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5章 サクラの下で

使命と宣言

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 儀式を終え、私とルークは王宮のバルコニーから顔を出しました。2人で始めての挨拶です。
 バルコニーから見える景色は、圧巻でした。私達のため集まった大勢の人。遠くに見えるのは青空と広い海。いずれ私がこの地を、人々を治めていくのだと思うとプレッシャーと共に心が震えました。

 ルークが挨拶を終えると、視線がいっせいに私の方へ向きました。興味、見定め品定め、物珍しさと期待。多種多様な感情がこもっています。

 深く息を吸い、微笑みを作ります。緊張で引きつっているかもしれませんが、良いとしましょう。これが私です。
「皆さん、こんにちは。」
次期王妃として、ルークのパートナーとなり国を治める者としての、第一声でした。

「即位なさったルーク陛下と婚約しています、レイ・エメリックと申します。」
ルークが私の手を握りました。優しくて、温かいです。

「ルーク陛下と同じく15歳で、正式な結婚は来年に控えています。」
これからは、王妃の勤めは私の役割になります。

「王がいて、民がいて、初めて王国は成立します。どちらが欠けても王国は成り立たないのです。」
前王が、理解していなかったことです。支える民がいてこその王侯貴族なのです。

「皆さんのより良い暮らしをつくる為なら、私は苦労を惜しみません。未熟な人間かもしれませんが、これからの王国が今までの王国より数段良いものになる事をお約束します。」

ーーーそれが、私の義務であり婚約者としての責任ですから

 そう言葉を結び、礼。

 辺りからは拍手が起こりました。少なくとも歓迎されていると分かり、ひとまず安心できます。
 ルークと共にバルコニーを後にすると、握られたままの手が急に恥ずかしく感じてきました。
「あの……手…」
「あ、あぁ。」

寂しくなった左手にはまだルークの温かさが残っています。この温かさは、私達の成長途中な恋の形。

 不意に頬に何かが触れました。驚いてルークを見ると、耳が真っ赤になっていました。
「き、急にすまない。」
「いえ…そ、その…」
嫌ではありませんでした。本当ですよ。

「唇はまた今度。た、耐えられない。」
「ふふっ、そうですか。」
何となくもう一度手を握ると、次は顔も真っ赤です。意外とお互い慣れていないものです。

 それでも、幸せです。愛する人と、守るべき人がいて、これ以上ないくらい満たされています。そしてこれからは私が、守るんです。不幸な人を一人も無くせるように。
 それが、抱えきれないくらいの傷と愛を両方知っている私の使命なのですから。













ーーーーーーーーー
 皆様、ここまでご愛読いただきありがとうございます。これにて「虐待された少女が公爵家の養女になりました」完結です。
 そう、第一部。第一部です。物語はまだ続きます!

 第一部ではハルティア王国でのレイを描きましたが、第二部はルークの婚約者となったレイが隣国を舞台に奔走します。
 第一部番外編と称したお話と登場人物まとめを投稿した後に第二部をスタートさせようと思います。

 という事で皆様、これからもこの物語をどうぞよろしくお願いします!
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