3 / 42
離婚しましょう
第三話
しおりを挟む
7年前
コントラリー株式会社は全国的に展開している輸入食品の会社だ。今世界中ではやっている商品をいち早く輸入買付をし、全国のショップに下ろしたり、カフェを展開したりしている。
今私はこの会社の中でも花形である海外事業部のメンバーに見られて、フロアの前に立っていた。
『新しくアシスタントに配属になりました。三条弥生……です』
緊張しすぎて最後まで言葉が言えなかった私は、言葉に詰まってしまう。
私はもともとショップ店員希望だったが、なぜかこの部署のアシスタントに配属になってしまい、緊張と不安でいっぱいだった。
「すみません」
それ以上何も言えず謝れば、その空気を壊すように、私の隣にいた同期の望月さんが一歩前に出た。研修の時からハキハキとしていて、活発そうな彼女。
「望月佐和子です。営業に配属になりました。少しでも早く仕事を覚えて戦力になれるようにがんばりますのでよろしくお願いします」
張りのある声に肩までのブラウンのボブスタイル。いかにもできる風の彼女に同じ年ながら圧倒されてしまう。
それがさきほどの挨拶につながったわけで。
となりで完璧に自信をもって話す望月さんに、自分が情けなくなり心の中でため息をつく。
挨拶もそこそこに、私のOJT担当に紹介される。
「金沢宗次郎です」
優しい声音で微笑む彼は、とても優しそうな人でほっとする。
「僕の補佐としてしばらく着いてもらうからね」
「はい。よろしくお願いします」
穏やかな人なのだろう。整った顔に漆黒の瞳が私を見下ろす。地元の兄に似ている気がする雰囲気に、ようやく息が吐けた気がした。
その横で、望月さんも誰かと話をしている声が聞こえた。
「堂前尋人、わからないことがあったらすぐに聞いて」
低く響くテーノルに私はちらりと隣を見た。身長が高く、椅子に足を組んでいるその人は、とても威圧感があり、私の担当が金沢さんでよかった。そう思った時だった。
「今、俺じゃなくてよかったって思っただろ」
少しイジワルそうに聞こえた声に、私はギクッとしてしまう。その言葉は明らかに私に言われていたことが分かった。
「尋人、やめろ」
仲が良いようで、金沢さんがその人を戒める。
「ごめんね、言い方はきついけど悪い奴じゃないから。俺と同期なんだ」
金沢さんが苦笑しながら説明してくれるのを、私は黙って聞いていた。
「そうなんですね」
納得したのは望月さんで、その後彼女は私に視線を向けた。
「えっと三条さん。研修で一度も同じ班になれなかったけど、これから同じ部署だし仲良くしてね」
屈託のない笑顔を向けられ、私はキョトンとしてしまったのだろう。
「おい、返事は?」
堂前さんのその言葉に、私はハッとして望月さんに慌てて言葉を発した。
「私こそ、よろしくね」
私に微笑んでくれる彼女にホッとしていると、横の椅子がくるりと私の方に向くのが分かった。
「俺たちにもよろしくは?」
堂前さんのきれいすぎるその顔にも、揶揄うような言い方に少しムッとしたのだろう。
そんな私を見て、彼は楽しそうに笑った。
コントラリー株式会社は全国的に展開している輸入食品の会社だ。今世界中ではやっている商品をいち早く輸入買付をし、全国のショップに下ろしたり、カフェを展開したりしている。
今私はこの会社の中でも花形である海外事業部のメンバーに見られて、フロアの前に立っていた。
『新しくアシスタントに配属になりました。三条弥生……です』
緊張しすぎて最後まで言葉が言えなかった私は、言葉に詰まってしまう。
私はもともとショップ店員希望だったが、なぜかこの部署のアシスタントに配属になってしまい、緊張と不安でいっぱいだった。
「すみません」
それ以上何も言えず謝れば、その空気を壊すように、私の隣にいた同期の望月さんが一歩前に出た。研修の時からハキハキとしていて、活発そうな彼女。
「望月佐和子です。営業に配属になりました。少しでも早く仕事を覚えて戦力になれるようにがんばりますのでよろしくお願いします」
張りのある声に肩までのブラウンのボブスタイル。いかにもできる風の彼女に同じ年ながら圧倒されてしまう。
それがさきほどの挨拶につながったわけで。
となりで完璧に自信をもって話す望月さんに、自分が情けなくなり心の中でため息をつく。
挨拶もそこそこに、私のOJT担当に紹介される。
「金沢宗次郎です」
優しい声音で微笑む彼は、とても優しそうな人でほっとする。
「僕の補佐としてしばらく着いてもらうからね」
「はい。よろしくお願いします」
穏やかな人なのだろう。整った顔に漆黒の瞳が私を見下ろす。地元の兄に似ている気がする雰囲気に、ようやく息が吐けた気がした。
その横で、望月さんも誰かと話をしている声が聞こえた。
「堂前尋人、わからないことがあったらすぐに聞いて」
低く響くテーノルに私はちらりと隣を見た。身長が高く、椅子に足を組んでいるその人は、とても威圧感があり、私の担当が金沢さんでよかった。そう思った時だった。
「今、俺じゃなくてよかったって思っただろ」
少しイジワルそうに聞こえた声に、私はギクッとしてしまう。その言葉は明らかに私に言われていたことが分かった。
「尋人、やめろ」
仲が良いようで、金沢さんがその人を戒める。
「ごめんね、言い方はきついけど悪い奴じゃないから。俺と同期なんだ」
金沢さんが苦笑しながら説明してくれるのを、私は黙って聞いていた。
「そうなんですね」
納得したのは望月さんで、その後彼女は私に視線を向けた。
「えっと三条さん。研修で一度も同じ班になれなかったけど、これから同じ部署だし仲良くしてね」
屈託のない笑顔を向けられ、私はキョトンとしてしまったのだろう。
「おい、返事は?」
堂前さんのその言葉に、私はハッとして望月さんに慌てて言葉を発した。
「私こそ、よろしくね」
私に微笑んでくれる彼女にホッとしていると、横の椅子がくるりと私の方に向くのが分かった。
「俺たちにもよろしくは?」
堂前さんのきれいすぎるその顔にも、揶揄うような言い方に少しムッとしたのだろう。
そんな私を見て、彼は楽しそうに笑った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
556
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる