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第47話

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なんとかイカを飲み込んだ四葉は、タコのようになって怒った。
「う、嘘だ!そんな訳ないし!」
「何で?」
「だって、だって…」
目線をそらして狼狽える四葉の頬を撫でる。
「八潮さんと付き合うんでしょ。」
「それお前の勘違いだから。」
「好きって言ってたじゃん!八潮さんだって、郷田のこと好きじゃん!」
「ないない、絶対にない。」
あの四葉ガチ女が、自分を好きになるなんてこと天地がひっくり返ってもない。
「だって、八潮さん…私も郷田もお互いに好きじゃないって言ったら喜んでたもん。」
「そりゃ喜ぶだろうな、八潮さんは四葉が好きだから。」
「は?」
信じられないと、目も口も開いている。
志信はすかさず、つくねを突っ込んだ。
「俺と二人だと敵意剥き出しで、反抗的なんだぞ。今日だって、俺のとっておき四葉画像を今すぐ見せろって話になって、間の悪いタイミングでお前が来たから。」
四葉は必死に咀嚼して飲み込んだ。
「ちょっと、私のとっておき画像って何よ!」
「え、それはちょっと…」
「は?そんなヤバいの隠し撮りしたわけ?」
「いや、画像はヤバくはないけど…俺の身がヤバいっていうか…」
「見せなさいよ。」
低くなった声に怯え、仕方なくスマホの画面を見せた。
「はー?!これ見せたの?!バカなの?!どう見たって事後って分かるじゃん!」
「いや、それも含めて牽制っていうか…」
「信じらんない、最低!あんたって、好きな女の裸を他人に見せるんだ?」
つい志信の口元が緩む。
「ニヤニヤしてんじゃない!」
「申し訳ありません、二度といたしません。」
「当たり前でしょ!」
フーフー怒る四葉に、志信の心臓が血流を速める。ついでに下半身も元気になりそうだ。
「郷田は…私なんかより、もっと普通の女の子と幸せになった方がいいのに。何で私なんか…!」
「いや、好きになんない方がおかしいから。こんな可愛い女、他にいるかよ。」
四葉は涙目で必死に食い下がる。
「だって、脅してアナル侵すんだよ?」
「いやまあ、慣れたら気持ちいいし。」
「付き合ってないのに、セックスばっかしてるじゃん。」
「俺は途中から付き合ってるつもりだったし。」
グッと言葉を詰まらせて、四葉は出し巻き卵を頬張った。
「可愛い上にエロいって、男的には最高の女だろ。普段はツンケンしてるけど、ベッドの中では甘えてくるって、どんなご褒美だよ。」
恥ずかしいのか、イカの一夜干しも全部突っ込んで頬が膨れている。
「気が強くて、意地っ張りで強がりで、俺は振り回されてばっかりだけど。四葉といると楽しい……口からゲソ出てんぞ。」
プイッと顔を避け、咀嚼を続けている。
「四葉の全部、受け止めるし…愛してるよ。」
四葉の膨らんだ頬は、次から次へと溢れる涙で濡れていた。
「だから、私なんかって言うな。俺にとって、一番特別なのは、お前なんだし。」
やっとイカを食べ終えた四葉は、志信のビールジョッキを掴んで全部飲み干した。
「おい、大丈夫かよ!」
「…抱いてくれなきゃ、ここで自慰してやる。」
「すみませーん、お勘定お願いします!」
志信は慌てて会計を済ませた。

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