまじいらしく、一滴ふりかけるだけでも、モンスターゴーストにとっては激痛らしい。聖杯には、アズレークがブリザード魔法をかけてくれている。聖杯から塩水をふりまくと、吹雪のように塩水が、モンスターゴーストに向かうことになっている。だから聖杯一杯分、丸々かける必要はない。だがいざとなれば、聖杯ごとモンスターゴーストに向けて投げるのもありだという。
説明を終えるとアズレークは「ではまず、魔力を送ろうか」と言い、私を大木の前に立たせた。昨晩、雨が降り、地面はまだ湿っている。だから先日から利用している倒木には腰かけず、立った状態で魔力を送られることになった。
大木の前でアズレークと向き合うと、本当に、恋人が逢引きをしてこれからキスをする……そんな風に思えてしまう。
アズレークはいつも通りの黒ずくめで、まさに黒騎士という姿。一方の私はボルドー色のコタルディに、アズレークと同じ黒のフード付きのロングケープを身に着けている。まさに人目を忍んで会っているような雰囲気だ。
「では、送るよ」
私のそんな妄想など気づいていないアズレークは……。
「……!」
いつもは腰に腕を回したり、背中に手を回したりして、私の体を支え、顎を持ち上げて魔力を送るのだが……。今日は私が大木に寄りかかっているからだろう。両手で頬を包むようにして、顔を近づけ、魔力を送りこまれた。
口の中と喉に、熱い魔力の塊が流れ込んでくる。
屋外にいるのに、両手で包まれた頬は温かい。
もちろん送られてくる魔力の塊の方が熱いのだが、アズレークの手も負けないぐらい温かく感じる。
頬を冷ます時のアズレークの手は、ヒンヤリしていた。
でも今は温かい。
もしかして、屋外だと頬が冷えるから、魔法で手を温かくして包んでくれているのだろうか。
きっと……そうなのだろう。
そう思うと、アズレークの優しさに胸が震える。
「今日はこれぐらいにしておこう」
アズレークが頬から手をはなし、両腕を背中に回し、私の体を抱き寄せた。
「今晩あたり、雪が降るかもしれないな。空気の冷たさが、昨日とは違う」
静かに私を抱きしめたまま、アズレークは曇り空を見上げている。その口元から漏れる息は白くなっている。
空気の冷たさ……。
今の私は魔力が体内を巡り、そしてアズレークの胸の中にいるからぽかぽかだった。
「今日でモンスターゴーストの討伐を成功させよう。明日からは屋敷で新たな練習だ」
「……分かりました」
「無理して声を出さなくていいのに」
笑みをもらしたアズレークは……私の髪に顔を埋めた。
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