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4章 王妃と側妃
25.夜中の執務室
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「兄貴、今ちょっと良いか?」
執務室で宰相と仕事をしている兄貴のところへ転移すると、
やっぱり驚いて椅子から落ちた。
そろそろ慣れてくれてもいいと思うんだよね。宰相は平気そうだし。
「あぁ、レオルド。やっぱり何か先触れを考えてくれよ。心臓に悪い。
で、どうした?」
「ああ。魅了の令嬢の件で来た。」
「今回は手を借りなくても大丈夫かと思ってたんだけどな?
お前が作ってくれた幽閉部屋や魅了を感知できる牢もあるし。
今は牢に入れて魅了を測定しているところだ。」
「俺もそう思ってたんだけど、リリーが気にしていて。
リリーから話があるって。」
「ん?リリーアンヌから?手紙でも預かってきてるのか?」
「…陛下、お久しぶりです。」
「へ?」
「こっちです。レオの肩にいます。」
「はぁああ?もしかして、その鳥がリリーアンヌか?」
「あぁ、王宮に下手に連れてくると騒ぎになるから、鳥に変化しているんだ。」
「あー。わかった。それで、リリーアンヌはどうしたんだ?
何かあの令嬢が気になるのか?」
「はい。もしあの令嬢の魅了を封じることができれば、
処刑せずに帰せるのではないかと思ってきたのですが…。
あの魅了は封じられません。」
「封じられない?」
「魔力ではなく生命力を使って魅了をかけているんです。
あのままでは近いうちに老化が一気に始まります。
そうなればもう魅了は使えなくなるはずです。」
「なんだと?じゃあ、今までの魅了使いのような危険は少ないってことか?」
「そうですね。それほど強い魅了じゃありませんでしたし、長く続かないでしょう。
老化が目に見えるようになれば危険は無いと思います。
その前に令嬢に忠告できればいいのでしょうけど…。」
「だめだ。あの令嬢は処罰を受けてもらわねばならない。」
「兄貴、それはあの令嬢は魅了を使う以上に問題を起こしたってことか?」
「そうだ。偽造した国王印を使って書簡を送って来た。
あの令嬢自体が偽造したわけではないが、そうさせたのはあの令嬢だ。
誰がが責任を取って終わらせなければ戦争の火種になる。
これから妃として王女が来るかどうかもわからない状態で火種は残せない。」
「そういうことか。
令嬢が魅了使いだったことを発表して処刑することで幕引きしたいのか。」
「ああ。令嬢だと思えば可哀そうなのかもしれないが、やったことが重罪過ぎる。
情けをかけたところで、他の者が死ぬ危険性が増えるだけだ。」
「勝手なことを申しあげました。申し訳ありません。」
「いや、いいんだ。俺の時は世話になったな。」
「え?」
「…もしかして兄貴にはあの時の記憶があるのか?」
「ある。だけど、公表して騒ぎになることもさけたかった。
きちんと謝って礼をしたかったが、すまなかったな。二人には迷惑をかけた。」
「そうか…まぁ、兄貴は被害者だから。
あまり気にしなくていいよ。」
「ありがとう。だからこそ、今回の件をうやむやにはしたくない。
レンメール国との同盟を維持するためにも、令嬢には正式に処罰を受けてもらう。
すまないな、リリーアンヌ。」
「いいえ、陛下のお気持ちはわかりました。」
「時間をとらせて悪かったな。それじゃ、俺たちは帰る。」
二人がいなくなった執務室は元通りの静かさになった。
宰相の書類をめくる音だけが聞こえてくる。
やっぱりレオルドとリリーアンヌは魅了の令嬢について知っていたんだな。
王宮から出たのに、まだ心配してくれるとは。どっちも優しすぎるな。
「…まぁ、表向き処刑にするけど、処刑するまで時間がかかるだろうから、
牢に入れている間に老化が始まるかもしれんな。
そしたらもう令嬢の姿じゃないだろうから、
処刑したことにして修道院にでも放り込むか…。」
「ふふ。やっぱりお優しいですね。」
執務室で宰相と仕事をしている兄貴のところへ転移すると、
やっぱり驚いて椅子から落ちた。
そろそろ慣れてくれてもいいと思うんだよね。宰相は平気そうだし。
「あぁ、レオルド。やっぱり何か先触れを考えてくれよ。心臓に悪い。
で、どうした?」
「ああ。魅了の令嬢の件で来た。」
「今回は手を借りなくても大丈夫かと思ってたんだけどな?
お前が作ってくれた幽閉部屋や魅了を感知できる牢もあるし。
今は牢に入れて魅了を測定しているところだ。」
「俺もそう思ってたんだけど、リリーが気にしていて。
リリーから話があるって。」
「ん?リリーアンヌから?手紙でも預かってきてるのか?」
「…陛下、お久しぶりです。」
「へ?」
「こっちです。レオの肩にいます。」
「はぁああ?もしかして、その鳥がリリーアンヌか?」
「あぁ、王宮に下手に連れてくると騒ぎになるから、鳥に変化しているんだ。」
「あー。わかった。それで、リリーアンヌはどうしたんだ?
何かあの令嬢が気になるのか?」
「はい。もしあの令嬢の魅了を封じることができれば、
処刑せずに帰せるのではないかと思ってきたのですが…。
あの魅了は封じられません。」
「封じられない?」
「魔力ではなく生命力を使って魅了をかけているんです。
あのままでは近いうちに老化が一気に始まります。
そうなればもう魅了は使えなくなるはずです。」
「なんだと?じゃあ、今までの魅了使いのような危険は少ないってことか?」
「そうですね。それほど強い魅了じゃありませんでしたし、長く続かないでしょう。
老化が目に見えるようになれば危険は無いと思います。
その前に令嬢に忠告できればいいのでしょうけど…。」
「だめだ。あの令嬢は処罰を受けてもらわねばならない。」
「兄貴、それはあの令嬢は魅了を使う以上に問題を起こしたってことか?」
「そうだ。偽造した国王印を使って書簡を送って来た。
あの令嬢自体が偽造したわけではないが、そうさせたのはあの令嬢だ。
誰がが責任を取って終わらせなければ戦争の火種になる。
これから妃として王女が来るかどうかもわからない状態で火種は残せない。」
「そういうことか。
令嬢が魅了使いだったことを発表して処刑することで幕引きしたいのか。」
「ああ。令嬢だと思えば可哀そうなのかもしれないが、やったことが重罪過ぎる。
情けをかけたところで、他の者が死ぬ危険性が増えるだけだ。」
「勝手なことを申しあげました。申し訳ありません。」
「いや、いいんだ。俺の時は世話になったな。」
「え?」
「…もしかして兄貴にはあの時の記憶があるのか?」
「ある。だけど、公表して騒ぎになることもさけたかった。
きちんと謝って礼をしたかったが、すまなかったな。二人には迷惑をかけた。」
「そうか…まぁ、兄貴は被害者だから。
あまり気にしなくていいよ。」
「ありがとう。だからこそ、今回の件をうやむやにはしたくない。
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「…まぁ、表向き処刑にするけど、処刑するまで時間がかかるだろうから、
牢に入れている間に老化が始まるかもしれんな。
そしたらもう令嬢の姿じゃないだろうから、
処刑したことにして修道院にでも放り込むか…。」
「ふふ。やっぱりお優しいですね。」
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