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13、にこにこペンダント

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「これだよ」

 戻ってきたカカが私の目の前で、ペンダントをゆらゆらと揺らす。

「わあ。可愛い」

 銀色の鎖のさきにあるペンダントヘッドに自然と頬がゆるんでしまった。

「うだ。
 これを見ていたら、気持ちがホッコリしていつのまにか笑顔になってるべ」

「そーだよね。カカ」

 そう言ってから、ニマッと笑う。

「おおおー。
 チチだってガハハと笑いたくなってきたぞ」

 やっぱり皆そうなんだな。

 紺碧の海のような色のまん丸のペンダントヘッドには、ざっくりと目と口だけが描かれていた。

口角がキューと上がった半円の口。

細められた目。

 ペンダントヘッドは、まるでにこにこと笑っている人の顔のように見えるのだ。

 だからつい眺めている方も、ニカッーとなってしまう。

「チチ。カカ。
 私、このペンダントにぴったりの名前を思いついたわ。
 にこにこペンダントってどうかな」

 私はコテンと首を傾けた。

「いいんじゃないけ。
 なんだか名前を聞いただけで、幸せになれそうずら。
 のう。カカ」

 ペンダントにひきよせられたように、フワフワと宙を漂よってきたマカとロン(チチとカカには見えない)も、いつもよりキラキラ、チカチカ楽しそうにきらめいている。

「うん。ほんといい名前だよ。
 あっそうだ。
 このペンダントの裏に、誰かの名前が刻まれているんだよ。
 自慢じゃないが、カカは文字が読めないだろ。
 だから、拾った時に村長の息子さんに読んでもらったんだよ。
 ほらここだよ」

 カカは私の手のひらにペンダントをストンと落とすと、ペンダントヘッドを裏向けて指さした。

「ほんとだ。
 ポポって書いてある」

 厳しい王妃教育のおかげで、読み書きができるようになっていた私は口をポカンとあけて、間がぬけた声をだす。

「ひょっとして、だから私をポポって名前にしたの」

「ピンポーンのカンカラカーン。
 大正解だよ」

 カカは器用に片目を閉じる。

「これを彫ったのかポポの本当のご両親に間違いない。
 どうだ。チチの推理は鋭いじゃろ」

「なにが鋭い推理じゃ。
 そんなの誰にだってわかるばい」

 ドヤ顔をするチチにカカがプウッと吹き出した。 

「ポポ。せっかく王都に行くんだから。 
 推し、推しと男のケツばかり追いかけとらんと、本当の親も探してくるんだよ」

 笑いがおさまると、カカが真剣な眼差しを私に向ける。

「あー残念じゃ。いい事をカカに先に言われてしもたばい」

 そう言うと、残念そうにペチャンと自分の額を叩くチチに私達は爆笑した。


「わかったよ。
 このペンダントがあれば、なんだか全てがうまくいく気がするよ」

 そう言ってペンダントを首からぶら下げたとたん、グッと熱い物が胸にこみあげてくる。

「チチ、カカ。
 今まで実の娘のように可愛がってくれて、本当に、本当にありがとう。
たとえ実の親が見つかっても、私にはチチとカカが1番だからね」

 気がつくと、子供のようにオイオイと嗚咽していたのだ。
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