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6 出会い
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仕立て屋に来て貰い、服を数着と下着の注文をし、仕立て屋が帰って行った。鞄に持ってきていた服に着換え、漸く一息吐けるかと思いきや、アニマの一言でそれは一変した。
「奥様、そろそろ用意しなければ……」
「ああそうね。ティファニア、手伝って貰いたいのだけど……無理かしら?」
「お手伝いならしますよ、おばあ様」
本当は疲れているが、折角の祖母からのお誘いだ。断る理由もない。祖母とアニマについて行くと、そこはキッチンだった。
「ここで何をするんですか?」
首を傾げるティファニアに、祖母はフフ、と笑いながら袖を捲った。つられて、ティファニアも袖を捲る。
「クッキーを焼こうと思うの。急いで作らなければならないから、手伝ってほしいの」
そういうことだったのか。昔はお菓子作りの好きな祖母と共にお菓子を作ったのが懐かしく感じられる。ティファニアは笑みを浮かべながら、小さく頷いた。
「嬉しい、おばあ様とお菓子作りがまたできるだなんて」
「それは此方の台詞よ。嬉しいわ」
そんなやり取りをしながら、手を動かしていく。小さい頃から祖母のお菓子作りに協力していたのもあり、自宅ではキッチンを借りて孤児院に配り歩いていた。それが功をなし、この街までの旅費を稼ぐことが出来たのだった。
昔よりも手際のよくなったティファニアにこっそり笑みを向ける祖母に気付かず、黙々とクッキーの生地を型抜きしていく。花や蝶、うさぎの形など色々な形に型抜き、ゆっくりと焼いていく。香ばしい匂いがし出した頃合いに、祖母は庭の休憩スペースに紅茶とジャムなどを用意しだした。五つある椅子に疑問を抱くが、誰かくるのかしら? そう考えていると、玄関からベルの音が聞えた。
「はいはい、只今参ります」
アニマはゆっくりと歩きだし、玄関に向かった。入れ替わるように祖父が来て、椅子に座ったということは、ここで皆でお茶会をするのだろう。ティファニアは祖母と共に焼き上がり熱の程よく冷めたクッキーを皿に盛り付けていく。すると、アニマの後に誰かいるのが見えた。
「ミスター、ミセス、今日もお招きいただきありがとう」
すらっとした長身に、真っすぐ通った鼻筋、切れ長の青い瞳に薄い唇。それらを纏めるように輝く金の髪は美しく、端正のとれた外見に思わず見惚れてしまった。
「おや、今日はお客さんがもう一人いるのかい?」
「ああ、私達の孫のティファニアだ。暫く此処にいて貰うことになっている」
祖父の言葉に頷き、青年はティファニアの側に歩み寄ってきた。そっと手を取られ、手の甲にキスを落とされる。
「はじめまして、レディ。僕はイグニス。名前を窺っても?」
「ティ、ティファニアです」
「綺麗な名前だ。宜しく、ティファニア嬢」
にこやかに微笑むその顔も格好よく、ティファニアは頬が紅潮していった。恥ずかしさにさっと手を離し、後ろを向き頬に手を当てる。なんでかしら、アーデルでもこんな風になったことないのに……。
「さあさあ、イグニスさんも来たことだし、皆でお茶会ににましょう」
祖母の掛け声に従い、イグニスの向かいの椅子に座るティファニア。視線が合うたびににこやかに微笑まれ、その度に頬を赤く染めてしまっていたのだった。
「奥様、そろそろ用意しなければ……」
「ああそうね。ティファニア、手伝って貰いたいのだけど……無理かしら?」
「お手伝いならしますよ、おばあ様」
本当は疲れているが、折角の祖母からのお誘いだ。断る理由もない。祖母とアニマについて行くと、そこはキッチンだった。
「ここで何をするんですか?」
首を傾げるティファニアに、祖母はフフ、と笑いながら袖を捲った。つられて、ティファニアも袖を捲る。
「クッキーを焼こうと思うの。急いで作らなければならないから、手伝ってほしいの」
そういうことだったのか。昔はお菓子作りの好きな祖母と共にお菓子を作ったのが懐かしく感じられる。ティファニアは笑みを浮かべながら、小さく頷いた。
「嬉しい、おばあ様とお菓子作りがまたできるだなんて」
「それは此方の台詞よ。嬉しいわ」
そんなやり取りをしながら、手を動かしていく。小さい頃から祖母のお菓子作りに協力していたのもあり、自宅ではキッチンを借りて孤児院に配り歩いていた。それが功をなし、この街までの旅費を稼ぐことが出来たのだった。
昔よりも手際のよくなったティファニアにこっそり笑みを向ける祖母に気付かず、黙々とクッキーの生地を型抜きしていく。花や蝶、うさぎの形など色々な形に型抜き、ゆっくりと焼いていく。香ばしい匂いがし出した頃合いに、祖母は庭の休憩スペースに紅茶とジャムなどを用意しだした。五つある椅子に疑問を抱くが、誰かくるのかしら? そう考えていると、玄関からベルの音が聞えた。
「はいはい、只今参ります」
アニマはゆっくりと歩きだし、玄関に向かった。入れ替わるように祖父が来て、椅子に座ったということは、ここで皆でお茶会をするのだろう。ティファニアは祖母と共に焼き上がり熱の程よく冷めたクッキーを皿に盛り付けていく。すると、アニマの後に誰かいるのが見えた。
「ミスター、ミセス、今日もお招きいただきありがとう」
すらっとした長身に、真っすぐ通った鼻筋、切れ長の青い瞳に薄い唇。それらを纏めるように輝く金の髪は美しく、端正のとれた外見に思わず見惚れてしまった。
「おや、今日はお客さんがもう一人いるのかい?」
「ああ、私達の孫のティファニアだ。暫く此処にいて貰うことになっている」
祖父の言葉に頷き、青年はティファニアの側に歩み寄ってきた。そっと手を取られ、手の甲にキスを落とされる。
「はじめまして、レディ。僕はイグニス。名前を窺っても?」
「ティ、ティファニアです」
「綺麗な名前だ。宜しく、ティファニア嬢」
にこやかに微笑むその顔も格好よく、ティファニアは頬が紅潮していった。恥ずかしさにさっと手を離し、後ろを向き頬に手を当てる。なんでかしら、アーデルでもこんな風になったことないのに……。
「さあさあ、イグニスさんも来たことだし、皆でお茶会ににましょう」
祖母の掛け声に従い、イグニスの向かいの椅子に座るティファニア。視線が合うたびににこやかに微笑まれ、その度に頬を赤く染めてしまっていたのだった。
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