風の届かない夜に

あの夜、
わたしの声は だれにも届かなかった。

からだは うごかなかった。
気持ちも、いえなかった。

ふれたのか、
ふれられたのか。

なにひとつ、はっきりしないまま――

わたしのなかにだけ のこった夜のこと。

これは、
さわられなかった記憶と、
ことばにならなかった感覚が、
いまも からだに息づいている、
そんな話。
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