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ふたりの暮らし
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「慎くん」
朝。真山を起こしてくれるのは目覚ましのアラームではなく桐野の柔らかく澄んだ声だった。
鼓膜を震わせる声は優しくて、真山は幸せな気持ちで目覚めを迎える。
布団から顔を出した真山の目に映るのは、桐野の穏やかな笑みだ。
「んあ、おはよ、そーいちさん」
「おはよう。朝ごはんにしよう」
ベッドの上で挨拶を交わして、真山はのんびり起き出す。
先に起き出すのは桐野で、一通りの身支度と朝食の支度を終えたあと、まだベッドに潜っている真山を起こしてくれる。
真山は朝はそんなに強くない。まだ重い瞼を擦りながらパジャマ姿でダイニングセットに座ると、そこには桐野が用意した二人分の朝食が並んでいる。
朝は食べないことの方が多かった真山だが、桐野の家に来てからはちゃんと食べるようになっていた。
今朝のメニューはグリーンスムージーと、白いプレートに載ったトーストと目玉焼き、ウインナーとチーズだった。
「いただきます」
真山が手を合わせると、向かいに座る桐野が同じように手を合わせた。
「いただきます」
ホテルの朝ごはんみたいだと思いながら、真山はトーストに齧り付いた。
綺麗なきつね色に焼き上げられたトーストに歯を立てると、軽やかな音がした。表面はむらなく焼けていて、中はふわふわと柔らかい。パン自体がうっすらと甘くて、塗られたバターの塩気とよく合っている。きっと高いパンなんだろうと思う。
目玉焼きはベーコンエッグで黄身はとろとろの半熟。塩と胡椒のかかったところに醤油を少しだけ垂らして食べるのが真山の食べ方だった。
ウインナーとチーズも美味しいし、グリーンスムージーは見た目に反して青臭さもなくフルーツの味がして飲みやすかった。
朝食を終えると、真山は二人分の洗い物を済ませ、身支度をする。その間に桐野はリビングでラップトップを開き、メールチェックをしているようだった。
気温もだいぶ上がるようになってきて、服選びも春っぽい物を選ぶようになった。カットソーにジャケットと、細身のパンツ。桐野と並んでも恥ずかしくないように、持っている中でも品のいいものを選ぶようになった。忘れ物がないかリュックの中身を確認して、真山は部屋を出る。
身支度を終えた真山がリビングに行くと、桐野がパソコンを閉じたところだった。
「慎くん、忘れ物はないか」
ジャケットを羽織ってネクタイを整える桐野の姿を見るのが好きだった。
「ん」
「今夜は外で食べようか。おすすめの店があるんだ」
桐野は楽しげに言う。
週に二度ほど、桐野は真山を行きつけの店に連れて行ってくれる。だいたいが高級店で、その度に真山は住む世界の違いを見せつけられて緊張していた。
それでも、桐野と一緒に美味しいものを食べられるのは楽しかった。自分の知らなかった世界が見えて、桐野の見ている世界が見えて、そこに自分がいられるのが嬉しかった。
ひとつずつ、小さな夢が叶っていく。隣に桐野がいて、優しく笑ってくれる。その度に真山は甘やかな幸せを噛み締めた。
「ふふ、楽しみにしてる」
「迎えは駅でいいか」
「うん。夕方には終わる予定だから、連絡するね」
そんな会話をしながら二人で家を出る。
送迎は桐野がしてくれる。大学くらい自分でいけると言ったが、桐野には一緒にいる時間が少しでも長いほうがいいと言って押し切られた。
そんなことを言われたら、真山には断ることはできなかった。
最初は大学の前まで送迎してくれて、それは流石に目立ちすぎるのでやめて欲しいと頼んで駅までの送迎になった。
大学に着くと、真山は授業を受ける。真山がいるのは経済学部だ。四年になると授業は少ないが、退屈なので他の学部の講義を覗いてみたり、図書館で勉強したりしていた。卒業論文も就職活動もあるので準備もしておかなくてはならない。大学に行く日はたいていそうやって夕方まで時間を潰す。
帰りは、真山が駅に着く頃には桐野がもう待っている。ロータリーにいても、桐野の車はすぐわかった。黒い塗装はいつも綺麗に磨かれて艶がある。車にはそんなに詳しくない真山にも、見れば一目でわかる。
真山が近付くと、ドアのロックが解除される。
「おつかれさま、慎くん」
「そーいちさんも、おつかれさま」
助手席に乗り込むと、運転席にいる桐野の笑みが真山を迎えた。
真山も笑みで応え、言葉を交わすのがいつもの流れだった。
「少し時間があるから、買い物に行ってもいいだろうか。明日の朝のパンがないから」
「うん」
真山がシートベルトを着けると、二人を乗せた車は静かに走り出した。
桐野は慣れた様子で車を運転する。社長ともなれば運転手がついていそうなのに、桐野は自分で運転している。運転も上手い。もちろん車の性能はあるが、車の性能を過信した運転ではない。ブレーキは優しく、加速も穏やかだ。
「そーいちさん、運転上手いよね」
「そう、だろうか」
「運転手はいないの?」
「ああ。自分で運転したくて」
「そうなんだ」
桐野は意外と自立心がある。しっかりしているしちゃんと考えている。わかってはいたが、自分に比べたらずっと大人だ。
二人を乗せた車は、幹線道路から住宅の多い細い道に入り、裏通りのコインパーキングに停まった。
「この近くに行きつけのパン屋があるんだ」
桐野に連れてこられたのは裏通りにある小さなベーカリーだった。店に入るとパンの香ばしい匂いがする。こじんまりとした個人経営のベーカリーのようで店舗はそれほど広くはないが、人気店のようで閉店が近い時間なのも相俟って残っているパンはほとんどなかった。
桐野は袋に入った食パンを買った。桐野のお気に入りで、予約をしていたらしかった。茶色の紙袋に入れて渡され、二人は店を出た。
朝。真山を起こしてくれるのは目覚ましのアラームではなく桐野の柔らかく澄んだ声だった。
鼓膜を震わせる声は優しくて、真山は幸せな気持ちで目覚めを迎える。
布団から顔を出した真山の目に映るのは、桐野の穏やかな笑みだ。
「んあ、おはよ、そーいちさん」
「おはよう。朝ごはんにしよう」
ベッドの上で挨拶を交わして、真山はのんびり起き出す。
先に起き出すのは桐野で、一通りの身支度と朝食の支度を終えたあと、まだベッドに潜っている真山を起こしてくれる。
真山は朝はそんなに強くない。まだ重い瞼を擦りながらパジャマ姿でダイニングセットに座ると、そこには桐野が用意した二人分の朝食が並んでいる。
朝は食べないことの方が多かった真山だが、桐野の家に来てからはちゃんと食べるようになっていた。
今朝のメニューはグリーンスムージーと、白いプレートに載ったトーストと目玉焼き、ウインナーとチーズだった。
「いただきます」
真山が手を合わせると、向かいに座る桐野が同じように手を合わせた。
「いただきます」
ホテルの朝ごはんみたいだと思いながら、真山はトーストに齧り付いた。
綺麗なきつね色に焼き上げられたトーストに歯を立てると、軽やかな音がした。表面はむらなく焼けていて、中はふわふわと柔らかい。パン自体がうっすらと甘くて、塗られたバターの塩気とよく合っている。きっと高いパンなんだろうと思う。
目玉焼きはベーコンエッグで黄身はとろとろの半熟。塩と胡椒のかかったところに醤油を少しだけ垂らして食べるのが真山の食べ方だった。
ウインナーとチーズも美味しいし、グリーンスムージーは見た目に反して青臭さもなくフルーツの味がして飲みやすかった。
朝食を終えると、真山は二人分の洗い物を済ませ、身支度をする。その間に桐野はリビングでラップトップを開き、メールチェックをしているようだった。
気温もだいぶ上がるようになってきて、服選びも春っぽい物を選ぶようになった。カットソーにジャケットと、細身のパンツ。桐野と並んでも恥ずかしくないように、持っている中でも品のいいものを選ぶようになった。忘れ物がないかリュックの中身を確認して、真山は部屋を出る。
身支度を終えた真山がリビングに行くと、桐野がパソコンを閉じたところだった。
「慎くん、忘れ物はないか」
ジャケットを羽織ってネクタイを整える桐野の姿を見るのが好きだった。
「ん」
「今夜は外で食べようか。おすすめの店があるんだ」
桐野は楽しげに言う。
週に二度ほど、桐野は真山を行きつけの店に連れて行ってくれる。だいたいが高級店で、その度に真山は住む世界の違いを見せつけられて緊張していた。
それでも、桐野と一緒に美味しいものを食べられるのは楽しかった。自分の知らなかった世界が見えて、桐野の見ている世界が見えて、そこに自分がいられるのが嬉しかった。
ひとつずつ、小さな夢が叶っていく。隣に桐野がいて、優しく笑ってくれる。その度に真山は甘やかな幸せを噛み締めた。
「ふふ、楽しみにしてる」
「迎えは駅でいいか」
「うん。夕方には終わる予定だから、連絡するね」
そんな会話をしながら二人で家を出る。
送迎は桐野がしてくれる。大学くらい自分でいけると言ったが、桐野には一緒にいる時間が少しでも長いほうがいいと言って押し切られた。
そんなことを言われたら、真山には断ることはできなかった。
最初は大学の前まで送迎してくれて、それは流石に目立ちすぎるのでやめて欲しいと頼んで駅までの送迎になった。
大学に着くと、真山は授業を受ける。真山がいるのは経済学部だ。四年になると授業は少ないが、退屈なので他の学部の講義を覗いてみたり、図書館で勉強したりしていた。卒業論文も就職活動もあるので準備もしておかなくてはならない。大学に行く日はたいていそうやって夕方まで時間を潰す。
帰りは、真山が駅に着く頃には桐野がもう待っている。ロータリーにいても、桐野の車はすぐわかった。黒い塗装はいつも綺麗に磨かれて艶がある。車にはそんなに詳しくない真山にも、見れば一目でわかる。
真山が近付くと、ドアのロックが解除される。
「おつかれさま、慎くん」
「そーいちさんも、おつかれさま」
助手席に乗り込むと、運転席にいる桐野の笑みが真山を迎えた。
真山も笑みで応え、言葉を交わすのがいつもの流れだった。
「少し時間があるから、買い物に行ってもいいだろうか。明日の朝のパンがないから」
「うん」
真山がシートベルトを着けると、二人を乗せた車は静かに走り出した。
桐野は慣れた様子で車を運転する。社長ともなれば運転手がついていそうなのに、桐野は自分で運転している。運転も上手い。もちろん車の性能はあるが、車の性能を過信した運転ではない。ブレーキは優しく、加速も穏やかだ。
「そーいちさん、運転上手いよね」
「そう、だろうか」
「運転手はいないの?」
「ああ。自分で運転したくて」
「そうなんだ」
桐野は意外と自立心がある。しっかりしているしちゃんと考えている。わかってはいたが、自分に比べたらずっと大人だ。
二人を乗せた車は、幹線道路から住宅の多い細い道に入り、裏通りのコインパーキングに停まった。
「この近くに行きつけのパン屋があるんだ」
桐野に連れてこられたのは裏通りにある小さなベーカリーだった。店に入るとパンの香ばしい匂いがする。こじんまりとした個人経営のベーカリーのようで店舗はそれほど広くはないが、人気店のようで閉店が近い時間なのも相俟って残っているパンはほとんどなかった。
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