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絡み合う運命
15.瘴気の湖
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たどり着いた湖は真っ黒で何も見えなかった。
だけど、周辺には黒い霧もなく、アメーバ状の瘴気も見つからない。
気配がこれだけ濃いのに、瘴気が見当たらないとは思わなかった。
無いわけはない…気配はあるし、魔獣も発生している。
発生場所を探すために隊員たちが警戒しながら湖へと近づいていく。
「瘴気が見えない…ユウリ、わかるか?」
「…わからない。すっごく気配はするのに、どこにも見えない。
どういうことなんだろう…。美里はわかる?」
「わからないんだけど……もしかして、湖の中なんじゃない?」
「「「え?」」」
じりじりと湖の近くまで行って覗き込んで悲鳴をあげそうになる。
湖の中にアメーバ状の瘴気がヘドロのようにたまっていた。
かつてないほどの量で…水の中でうごめいているのが見えた。
「え?ど、どうしよう。あれ、あんなの、浄化できるの!?」
「嘘でしょう!?あんなに??」
私と美里が慌てていると、キリルとカインさんはうなずいて私たちを抱き上げた。
「え?」
「な、なに?」
「抱き上げたまま浄化作業をしよう。」
「反撃されたとき、すぐに逃げられるように。」
アメーバ状になってしまった瘴気は浄化しようとすると体当たりしてくることがある。
私たちの身体の中に入り込んでくることはないが、ぶつかって来られるとかなり危険だ。
反撃されたとしたら、この距離だと私と美里は逃げられないかもしれない。
キリルとカインさんに縦抱きにされたまま、少しだけ湖から離れた。
「いけるか?」
「うん、大丈夫。」
手をつないでいるのとは違い、支えられている腕から私へと魔力が流れてくる。
いつもとは魔力の流れが変わってしまっているけれど、
神力への変換は慣れている。多少変わったところで問題はない。
キリルの身体の外側に右手だけのばし、大きく鈴を振った。
あたり一面が瘴気の影響を受けているせいか、少しくぐもった音に聞こえた。
ザリーンザザザン、ザンザーン。
周りの空気が少しずつ浄化されていく。
それでも湖の中は全く変わった様子がない。
少しずつ根気よく浄化していくと、うごめいている瘴気がおとなしく小さくなっていく。
単純な作業だけど、神力を作り続けているのがつらくなってくる。
瘴気の量は減ってきたが、かなりの時間が過ぎていた。
湖の中のアメーバがもうすぐ無くなるという時、カインさんの叫ぶような声が聞こえた。
「ミサト!!ミサト!聞こえてるか!?」
「え?美里!?」
見たら美里が気を失いぐったりした状態で抱きかかえられている。
「カイン兄さん、おそらく魔力切れだろう。
早く美里を連れて拠点に戻ってくれ。」
「あぁ、…任せて大丈夫か?」
「…わからない。俺たちも無理そうなら戻る。
今は美里を早く回復させないとまずいだろう。先に戻って休んでいてくれ。」
「わかった。」
カインさんは美里をしっかりと抱き直した後、急ぐように拠点へと戻っていった。
魔力切れ…あぁ、そうか。美里は限界まで浄化作業を続けてしまったんだ。
「ユウリ、魔力の量はまだあると思うが、つらくなったらいつでも言ってくれ。」
「うん…わかった。まだ大丈夫だと思う。
あと少しで浄化できそうだから、ここまで来たら最後までがんばりたい。」
「そうか。」
美里とカインさんがいなくなったことで、浄化のスピードは落ちてしまう。
それでもここまで頑張ってきて残り少なくなっているのを見ると、
今日中になんとか終わらせたいと思ってしまう。
これは筋肉痛になるなと思いながら、必死で鈴を振り続ける。
瘴気が薄れていくにつれ、くぐもっていた音が綺麗な鈴の音に変わっていく。
最後の鈴の音が消えた頃には、もう辺りは暗くなり始めていた。
「よし、今日はここまで。ユウリ…よく頑張ったな。」
「…なんとか終わったね。でも、これって…他の湖も?」
「…その可能性は高いな。とりあえず、拠点に戻ろう。
ミサトだけじゃない。ユウリも魔力を回復させないと。
明日の作業は無理かもしれないな…。」
一度魔力切れを起こしてしまうと、完全に回復するのに時間がかかる。
もしかしたら美里は何日か目を覚まさないかもしれない。
聖女が二人いても一つの湖を浄化するのに一日かかった。
美里が起きなかったら、私たちだけで浄化できるのだろうか。
だけど、周辺には黒い霧もなく、アメーバ状の瘴気も見つからない。
気配がこれだけ濃いのに、瘴気が見当たらないとは思わなかった。
無いわけはない…気配はあるし、魔獣も発生している。
発生場所を探すために隊員たちが警戒しながら湖へと近づいていく。
「瘴気が見えない…ユウリ、わかるか?」
「…わからない。すっごく気配はするのに、どこにも見えない。
どういうことなんだろう…。美里はわかる?」
「わからないんだけど……もしかして、湖の中なんじゃない?」
「「「え?」」」
じりじりと湖の近くまで行って覗き込んで悲鳴をあげそうになる。
湖の中にアメーバ状の瘴気がヘドロのようにたまっていた。
かつてないほどの量で…水の中でうごめいているのが見えた。
「え?ど、どうしよう。あれ、あんなの、浄化できるの!?」
「嘘でしょう!?あんなに??」
私と美里が慌てていると、キリルとカインさんはうなずいて私たちを抱き上げた。
「え?」
「な、なに?」
「抱き上げたまま浄化作業をしよう。」
「反撃されたとき、すぐに逃げられるように。」
アメーバ状になってしまった瘴気は浄化しようとすると体当たりしてくることがある。
私たちの身体の中に入り込んでくることはないが、ぶつかって来られるとかなり危険だ。
反撃されたとしたら、この距離だと私と美里は逃げられないかもしれない。
キリルとカインさんに縦抱きにされたまま、少しだけ湖から離れた。
「いけるか?」
「うん、大丈夫。」
手をつないでいるのとは違い、支えられている腕から私へと魔力が流れてくる。
いつもとは魔力の流れが変わってしまっているけれど、
神力への変換は慣れている。多少変わったところで問題はない。
キリルの身体の外側に右手だけのばし、大きく鈴を振った。
あたり一面が瘴気の影響を受けているせいか、少しくぐもった音に聞こえた。
ザリーンザザザン、ザンザーン。
周りの空気が少しずつ浄化されていく。
それでも湖の中は全く変わった様子がない。
少しずつ根気よく浄化していくと、うごめいている瘴気がおとなしく小さくなっていく。
単純な作業だけど、神力を作り続けているのがつらくなってくる。
瘴気の量は減ってきたが、かなりの時間が過ぎていた。
湖の中のアメーバがもうすぐ無くなるという時、カインさんの叫ぶような声が聞こえた。
「ミサト!!ミサト!聞こえてるか!?」
「え?美里!?」
見たら美里が気を失いぐったりした状態で抱きかかえられている。
「カイン兄さん、おそらく魔力切れだろう。
早く美里を連れて拠点に戻ってくれ。」
「あぁ、…任せて大丈夫か?」
「…わからない。俺たちも無理そうなら戻る。
今は美里を早く回復させないとまずいだろう。先に戻って休んでいてくれ。」
「わかった。」
カインさんは美里をしっかりと抱き直した後、急ぐように拠点へと戻っていった。
魔力切れ…あぁ、そうか。美里は限界まで浄化作業を続けてしまったんだ。
「ユウリ、魔力の量はまだあると思うが、つらくなったらいつでも言ってくれ。」
「うん…わかった。まだ大丈夫だと思う。
あと少しで浄化できそうだから、ここまで来たら最後までがんばりたい。」
「そうか。」
美里とカインさんがいなくなったことで、浄化のスピードは落ちてしまう。
それでもここまで頑張ってきて残り少なくなっているのを見ると、
今日中になんとか終わらせたいと思ってしまう。
これは筋肉痛になるなと思いながら、必死で鈴を振り続ける。
瘴気が薄れていくにつれ、くぐもっていた音が綺麗な鈴の音に変わっていく。
最後の鈴の音が消えた頃には、もう辺りは暗くなり始めていた。
「よし、今日はここまで。ユウリ…よく頑張ったな。」
「…なんとか終わったね。でも、これって…他の湖も?」
「…その可能性は高いな。とりあえず、拠点に戻ろう。
ミサトだけじゃない。ユウリも魔力を回復させないと。
明日の作業は無理かもしれないな…。」
一度魔力切れを起こしてしまうと、完全に回復するのに時間がかかる。
もしかしたら美里は何日か目を覚まさないかもしれない。
聖女が二人いても一つの湖を浄化するのに一日かかった。
美里が起きなかったら、私たちだけで浄化できるのだろうか。
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