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絡み合う運命
3.山の領地
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王都の神官宮に戻り美里の体調が戻った頃、また瘴気発生の報告が入った。
「今回は…別な意味で大変そうだ。」
「別な意味?」
「山なんだよ…しかも、雨が降ると土砂崩れが発生しやすい場所なんだ。」
「え?大変って、そういう意味で?」
「…四十年前とは地形が変わってしまっているようだし、
今回は案内人をつけなきゃいけなくなる。
何もないといいんだが…。」
そう言って考え込んでしまったキリルの手には古い地図があった。
山の地図のようだけど、前の聖女様の時の地図だろう。
ところどころに×がついているのが瘴気の発生個所のようだ。
「山か…このドレスで登れるの?」
「…無理だね。もう少し身軽な服を用意する。」
「ん。」
さすがにこの白いドレスで山を歩くのは想像できなかった。
今までもこのドレスで馬に乗ったり森を歩いたりはしているけれど、
山にもよるけど登山ってなると…無茶だと思う。
いつもどおりに馬車付きの部屋に移動すると、衣裳部屋には新しい服が用意されていた。
ワンピースのようだけど、ひざ丈のスカートの中にスパッツのようなものがついている。
…白いフリルがついているせいで、昔のアイドルの衣装のように見える。
ドレスじゃないだけ動きやすいとは思うけど…。
「これを着るのか~。」
「気に入らなかった?動きやすいように作られているはずだけど…。」
「いや、うん、大丈夫。さすがにドレスで山に行くのはキツイ。
向こうに着いたら、これ着るから。」
フリル付きの服を着るのは恥ずかしいけれど、美里も一緒だし…今回限りだし。
そう思って何も考えないことにした。
「今回は馬車は一台だけ。山の中には拠点にできるような場所が無い。
山の下の平地に拠点を作るんだけど狭いから、
馬車を各自一台ずつ置くだけでいっぱいになる。」
「山の下で隊員たちの報告が来るのを待つってことね。了解です。」
着いた拠点で馬車から降りると、ここも高地なのか気温が少し低かった。
雨が降る時期は終わったと聞いたけれど、山の上は雲で覆われていて見えない。
後ろから降りてきた美里も肌寒いとつぶやいていた。
「ちょっとこの服ないわ~と思ってたけど、寒さ対策としてはアリだね。」
「あぁ、そうかも。スパッツがあるとないとじゃ違うからね。」
「すぐにテント用意するから待って。」
私と美里が寒がっているとキリルがテントを一つ広げる。
今回は拠点が狭いからテントも一つだけにするようだ。
キリルが先にテントの中に入り、
それに続いて入ろうとしたらカインさんはどこかに行こうとしている。
「俺は案内人と話してくるから、三人はテントで休んでいて?」
「わかった~。」
言われた通りに美里とテントの中に入ろうとした時、知らない女の人の声が聞こえた。
はしゃいでいるような少し高めの声。
「カイン様!お会いできてうれしいです!」
振り返って見たら、カインさんのすぐ近くに乗馬服を着た令嬢がいた。
ふわふわの栗色の髪を後ろで一つに結び、大きな目の綺麗な令嬢だった。
身体に沿うようにデザインされた乗馬服で、ものすごくスタイルがいいのがわかる。
顔も小さくて、動きも可愛らしく、王子様のカインさんに寄り添うようにしている。
カインさんは少し困ったような顔をしたが、その令嬢と話を続けている。
こんな風にカインさんが令嬢と話しているのを見るのは初めてだ。
夜会の時だって、もう少し距離をとっていた気がする。
「…何、あれ。」
すぐ近くで低い美里の声がして、ドキッとした。
無表情になった美里がカインさんと令嬢を冷たい目で見ていた。
「今回は…別な意味で大変そうだ。」
「別な意味?」
「山なんだよ…しかも、雨が降ると土砂崩れが発生しやすい場所なんだ。」
「え?大変って、そういう意味で?」
「…四十年前とは地形が変わってしまっているようだし、
今回は案内人をつけなきゃいけなくなる。
何もないといいんだが…。」
そう言って考え込んでしまったキリルの手には古い地図があった。
山の地図のようだけど、前の聖女様の時の地図だろう。
ところどころに×がついているのが瘴気の発生個所のようだ。
「山か…このドレスで登れるの?」
「…無理だね。もう少し身軽な服を用意する。」
「ん。」
さすがにこの白いドレスで山を歩くのは想像できなかった。
今までもこのドレスで馬に乗ったり森を歩いたりはしているけれど、
山にもよるけど登山ってなると…無茶だと思う。
いつもどおりに馬車付きの部屋に移動すると、衣裳部屋には新しい服が用意されていた。
ワンピースのようだけど、ひざ丈のスカートの中にスパッツのようなものがついている。
…白いフリルがついているせいで、昔のアイドルの衣装のように見える。
ドレスじゃないだけ動きやすいとは思うけど…。
「これを着るのか~。」
「気に入らなかった?動きやすいように作られているはずだけど…。」
「いや、うん、大丈夫。さすがにドレスで山に行くのはキツイ。
向こうに着いたら、これ着るから。」
フリル付きの服を着るのは恥ずかしいけれど、美里も一緒だし…今回限りだし。
そう思って何も考えないことにした。
「今回は馬車は一台だけ。山の中には拠点にできるような場所が無い。
山の下の平地に拠点を作るんだけど狭いから、
馬車を各自一台ずつ置くだけでいっぱいになる。」
「山の下で隊員たちの報告が来るのを待つってことね。了解です。」
着いた拠点で馬車から降りると、ここも高地なのか気温が少し低かった。
雨が降る時期は終わったと聞いたけれど、山の上は雲で覆われていて見えない。
後ろから降りてきた美里も肌寒いとつぶやいていた。
「ちょっとこの服ないわ~と思ってたけど、寒さ対策としてはアリだね。」
「あぁ、そうかも。スパッツがあるとないとじゃ違うからね。」
「すぐにテント用意するから待って。」
私と美里が寒がっているとキリルがテントを一つ広げる。
今回は拠点が狭いからテントも一つだけにするようだ。
キリルが先にテントの中に入り、
それに続いて入ろうとしたらカインさんはどこかに行こうとしている。
「俺は案内人と話してくるから、三人はテントで休んでいて?」
「わかった~。」
言われた通りに美里とテントの中に入ろうとした時、知らない女の人の声が聞こえた。
はしゃいでいるような少し高めの声。
「カイン様!お会いできてうれしいです!」
振り返って見たら、カインさんのすぐ近くに乗馬服を着た令嬢がいた。
ふわふわの栗色の髪を後ろで一つに結び、大きな目の綺麗な令嬢だった。
身体に沿うようにデザインされた乗馬服で、ものすごくスタイルがいいのがわかる。
顔も小さくて、動きも可愛らしく、王子様のカインさんに寄り添うようにしている。
カインさんは少し困ったような顔をしたが、その令嬢と話を続けている。
こんな風にカインさんが令嬢と話しているのを見るのは初めてだ。
夜会の時だって、もう少し距離をとっていた気がする。
「…何、あれ。」
すぐ近くで低い美里の声がして、ドキッとした。
無表情になった美里がカインさんと令嬢を冷たい目で見ていた。
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