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変態に試練です
火だるまになりたくないです
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「喧嘩して別れて、友達に戻ったんですよねぇ?」
萌花ちゃん……!
スルーしてほしかった。しかも、何だろう、何かモヤモヤする。
何か萌花ちゃんの勢いに圧されたと言うか、しどろもどろになって『付き合ってるような、友達のような……』とか言っちゃったけど、別れてはいないってことを萌花ちゃんもわかってるはずだった。わかってるからこそ?
何か真実をねじ曲げられていくような気がする。そんなことないよね? 被害妄想だよね?
「友達に戻るとかないなー」
「そもそも、男女の友情とか成立しないと思うんですよねぇ」
「思う思う」
上野君と萌花ちゃんの意見が合ってる……もしかして、私、結構追い詰められてる?
黙々とお弁当食べてる竜也君が怖すぎる。下手なこと言って、後で怒られても困るし……コロッケにまで嫉妬する竜也君怖いのに。
「じゃー、リンリンは俺と新しい恋見つけちゃう? カップル誕生しちゃう?」
「いいじゃないですか。私は竜也先輩とでぇ」
「ねーから」
しないと言った私の声は萌花ちゃんに掻き消されたけど、話を聞いてないように見えて竜也君の反応は早かった。
でも、萌花ちゃんは不都合なことは耳に入らないみたいだった。
「残るは浅見先輩ですね」
「私は結構。勝手に残り物にしないでくれる?」
「しょーたも残ってる! しょーたと浅見、結構いいじゃんいいじゃん! 付き合っちゃえばいいじゃん!」
由真ちゃんはこの流れを断ち切りたかったみたいだけど、上野君は空気を読んでくれなかった。見事に乗っかって煽った。萌花ちゃんと上野君が揃うと結構ヤバいかもしれない。暴走が暴走を煽る。
「ありえない。自分よりでかい女とは絶対に付き合わないって決めてるから」
「私だって、チビはお断りよ」
囃し立てられても向井君は落ち着いてたけど、売り言葉に買い言葉みたいになった。
百六十ちょっとくらいっぽい向井君よりも由真ちゃんの方がちょっと高いっぽい。由真ちゃんは私から見たら長身に感じるけど、平均的には凄く背が高いわけでもないはず。
「息が合ってるじゃないですか。私もいいと思います。お似合いですよぉ」
「合ってない。マジで無理。でも、凛鈴ちゃんとは、それなりに身長差あると思うし。むしろ理想的くらい?」
向井君、なぜ、そこで私を巻き込むんでしょう?
チビだって言われるのは慣れてるけど、今日はもうこの話を広げないでほしい。と言うか、そもそも早くお開きになってほしい。
「しょーたもロリコン?」
「陽介と一緒にしないでくれる? 普通のことだよ。でかいやつにはわからないんだろうけど」
上野君はそんなにロリコンが好きなんだろうか……
向井君は実は結構身長気にしてるみたいだし……確かに私からすると、そんなに小さくは感じないけど、竜也君と上野君と並んでると一見女の子みたいな感じがする。言ったら、殺されそうな気がするけど。
「まさか、しょーたまでリンリンを狙うとは……ライバル多い方が燃えちゃう」
上野君はこの話を終わらせるどころか楽しそうに広げてく。
燃えなくていいというか、さっさと燃え尽きてほしいというか……
「あはは、光石先輩、ここでもモテモテじゃないですか」
萌花ちゃん!
火種やめて、マジやめて。火だるま大炎上するのが私になっちゃう。由真ちゃんが消化してくれると思いたいけど、竜也君が我慢してくれないと延焼しちゃう。
「ここでもって、リンリン、そんなにモテんの?」
「うちの部でも人気ですよぉ。OBとも仲良いみたいですし。いいですね、選り取り見取りで」
あれ? もしかして、萌花ちゃんに嫌み言われてる?
こっちは今あなたが狙ってる変態様のせいでいっぱいいっぱいなのですが。
その人、形態を変える的な変態であり、性癖的にも問題のある本物の変態様なのですが。
「あんた、口は災いの元、って言葉知ってる? いくら羨ましいからって、凛鈴のこと目の敵にするのやめたら?」
由真ちゃん!
はっきり言った……
一瞬、萌花ちゃんが凄い顔で由真ちゃんのこと睨んだ気がする。見ちゃいけないものを見てしまった……怖い。でも、萌花ちゃんはすぐにしょんぼりと泣きそうな顔になった。
「浅見先輩、いつも私にはきついんですぅ。私、何かしちゃったんでしょうか……」
「俺達も結構言われるけど、浅見は普通にこんな感じだと思う」
竜也君の陰になってる由真ちゃんを窺うようにしながら萌花ちゃんが小さな声で言うけど、向井君は冷静に由真ちゃんを分析していた。
由真ちゃんは萌花ちゃんに特にきつく当たってるわけじゃない。ここのところは加納君にも結構言ってるけど、いびってるわけでもない。もし、いびってたら部長が止めるし、加納君だってしれっとしてる。
「でも、光石先輩に対してみんな過保護すぎると思うんですぅ。いくら小さいからって子供じゃないのに」
萌花ちゃんがそう言うのも無理はないと思う。
文芸部のみんなとか影本家の皆様とかに凄く保護してもらってるのは感じてるし、とても感謝してる。
でも、他人の目には凄く甘やかされてるように見えるかもしれない。
一人じゃ何もできないわけじゃないと思いたいけど、すぐに由真ちゃんを頼ろうとするのは悪い癖。わかってる。甘えすぎだってわかってるけど、一人っ子的には頼りになるお姉ちゃんができたみたいで凄く嬉しかったりする。
「凛鈴に過度なストレス与えるやつが多いから保護したくなるのよ」
「リンリン、名前はパンダみてぇなのに、ウサギみてぇ」
上野君はゲラゲラ笑うけど、地味に心が抉られた。
「上野、それ、凛鈴のトラウマ抉ってるからね」
由真ちゃん、代弁ありがとう。
素晴らしく理解のある友人を持てて凛鈴はとても幸せです……たとえ、地獄の晩餐会みたいな昼食会の真っ直中でも。
「え、リンリン、ウサギ好きじゃねーの?」
「小物はウサギばっかりだけど、パンダの方?」
向井君まで私の手元を覗き込んで聞いてくる。
お弁当グッズは全部ウサギで揃えてたりする。どこからどう見てもウサギ好き。子供っぽくなりすぎないように気を付けてるけど、ウサギまみれ。ペンケースの中もバッグの中もウサギまみれ。幸せ。
「ちっちゃい頃ね、プレゼントがパンダばっかりで、身の回りの物が白黒だらけになって悲しかったんだ……ほんとはウサギが好きだったし、ピンクの物が良かったのに」
パンダのパンツ事件はさすがにこのメンバーの前では言えないから黙っておく。
まあ、今は自分のお小遣いでウサギグッズを買えるわけで、何でもウサギがいい。反動怖い。
昔貰ったパンダのぬいぐるみも今は可愛いと思えるけど、ウサギに囲まれてアウェー状態になってる。
「ウサギがいいって、ちゃんと言わないからそうなるんですよ」
「誤解があったのと、パンダ好きだと信じて疑わないみんなの顔見たら言えなかったよ……」
萌花ちゃんは言うけど、我が儘を言えたら苦労はしなかった。そんなに簡単なことじゃない。
お母さんが買ってきたパンダのパジャマが可愛くなさすぎて泣いて暴れて怒られたりとかあったし、私が喜ぶだろうと期待に満ちた目を向けられるとウサギがいいなんて駄々をこねられなかった。
後から聞いた話では赤ちゃんの頃、お母さんがウケ狙いでパンダの着ぐるみとか着せてたのが発端らしい。それからが娘をパンダ好きにしようという洗脳の始まり……結局、爆発して今はウサギだらけになってるわけだけど。
「じゃー、リンリンのパンツはパンダじゃなくてウサギ?」
上野君がいつものテンションで平然とそういうことを聞いてくるから空気が凍り付いた。
怖くて竜也君の方が見れない。なぜ、私のパンツネタなの……? お子様パンツ履いてると思われてるの?
折角、パンダのパンツ事件は伏せたのに。
「僕は陽介のデリカシーのなさが怖い。竜也も何か言ってやってよ」
ひぃぃっ、向井氏、なぜ、そこで竜也君に話を振るんですか?
全然喋らないのが怖いし、喋ってもめちゃくちゃ怖いのに。
「保護者にロリコン死ねって言われる前に黙っとけ。俺までロリコンだと思われたくねーし」
竜也君がちらっと由真ちゃんを見た。
由真ちゃんはそんな物騒なこと言わないとは言えない。この状況で由真ちゃんもかなりストレス感じてるはず。
「今日の竜也不機嫌すぎて痺れる……俺、ドMに目覚めちゃうかも……」
「陽介、キモい」
「竜也に怯えるリンリン可愛い……」
どうして、上野君はこの空気でそういうこと言えるんだろう?
元々笑って軽く流せる性格じゃないのに、この状況が怖すぎる。
竜也君はいつも自分が可愛い可愛い言ってるのに、私が可愛いって言われてるの聞いてるのってどういう気分なんだろう。上野君の言葉は上辺だけだと思うけど。
萌花ちゃん……!
スルーしてほしかった。しかも、何だろう、何かモヤモヤする。
何か萌花ちゃんの勢いに圧されたと言うか、しどろもどろになって『付き合ってるような、友達のような……』とか言っちゃったけど、別れてはいないってことを萌花ちゃんもわかってるはずだった。わかってるからこそ?
何か真実をねじ曲げられていくような気がする。そんなことないよね? 被害妄想だよね?
「友達に戻るとかないなー」
「そもそも、男女の友情とか成立しないと思うんですよねぇ」
「思う思う」
上野君と萌花ちゃんの意見が合ってる……もしかして、私、結構追い詰められてる?
黙々とお弁当食べてる竜也君が怖すぎる。下手なこと言って、後で怒られても困るし……コロッケにまで嫉妬する竜也君怖いのに。
「じゃー、リンリンは俺と新しい恋見つけちゃう? カップル誕生しちゃう?」
「いいじゃないですか。私は竜也先輩とでぇ」
「ねーから」
しないと言った私の声は萌花ちゃんに掻き消されたけど、話を聞いてないように見えて竜也君の反応は早かった。
でも、萌花ちゃんは不都合なことは耳に入らないみたいだった。
「残るは浅見先輩ですね」
「私は結構。勝手に残り物にしないでくれる?」
「しょーたも残ってる! しょーたと浅見、結構いいじゃんいいじゃん! 付き合っちゃえばいいじゃん!」
由真ちゃんはこの流れを断ち切りたかったみたいだけど、上野君は空気を読んでくれなかった。見事に乗っかって煽った。萌花ちゃんと上野君が揃うと結構ヤバいかもしれない。暴走が暴走を煽る。
「ありえない。自分よりでかい女とは絶対に付き合わないって決めてるから」
「私だって、チビはお断りよ」
囃し立てられても向井君は落ち着いてたけど、売り言葉に買い言葉みたいになった。
百六十ちょっとくらいっぽい向井君よりも由真ちゃんの方がちょっと高いっぽい。由真ちゃんは私から見たら長身に感じるけど、平均的には凄く背が高いわけでもないはず。
「息が合ってるじゃないですか。私もいいと思います。お似合いですよぉ」
「合ってない。マジで無理。でも、凛鈴ちゃんとは、それなりに身長差あると思うし。むしろ理想的くらい?」
向井君、なぜ、そこで私を巻き込むんでしょう?
チビだって言われるのは慣れてるけど、今日はもうこの話を広げないでほしい。と言うか、そもそも早くお開きになってほしい。
「しょーたもロリコン?」
「陽介と一緒にしないでくれる? 普通のことだよ。でかいやつにはわからないんだろうけど」
上野君はそんなにロリコンが好きなんだろうか……
向井君は実は結構身長気にしてるみたいだし……確かに私からすると、そんなに小さくは感じないけど、竜也君と上野君と並んでると一見女の子みたいな感じがする。言ったら、殺されそうな気がするけど。
「まさか、しょーたまでリンリンを狙うとは……ライバル多い方が燃えちゃう」
上野君はこの話を終わらせるどころか楽しそうに広げてく。
燃えなくていいというか、さっさと燃え尽きてほしいというか……
「あはは、光石先輩、ここでもモテモテじゃないですか」
萌花ちゃん!
火種やめて、マジやめて。火だるま大炎上するのが私になっちゃう。由真ちゃんが消化してくれると思いたいけど、竜也君が我慢してくれないと延焼しちゃう。
「ここでもって、リンリン、そんなにモテんの?」
「うちの部でも人気ですよぉ。OBとも仲良いみたいですし。いいですね、選り取り見取りで」
あれ? もしかして、萌花ちゃんに嫌み言われてる?
こっちは今あなたが狙ってる変態様のせいでいっぱいいっぱいなのですが。
その人、形態を変える的な変態であり、性癖的にも問題のある本物の変態様なのですが。
「あんた、口は災いの元、って言葉知ってる? いくら羨ましいからって、凛鈴のこと目の敵にするのやめたら?」
由真ちゃん!
はっきり言った……
一瞬、萌花ちゃんが凄い顔で由真ちゃんのこと睨んだ気がする。見ちゃいけないものを見てしまった……怖い。でも、萌花ちゃんはすぐにしょんぼりと泣きそうな顔になった。
「浅見先輩、いつも私にはきついんですぅ。私、何かしちゃったんでしょうか……」
「俺達も結構言われるけど、浅見は普通にこんな感じだと思う」
竜也君の陰になってる由真ちゃんを窺うようにしながら萌花ちゃんが小さな声で言うけど、向井君は冷静に由真ちゃんを分析していた。
由真ちゃんは萌花ちゃんに特にきつく当たってるわけじゃない。ここのところは加納君にも結構言ってるけど、いびってるわけでもない。もし、いびってたら部長が止めるし、加納君だってしれっとしてる。
「でも、光石先輩に対してみんな過保護すぎると思うんですぅ。いくら小さいからって子供じゃないのに」
萌花ちゃんがそう言うのも無理はないと思う。
文芸部のみんなとか影本家の皆様とかに凄く保護してもらってるのは感じてるし、とても感謝してる。
でも、他人の目には凄く甘やかされてるように見えるかもしれない。
一人じゃ何もできないわけじゃないと思いたいけど、すぐに由真ちゃんを頼ろうとするのは悪い癖。わかってる。甘えすぎだってわかってるけど、一人っ子的には頼りになるお姉ちゃんができたみたいで凄く嬉しかったりする。
「凛鈴に過度なストレス与えるやつが多いから保護したくなるのよ」
「リンリン、名前はパンダみてぇなのに、ウサギみてぇ」
上野君はゲラゲラ笑うけど、地味に心が抉られた。
「上野、それ、凛鈴のトラウマ抉ってるからね」
由真ちゃん、代弁ありがとう。
素晴らしく理解のある友人を持てて凛鈴はとても幸せです……たとえ、地獄の晩餐会みたいな昼食会の真っ直中でも。
「え、リンリン、ウサギ好きじゃねーの?」
「小物はウサギばっかりだけど、パンダの方?」
向井君まで私の手元を覗き込んで聞いてくる。
お弁当グッズは全部ウサギで揃えてたりする。どこからどう見てもウサギ好き。子供っぽくなりすぎないように気を付けてるけど、ウサギまみれ。ペンケースの中もバッグの中もウサギまみれ。幸せ。
「ちっちゃい頃ね、プレゼントがパンダばっかりで、身の回りの物が白黒だらけになって悲しかったんだ……ほんとはウサギが好きだったし、ピンクの物が良かったのに」
パンダのパンツ事件はさすがにこのメンバーの前では言えないから黙っておく。
まあ、今は自分のお小遣いでウサギグッズを買えるわけで、何でもウサギがいい。反動怖い。
昔貰ったパンダのぬいぐるみも今は可愛いと思えるけど、ウサギに囲まれてアウェー状態になってる。
「ウサギがいいって、ちゃんと言わないからそうなるんですよ」
「誤解があったのと、パンダ好きだと信じて疑わないみんなの顔見たら言えなかったよ……」
萌花ちゃんは言うけど、我が儘を言えたら苦労はしなかった。そんなに簡単なことじゃない。
お母さんが買ってきたパンダのパジャマが可愛くなさすぎて泣いて暴れて怒られたりとかあったし、私が喜ぶだろうと期待に満ちた目を向けられるとウサギがいいなんて駄々をこねられなかった。
後から聞いた話では赤ちゃんの頃、お母さんがウケ狙いでパンダの着ぐるみとか着せてたのが発端らしい。それからが娘をパンダ好きにしようという洗脳の始まり……結局、爆発して今はウサギだらけになってるわけだけど。
「じゃー、リンリンのパンツはパンダじゃなくてウサギ?」
上野君がいつものテンションで平然とそういうことを聞いてくるから空気が凍り付いた。
怖くて竜也君の方が見れない。なぜ、私のパンツネタなの……? お子様パンツ履いてると思われてるの?
折角、パンダのパンツ事件は伏せたのに。
「僕は陽介のデリカシーのなさが怖い。竜也も何か言ってやってよ」
ひぃぃっ、向井氏、なぜ、そこで竜也君に話を振るんですか?
全然喋らないのが怖いし、喋ってもめちゃくちゃ怖いのに。
「保護者にロリコン死ねって言われる前に黙っとけ。俺までロリコンだと思われたくねーし」
竜也君がちらっと由真ちゃんを見た。
由真ちゃんはそんな物騒なこと言わないとは言えない。この状況で由真ちゃんもかなりストレス感じてるはず。
「今日の竜也不機嫌すぎて痺れる……俺、ドMに目覚めちゃうかも……」
「陽介、キモい」
「竜也に怯えるリンリン可愛い……」
どうして、上野君はこの空気でそういうこと言えるんだろう?
元々笑って軽く流せる性格じゃないのに、この状況が怖すぎる。
竜也君はいつも自分が可愛い可愛い言ってるのに、私が可愛いって言われてるの聞いてるのってどういう気分なんだろう。上野君の言葉は上辺だけだと思うけど。
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