【完結】公爵家のメイドたる者、炊事、洗濯、剣に魔法に結界術も完璧でなくてどうします?〜聖女様、あなたに追放されたおかげで私は幸せになれました

冬月光輝

文字の大きさ
21 / 25

第二十一話

「エミリア、よくぞ故郷に帰ってきてくれた。お前が罪を犯したと聞いたが、私はそんなはずはないと信じていたよ」

「ごめんね。あなたが苦しんでいるときに何もしてあげられなくて。主人に失礼なく接しなさいと厳しく言い過ぎたかもしれないわ」

「お、お父様、お母様……」

 まず、出迎えてくれたのは父と母でした。両親は目に涙を溜めて私との再会を喜んでくれました。
 二人が信じてくれていたことに嘘は無いと思います。使者の方によると、二人はずっと私が冤罪だという証拠を探し続けてくれたそうです。
 そして、メリッサという以前に私が魔物から助けた女性が協力してくれて偽の証人を見つけてくれたみたいでした。

 メリッサとは数度しか会ったことのない仲なのですが、まさか私を助けてくれるなんて――びっくりです。

「君のような優秀なメイドは居なかったというのに……今回はウチの愚かな娘がとんでもない事を――許して欲しいとは思わない。マーティラス家は私の代で終わりとなろう……」

 ボロ切れのような服を一枚だけ着ていて両手を鎖で拘束されているクラリス様を尻目に、彼女の父親であるマーティラス伯爵は頭を下げました。
 使用人だった私に自分ではなく娘がやらかしたことで頭を下げるとは……彼は本当に今回の事態を重く見ているのでしょう。

「頭を上げてください。これは、クラリス様の問題ですから。謝る必要なんてございません」

「そういうわけにはいかんのだよ。クラリス! お前も謝らんか! 頭を下げろ!」
「い、痛いっ! お、お父様……、実の娘にあんまりですわ」

 マーティラス伯爵は力強くクラリス様の頭を押して、地面に這いつくばらせました。
 こんなに弱々しい表情をする彼女を見るのは初めてです。  
 どういうわけか、本当に彼女の企みが全て白日に晒されたみたいですね……。

「早く謝らんか! クラリス!」

「う、うう……。え、エミリア……、あ、あなたに罪を着せるような真似をして……、ご、ごめんな――誰があなたなんかにィィィ! こうなったら、あなたも道連れにしてェェェ!!」

 クラリスは凄い形相で私の首に手枷のついた腕を伸ばしてきました。
 
 ――分かっていましたよ。プライドの高いあなたが素直に謝罪に応じるはずないことくらい。
 
「……本当に残念です。クラリス様……」

 私は拘束術式を発動しました。クラリス様の首、両手両足が白い光の糸でグルグル巻になり、彼女は芋虫のように地面に再び倒れます。

 血走った目で私を睨み、罵声を浴びせる彼女の気の強さはお見事。この状態でも自分の敗北を認めないのはクラリス様ならではです。

「私にはクラリス様の行動が思考が手に取るように分かります。あなたは決して私に謝らない。本当に死んだ方がマシだと思っていますから」

「ふーっ、ふーっ!」

 まるで盛りのついた猫のように息を荒げているクラリス様に、私はしゃがみ込んで彼女の目を見てそう語りかけました。

「別に良いんですよ。私はクラリス様に謝って欲しくなんてありませんから。ほら、綺麗な髪がこんなに傷んで――お可哀想に……」

 優しく彼女の頭を撫でてやると、彼女は今度はガタガタと震えだします。
 どうしたのでしょう。そんなに怖がらなくてもいいじゃないですか……。

「あ、あなた、何のつもりなの!? 私をどうしたいの!?」

 恐怖で顔を歪ませる彼女。どうもこうもありません。私の願いは大したことではない――。

 それは、すなわち……。

「クラリス様、これからあなたはずっと罪人として聖女の仕事をし続けてください。あなた以外に結界が張れないのですから。安心してください。私があなたに結界の張り方を教えます」

「はぁ?」

「あなたの頭の中に隷属魔術をかけました。私が魔力を注入するとクラリス様の頭が吹き飛びます」

「そ、そ、それじゃ一生私はあんたに私が逆らえないじゃない!」

 そう、この国には彼女しか聖女が居ない。それならば、監獄暮らしだろうと仕事はしてもらわないと困るのです。
 だから、私はクラリス様に罪人として生きてもらうことを強制しました。

 彼女は声にならぬ声で叫び……。土下座のような体勢で私の前で頭を垂れます。

 辛いでしょうね。あなたが一番嫌がることを述べましたから……。


 クラリス様、簡単には人生は終わらせませんよ――。


感想 48

あなたにおすすめの小説

聖女クローディアの秘密

雨野六月(旧アカウント)
恋愛
神託によって選ばれた聖女クローディアは、癒しの力もなく結界も張れず、ただ神殿にこもって祈るだけの虚しい日々を送っていた。自分の存在意義に悩むクローディアにとって、唯一の救いは婚約者である第三王子フィリップの存在だったが、彼は隣国の美しい聖女に一目ぼれしてクローディアを追放してしまう。 しかし聖女クローディアには、本人すら知らない重大な秘密が隠されていた。 これは愚かな王子が聖女を追い出し、国を亡ぼすまでの物語。

『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい

歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、 裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会 ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った 全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。 辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。

「醜い」と婚約破棄された銀鱗の令嬢、氷の悪竜辺境伯に嫁いだら、呪いを癒やす聖女として溺愛されました

黒崎隼人
恋愛
「醜い銀の鱗を持つ呪われた女など、王妃にはふさわしくない!」 衆人環視の夜会で、婚約者の王太子にそう罵られ、アナベルは捨てられた。 実家である公爵家からも疎まれ、孤独に生きてきた彼女に下されたのは、「氷の悪竜」と恐れられる辺境伯・レオニールのもとへ嫁げという非情な王命だった。 彼の体に触れた者は黒い呪いに蝕まれ、死に至るという。それは事実上の死刑宣告。 全てを諦め、死に場所を求めて辺境の地へと赴いたアナベルだったが、そこで待っていたのは冷徹な魔王――ではなく、不器用で誠実な、ひとりの青年だった。 さらに、アナベルが忌み嫌っていた「銀の鱗」には、レオニールの呪いを癒やす聖なる力が秘められていて……?

聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~

キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。 パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。 最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。 さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。 その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。 王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。 こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。 ※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。 ※カクヨムにも掲載中です。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~

日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。 田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。 成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。 「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」 彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で…… 一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。 国王や王女は気づいていない。 自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。 小説家になろうでも短編として投稿してます。

虐げられた聖女が魔力を引き揚げて隣国へ渡った結果、祖国が完全に詰んだ件について~冷徹皇帝陛下は私を甘やかすのに忙しいそうです~

日々埋没。
恋愛
「お前は無能な欠陥品」と婚約破棄された聖女エルゼ。  彼女が国中の魔力を手繰り寄せて出国した瞬間、祖国の繁栄は終わった。  一方、隣国の皇帝に保護されたエルゼは、至れり尽くせりの溺愛生活の中で真の力を開花させていく。