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第29話 断魔装備ガチャおかわり百連

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「ど、どうしよう……」

 あまりの事態に俺は頭が真っ白になってしまう。

「んー、でも仕方ないよ。ディーノ。今回はちょっと運が悪かったんだしまた次回頑張れば良いと思うよ? お金を借りてまでやるのはやめよう?」

 フラウはそう慰めてくれるが、実はまだ百連できる金はあるのだ。

 前回の残りの 3,000 マレはのうち 900 マレはまだ使わずに家の金庫に保管されているので今日受け取ったお金の残りを足せばちょうど 27,000 マレとなるのだ。

「いや、お金は足りる。足りるんだが、ギリギリなんだ」
「あれ? 足りるの? それなら引こうよっ!」
「だが、生活費が……」
「え? 生活費くらい、その辺にたくさんある使っていない装備を売れば大丈夫じゃないの?」
「!?」

 フラウに言われてはじめて気が付いたが、たしかに使っていない☆3や☆4のアイテムを売ればそれなりのお金になりそうだ。特にポーション系は高く売れるだろう。

 そうか。それなら、よし。引こう。ここで引き下がったら男がすたるってもんだ。

「よし、引くぞ!」

 俺はすぐさま追加で百連分のチケットを購入した。

「見てろ、フラウ! 俺はこれで必ず聖剣を神引きしてやる!」
「うん! ディーノ、頑張れっ! フレー! フレー! ディーノっ!」

 フラウが空中で踊りながら俺を応援してくれている。

 よし、行ける。

 可愛らしい妖精の応援を一身に浴び、俺は集中してタイミングを合わせてガチャを引いた。

 爆死だった。

「あーっ! クソっ!」

 俺は思わず大声で悪態をつくとすぐさま次のガチャを引く。

 またもや爆死だった。

「ああ! もう! もう一回!」

 俺が引こうとしたところでフラウが俺を止めてくれた。

「ディーノっ! 落ち着いて! 雑になってるよ!」

 俺はフラウのその声にハッと我に返る。

 そうだ。さっきだってこれで失敗したじゃないか。

 俺は一度ガチャの画面を閉じてスクリーンを閉じる。そして大きく深呼吸をしてから再びスクリーンを開くとガチャの画面に移る。

「ありがとう。フラウのおかげで冷静になれた。同じ失敗をするところだったよ」
「うん。大丈夫! ディーノは絶対神引きできるよ!」
「ああ。任せろ。もう同じ失敗はしない」

 俺はもう一度大きく深呼吸をすると穏やかな気持ちでスクリーンをタッチした。

 するといつものように妖精たちが箱を一生懸命運んでくる。銅箱が三つと木箱が七つだ。そして銅箱のうちの一つが銀箱へと変化する。

「よしっ!」

 俺は小さくガッツポーズをした。そして銀箱が開かれると中身が飛び出してくる。

『☆4 VIT強化』

「よし! ステータス強化! よし!」
「おめでとー! やったね!」
「フラウのおかげだよ。ありがとう」
「ううん。ディーノは集中してたもん。だから、ディーノが頑張ったんだよ」
「でも、フラウが集中させてくれたんだ。だからありがとう」
「うん」
「さあ、この調子で神引きしていこう」

 よし。調子が戻ってきた。多少は高揚感を覚えているが、それでも何故か不思議と冷静にガチャに向き合えている。

 これは、確実に良い流れになっている。

 そんなたしかな手応えを感じる中、俺は次のガチャを引く。

 今回は銀箱が一つで、『鉄の鎧(上半身)』が出てきた。

「よし。☆4が出る良い流れは継続中だ。このままの調子が続いているうちに!」

 俺は間髪入れずに次のガチャを引いていく。今回も銀箱が一つだ。

「よし。そろそろ変われ!」

 そう願いを込めるが残念ながら箱の色は変化しなかった。残念!

 そして銀箱が開かれ中身が飛び出してきた。

『☆4 STR強化』

「よし! いいぞ! あとは聖剣を引くだけだ!」
「すごーい! ステータス強化がたくさん! これだけでも神引きだねっ!」
「ああ。でも、聖剣を引かないと話にならないからな」
「そうだね。頑張って!」
「おう!」

 俺はそのままの流れで再び間髪入れずに次のガチャを引いていく。今回は銀箱が一つと銅箱が三つだ。

 そして銀箱は変化してくれず、中からは『鉄の盾』が出てきた。

「またお前かっ!」

 思わずそう叫んでしまったが今度はこの程度では冷静さを失ったりはしない。

 俺は落ち着いて次々と箱を開けていく。すると銅箱の一つが銀箱へと変化した。そして中身が飛び出してくる。

『☆4 MP強化』

「え?」

 ずっと欲しいと思っていた物が飛び出してきたことに思わず俺は放心してしまい、そして目をこすってこれが現実であることを確認する。

「すごーい! やったね! ずっと欲しかった奴だっ!」
「あ、ああ」
「あれ? どうしたの? 嬉しくないの?」

 フラウが不思議そうな顔をして俺の顔を覗き込んでいた。

「あ、いや、嬉しいよ。うん。ただ、予想外の物が出てきて理解が追いついていないだけだから」
「そっか。うん。良かったね。頑張ってもう百連引いて良かったね」
「ああ、そうだな」

 俺はそう言って一つ大きくため息をつく。

「よし、良い流れだ」

 俺はそう呟くと自分の頬を軽く叩いて気合を入れ直す。

 ここまで百六十連引いているがまだ金箱が一つも引けていないが、そろそろ出てもいいころなはずだだ。

 今まではおよそ百連で一つくらいの確率で金箱は出ていたのだから、この百連では必ず引き当てられるはずだ。

 そう。俺は引ける。断魔の聖剣を引くんだ。

 俺は流れを途切れさせないように、しかし落ち着いて次のガチャを引くべくスクリーンを静かにタップした。

 いつも通り、妖精たちが箱を一生懸命運んでくる。

 来た! 金箱だ!

「よし! いいぞ! 来い! 来い! 断魔の聖剣! 来い!」

 金箱を運んできた妖精はいつぞやぶりかのドヤ顔サムズアップを俺に見せてくれ、そして箱が開いて中身が飛び出してくる。

『☆5 断魔の鎧(上半身)』

「あー! 惜しい! でもよし! ピックアップ来た! よし! よし! よーし!」
「おめでとー! きっとこれを着たディーノはかっこいいよっ!」
「ああ、ありがとう。とりあえず一つ引けて一安心だ」
「苦戦してたもんね!」
「ああ。だが俺が欲しいのは聖剣だからな。残りの三十連で神引きしてやるよ」
「うん。ディーノならできるよっ! 頑張れっ!」

 フラウの応援を背に再び俺はガチャに向き合う。

 俺とガチャとの真剣勝負だ。

 最大限の集中と共にタイミングを見計らって俺はガチャを引く。そして銀箱が一つ運ばれてきた。

「よし! 変われ! 金箱! 聖剣!」

 しかしそうは問屋が卸さない。残念ながら銀箱のままで、中からは『ショートボウ』が飛び出してきた。

「ん? ショートボウ? ああ、そういえば石の矢の使い道ができたな」
「おめでとー!」
「ああ。これはこれでありだな」

 弓は使ったことが無いので【弓術】を引かなくてはダメだろうが、きっとそのうち引けるだろうから先行投資と考えれば悪くないだろう。

「よし。良い流れは続いている。次こそ神引きだ!」

 俺は再びガチャを引く。銀箱が二つと銅箱が三つ、そして木箱が五つだ。

 よし、悪くない。むしろ上出来だ。そして最初の銀箱だ。妖精たちがパワーを送り、俺も変わる様に念じる。

 変わった!

 見事に金箱へと変わったその箱が開き中身が飛び出してくる。

『☆5 断魔の鎧(下半身)』

「よーし! いいぞ! 上下揃った! これはアツい」
「やったぁ! やったねディーノ! おめでとー!」
「ああ、ありがとう。百連で☆5二つはアツい。これは神引きだ」
「うん。すごいよディーノ」
「ああ。後は聖剣を引くだけだ」

 そして次の銀箱がやってくる。

「来い! 変われっ! 変わっていいんだぞっ!」

 しかし俺の叫びも空しく箱は変化しない。そして箱の中身が飛び出してくる。

『☆4 VIT強化』

「よしっ! ステータス強化! よしっ!」
「さすが! サバンテの神引き男は伊達じゃないねっ!」
「よせよ。照れるじゃないか」

 これだけの神引きをしてこれだけフラウに褒めらると気分が良い。やはりおかわり百連を引いてよかった。

「よし。あとラスト十連! 泣いても笑ってもこれがラスト! 聖剣! 出てきてもいいんやでっ!」

 ついエセ関西弁が出てしまったが、俺は最高の気分で最後のガチャを引く。

「爆死だー!!!」

────
今回のガチャの結果:
☆5:
 断魔の鎧(上半身)
 断魔の鎧(下半身)
☆4:
 MP強化
 STR強化
 VIT強化×2
 ショートボウ
 鉄の鎧(上半身)
 鉄の盾
☆3:
 テント(小)×2
 火打石
 堅パン
 石の矢十本×2
 虫よけ草×2
 鉄のスコップ×3
 銅の剣
 皮のブーツ
 皮の鎧(下半身)
 皮の鎧(上半身)
 皮の盾×2
 皮の水筒
 皮の袋×3
 皮の帽子×3
 片刃のナイフ×2
 木の食器セット
 薬草×2
☆2:
 ただの石ころ×9
 枯れ葉×4
 糸×7
 小さな布切れ×10
 薪×8
 動物の骨×3
 馬の糞×6
 皮の紐×4
 腐った肉×4
 藁しべ×6

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乱数は言っている。ここで引く運命さだめではないと。

というわけで、断魔の聖剣なしのルートに突入しました。
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