凪の座礁船と海図屋 〜婚約破棄された元商家の娘、難所と呼ばれる暗礁で灯台守になる〜
「私の海図なしに、この海を渡れると思わないことね」
大陸有数の大商船団で主任計数係を務めていたエルザは、潮の呼吸と星の運行を完璧に読み解く孤高の海図屋。
だが、利益と功績に目を眩ませた婚約者レナートと異母妹に裏切られ、無謀な航路計画の責任を転嫁されて婚約破棄。航行不能の魔境と呼ばれる「骸骨礁」の巨大座礁船へ、捨て駒として追放されてしまう。
しかし、エルザは絶望しなかった。
鉄甲船の残骸を拠点に作り替え、独自の観測で暗礁の海流周期を解き明かした彼女は、見張り台に巨大な鯨油灯台を点灯させ、遭難者たちを救う「海の聖域」を築き始める。
そんな嵐の夜、座礁寸前のところをエルザの信号に救われたのは、近海を支配する冷酷無比な私掠艦隊の提督、ヴァルデマー・フォン・アルトハイムだった。
傷の手当てを通じて激しくプライドをぶつけ合う二人。エルザの比類なき知性と凛とした美しさに魅せられた男は、傲慢な仮面を剥ぎ取られ、狂おしいまでの執着と敬愛を彼女に捧げるようになる。
「この灯台の主を抱く権利を持つのは、世界中で俺一人だけだ」
やがて、杜撰な航海で自滅寸前の元婚約者たちが泣きつき、国家の正規海軍が利権を求めて押し寄せる中、エルザは一枚の海図を手に冷徹な取引を開始する――。
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