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「うぅ~あぁ~…………」

 オレは今、ベッドの上で俯せに倒れている。体中が痛くてピクリとも動きたくない。

「あ、あのあの……大丈夫でしょうか?」

 ニナが心配げに声をかけてくる。

「いや、もうダメ……オレ死ぬかも……」
「ええーっ!? お、おおおお医者さまぁぁぁっ!」
「ああ、大丈夫大丈夫。言葉のあや的なアレだから。ホントに死にはしないから」

 彼女はよく動いて気も効くし素晴らしい侍女なのだが、純粋過ぎる故にオレの言葉を真正面から信じてしまう。それが可愛いとこでもあるがネックでもある。冗談が通じないのだ。

「ほ、ほほほほんちょに大丈夫にゃんでしゅか?」

 ああ……今はニナのカミカミ言葉がすっげえ癒されるぅ。

「うん、ホントに大丈夫。ただまあ、あれから一週間、クーアイが手加減無しにシゴくもんだから身体が悲鳴上げちゃってさ……」

 モルニエから騎士団配属の任命を受けてから一週間。早いよね。だがそのほとんどが修練だった。
 つうかね、彼女半端ねえ。どこぞのアスリートを軽く超越するようなトレーニングを平然とやってのけるんだから。

 十キロ以上はあろうかと思われる石を背中に担いで十キロほどの軽いランニング。これ、身体を温めるための前座らしい。その後は剣での素振りなんだけど、片手ずつ五百。最後は両手で千回。もうこの時点でオレの身体は痙攣しっ放し。その後は兵士たちと隊列訓練。この時も石を装備する。隊列が合わなければ何度もやり直し。

 もちろんヘトヘトのオレが、他の兵士たちと同じ動きができるわけがないので当然動きは遅れてしまう。その度にやり直し。兵士たちからは「何だよアイツ! やる気あんの!」的な感じで睨まれる。もうホントごめんなさい。
 しかもそれが午前の部。午後は実戦形式の訓練。兵士同士の模擬戦などを行い、一対一や多対一などの状況を想定して戦闘訓練を行う。

 この世界では日にちや時間の感覚は日本とほぼ同じだった。時計の存在もあるんだから少しビックリだ。そこで一週間、みっちり訓練をさせられた。
 何度逃げようと思ったか分からないが、何故オレがこれほど頑張れたのか……それはひとえに結果が分かり易い形で確認できたからだろう。

 

名前 オウギ・フジサキ 
称号 煩悩ゲーマー

【ステータス】
Lv 7      GP 0
 
HP 53/53     MP 46/46
 
NEXT 86    EXP 312


【パラメータ】
 攻撃 20   防御 19   魔攻 31   魔防 22
 敏捷 24  命中 33  回避 20    頭脳 5

【魔本】
黒の魔本   Lv1   NEXT 10

【GS】
 魔弾の射手   消費MP 1~全

【称号】
 神の御使い・煩悩ゲーマー・オッパイ好き(特に巨乳)・変態青少年・ドMの目覚めかけ


 こんなふうに鍛えれば確実にレベルが上がって強くなっている実感があるので何とか頑張れる。それにだ、修練の時はあのクーアイが直々に傍にいるので、動く度にあの豊満な胸が揺れるのをこの目で拝むことができる。
 それだけでオレはどこまでも走り続けることができそうだ。最近チラ見スキルが異常に発達している実感もある。フッ……オレも成長したものだぜ。あと、オレは決してドMじゃない。

「あ、それじゃもうすぐ夕食なので、お運びしてきましゅね!」
「あ、うん。いつもあんがとね~」

 ニナが部屋から出て行った後、仰向けに寝返る。

 メニューについてただ気になることが一つある。それは魔本だ。メニューを開きながらある項目を凝視する。
このGPってのがグリムワー・ポイントって呼ばれているものはもう分かってる。けどレベルが上がっても全く増えないんだよなぁ。

 魔本のレベルを上げるにはこのGPが必要になるようだ。ただこのポイントの稼ぎ方が分からない。クーアイのメニューにはGPが七十くらいあったと思うので、何かしら増える方法はあるはずなのは間違いない。

「ゲームならレベルが上がれば技が強くなったり、他の技が増えたりするんだよなぁ。けどどうやったら増えるんだ? クーアイに聞いても分かんないって言ってたし……」

 それはそうだろう。このメニューは“神の御使い”であるオレがこの世界へ来て初めて顕現したもの。このポイントの存在もそのはずだ。ポイントの上げ方をクーアイが知っているはずもなかった。

「う~ん……オレ自身のレベル上げに関係がないってことは……やっぱり魔本を使うことで増えるってことか?」

 ここ一週間、ほぼ魔本を使ってはいなかった。今は基礎体力を上げることが優先だと言われて魔本よりも体力作りなどがメインだったからだ。
 オレはチラリと窓を見つめる。窓が開いていて、そこから気持ちの良い風が入ってくる。

「……とりあえず試してみるか」

 オレはあることを思いつき、

「来たれ、我が魔本、“黒の魔本”!」

 仰向けになりながら詠唱すると、目の前に黒い本が出現する。開いて手形があるのでそこに手を置く。そして《魔弾の射手》と呟くと、粒子状に魔本が散り右手に集束されて銃を形成していく。



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