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不器用2

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『ごめん、舞。22時過ぎる。夕飯食べておいて』
一言だけラインを送って、加奈子は仕事に戻った。
明日から夏季休暇だ。休暇前に終わらせたいことだらけで加奈子は忙しかった。
舞から夏季休暇の間泊まっていいか連絡が来たのは1ヶ月ほど前だった。
プライベートなラインや、社内で仕事の確認の電話をすることはあっても気兼ねなく過ごせるのは久しぶりだった。
(早く仕事終わらせよ)
少しでも早く帰れるようにと、パソコンに向かい合った。

会社を出て最寄り駅につく頃には、宣言通り22時を回っていた。
舞には会社出るときに電話をして、最寄り駅に着く時間を伝えていた。
舞の姿を探して辺りを見回す加奈子の視線がある1点で止まる。
「…え?…岩田くん?」
驚きすぎて立ち止まった加奈子の手を引いて邪魔にならないところに移動する。
「結城さん、お久しぶりです」
まだ状況を上手く把握出来ていない加奈子は、舞に電話をかけた。


『遅いよ!労基に引っかかるじゃない!』
加奈子が何か言う前に電話口の舞に怒られる。
剣幕に圧されるように謝った加奈子は、舞に聞いても無駄な問いかけをする。
「なんで岩田くんがいるの?」
『あんたが一番わかってるでしょ』
そう言って、舞は誰かと電話を代わる。電話口に出たのは美樹だった。
『きちんと、岩田くんと話してね、後悔するよ。ダメでもちゃんと加奈子の口から振ってあげないと、彼が可哀想だよ』
じゃあ、私達はこれで。そう言って唐突に電話が切れた。
加奈子の様子を面白そうに見守っていた晴人に向かってため息混じりに伝える。
「とりあえず、家に行こっか」

加奈子の家は駅から数分のところにある。その僅かな時間、二人は並び無言で歩く。話さない分、隣にいる存在を妙に意識してしまう。
先程の美樹の言葉が脳内にリフレインする。
加奈子は晴人に気付かれないように、そっと息を吐いた。


決断する瞬間は思いの外早くやってきた。
家に着き、部屋の奥へ向かおうとする加奈子の手を晴人は掴んだ。
「…俺とのこの先を…全く考えられないなら、この場でフッてください。帰って結城さんのこと忘れる努力します」
緊張しているのか、夏なのにやけにひんやりしている手だった。
「佐藤部長に全部聞きました。…結城さんが大阪来たのも俺のせいだとわかっています。…それでも俺は…」
「別に、岩田くんのせいじゃない。私が選んだ道だから後悔はしていないよ」
「…なら、今選んでください。この先の加奈子の人生に俺が必要かどうか。…俺は、加奈子のことが好きだよ。フラレたのに未練がましくここまで会いに来るくらい、本気で惚れてる」
掴まれている手が痛いくらいに握られる。暗闇に慣れた目は、晴人の苦しそうな表情を捉える。

加奈子も分かっていた。あんなメモ1枚で到底晴人は納得しないだろうと。それでも、直接は言えなかった。だから、晴人が寝ている内にそっと出ていき、晴人の連絡先をブロックしたうで、消した。
そうして、強制的に終わらせた気持ちはずっと胸の奥に燻っていたが、見ないふりをしていた。だが、今日晴人にあって、蓋をしていた思いが溢れてくる。

「…今、付き合えって言われたらそこまで考えられない。…せっかく企画通って自らの手で売ることが出来るから、この1年はがむしゃらに仕事するって決めたの」
晴人は黙って聞いていた。表情から彼の想いは読み取れない。1つ息を吐いて加奈子は言葉を紡ぐ。
「ただ、岩田くんのことが好きかどうかって言われたら、…好きだよ。だけど、私は仕事と恋愛を両立出来ないから。だから…」
その先は、言えなかった。
晴人の唇が加奈子の言葉を呑み込む。
手とは逆に燃えるような熱に加奈子は酔う。
晴人の舌が侵入してくるのを拒めなかった。
念入りに舌を絡めてくる晴人に加奈子の体は熱を帯びてくる。

いつの間にか、壁に押し付けられている格好になっていた。
体の力が抜けた加奈子は壁と晴人に支えられ、何とか立っていた。
それでも気を抜くと、その場にへたり込みそうになる。晴人は気にせず加奈子の唇を貪る。
やっと解放された時には加奈子は汗だくだった。
「教えてくださいよ。お互いに想い合っているのに付き合えないってどういうことですか?」
「…仕事優先したいから」
晴人は思わず吹き出す。
「前からいつも仕事優先じゃないですか。今更ですね」
それに、と晴人は続ける。
「結城さんのことです、やりたい仕事が増えることがあっても減ることはないでしょ」
図星の加奈子は目線を逸らす。
そんな加奈子を晴人は抱き寄せた。
「…今私、汗臭いよ」
「俺も汗だくだから気にしません」
そう言いながら晴人はついばむようにキスをした。


クーラーをつけたあと、2人でシャワーを浴びる。
久しぶりに見るお互いの裸体に我慢が出来なかった。コンドームを取りに行く間が惜しかった二人はそのままプレイを始める。
「やぁっ…擦らないでっ!」
「じゃあ、エロい汁垂らさないでくださいよ。挿入してないんだから、汁出さなければ動かせない」
後ろから加奈子の股の間に晴人のペニスを挟み込む。俗に言う素股の状態だ。加奈子の膣内からとめどなく溢れる愛液が潤滑油となり、ローションがなくともペニスを前後に動かすことに問題はなかった。

ペニスでクリトリスをこねるように動かすと加奈子は身を捩らせて悶える。
「んっ…く…やぁっ…っ!」
「あんまり動くと入っちゃうよ。…俺はそれでもいいけど」
そう言いながら、クリトリスの皮をペニスで捲るように動かす。
皮が剥け、ダイレクトにペニスがクリトリスに当たる。その瞬間に鋭い快感が走り、加奈子は身を震わせる。
「っつ…!っくぅ。あっ!…っんぁ…!だめぇ…イッちゃっ!」
久しぶりに男性と肌を合わせた加奈子は晴人に支えられながら達する。
力が抜けた加奈子の体重がペニスにかかる。熱さと、ヌルヌルの感触をよりダイレクトに感じ、晴人は腰の動きを早めた。

「っやぁっ!…まっ!…まってぇ…っ!イきそっ…!またっ…んっあ!」
そう言いながら、太ももを擦りつけ、晴人のペニスを締めつける。膣内とは違った締め付けに晴人も限界が近い。
クリトリスに亀頭がぶつかった瞬間、晴人も爆ぜた。
「っつ…。出します」
晴人もまた久々の逢瀬に予想よりも大量の精を撒き散らした。

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