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ピンチはチャンス? でもやっぱりピンチでしょっ!⑦
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副団長のシレルさんからのご指名だそう。
う~ん。
私ごときで、お役に立つことがあるのやら……。
ほけほけと王宮騎士団の訓練場に行ったら、行ったんだけど……
なんかみなさんがんばり過ぎじゃありませんかっ。
クリシャの修行(という名のイタズラ)を受けてるのは、メインキャラの魔法士たちなのに、どうして騎士さんたちがボロボロに?
「おぉ、アン殿。
お忙しいところ、誠に申し訳ない」
いえいえ。
程々の動きしかしていないので、お構いなく。
にしても、騎士さんたちってば、なんでこんなにボロボロ?
「みなさまのご尽力を得て、我らもそれぞれの武器にクリシャ様からの魔法強化を頂いたのですが……」
ですが?
「どうも扱いが難しく。
もちろん、実戦に赴くまでにはこの命をかけても何とかいたします。
ですが、今のところ情けない話ですが如何ともし難く」
いえいえ。
命のかけどころ間違ってますから。
「クリシャ様はなんと?」
もし不良品だったら、もう一度塔に戻って、部屋中蹴っ飛ばしまくってやる。
「何度かお伺いに行っておるのですが、どうもご多忙らしく『そっちで何とかせよ』との仰せで」
…………蹴っ飛ばし + ほうきで棚のもの叩き落とすの決定。
本人もスキを突いて蹴っ飛ばしてやろ。
それはとにかく、モブ魔法士の私の目線で見てみる。
確かに武器には魔法がかけられてる。
でもそれが一定じゃない、というかよく見るとそれぞれ違う。
同じ形の大剣を扱っている騎士さん同士でも、違ってる。
それに、微かに聞こえる囁きのような音……
これって……
「精霊?」
まさかね?
「アン? なぜここに?」
呼ばれて振り向くと、予想通りボロボロのイスリオ。
イスリオの大剣も、他の騎士さんのとはまた違ってる。
団長として色々試したんだろなぁ。
ボロボロ具合が他の騎士さんたちより激しい。
それなのにキラキライケメンなのは、メインキャラの為せる技ね。
「シレル、アンは呼ばないようにと……」
お?
ご指名はシレル副団長の独断でしたか。
「しかし、団長。
我らも死力を尽くしておりますが、未だ武器の制御を行えたものはおりません。
このままでは来るべき魔王との戦いにおいても、どれほどのお役に立てるものか。
恥を忍び、たとえアン殿にみっともない姿をお見せしようとも、騎士の本分を全うせねばなりませんっ」
いえいえ。
なにおっしゃいますやら。
「人々を守るため、日々訓練に明け暮れていらっしゃる騎士様方を、敬いこそすれそのお姿をみっともないなどと思う訳はございません。
汗と土にまみれていらっしゃるお姿こそ、厳しい鍛錬の証でございましょう」
テキトーに過ごしている私のほうがいたたまれません。
「アン……」
「アン殿……」
なぜかイスリオも感激の面持ちで見てくる。
ついでに、声が聞こえて範囲の騎士さんたちも、手を止めて見てくるんですけどっ。
モブごときがっ、上から目線ですみませんっ。
ちょっとでも状況を挽回すべく、イスリオに剣を見せてもらう。
たしかに魔法なんで、『拡大』ができるはず。
なぁんか音、というか囁きが聞こえるような………って『拡大』しまくっていると、聞こえた。
『…………、……っ。…………』
とても口に出す気にはなれない言葉で、最上級に丁寧な言葉で要約すると、『早くイスリオの手にもどせ××ババア』と仰っている。
…………へし折ったろか。
「アン? どうかしたのか?」
剣を抱え込んでプルプルしたら、それは心配になるよね。
良からぬ病気ではございません、はい。
ただ感情の高ぶりがですね、
『…………っ』
うっさいわ、この精霊。
どうやらクリシャは、それぞれの武器に精霊を顕現させてみたい。
フツーに魔力込めれば済む話だったのに、無駄に物事を複雑化してるよ、古の大魔道士サマめ。
なんとなく対処法はわかったので、イスリオに大剣を返す。
「あのね、そうだなぁ、馬みたいに接してみて」
「馬?」
「そう」
なんか精霊が『馬ごときとっ』って気配を出してくるけど、だからうっさいって。
もう少し丁寧なお言葉をお使いくださいませ。
「騎士だったら、自分の乗馬は大事にするでしょう?
名前をつけて、世話を焼いて、話しかけて。
それをこの剣にもしてみて」
イスリオは不思議そうな顔で、自分の剣を見る。
それはそうだよね。
いきなり無機物に名前をつけろっていわれても。
「それは、大事な名前がいいのか?」
「そうだね、愛しめるのがいいかな」
「アン……はダメだろうな……血を浴びることもあるだろうし、万が一、折れでもしたら……」
はいはい。
ぶつぶついってないで、さっさと決めるっ。
「では、『リア』にする」
結構可愛い名前。
「いや……お前の名前は、アンジェリカだと知ったので……リカよりはリアの方が呼びやすいし……」
なにか呟いてるけど、別になんでもいいよ。
昔の恋人の名前でもなんでも。
精霊も文句はないみたいだし。
「次は、正しく扱ってあげることと、意志を伝えること。
口に出す必要はないから、心で思うだけでいいと思う。
でも、できるだけ具体的に」
馬だって、手綱とか鐙とかで意思を伝えている(って何かで読んだ気がする。馬、乗ったことないけど)ので、それを剣に伝えてあげたらいい。
「そうだね、例えばあれ」
私は少し離れたところにある、修練場の石積みを指した。
普段ならそれに藁や布を巻いて、槍を突く訓練をするためのものなんだけど、今は石だけになってる。
「あれを切るのをイメージして」
イスリオが剣を構える。
普通の剣なら届くわけもない距離。
だけど、この剣の精霊なら…………
イスリオが剣を振り下ろす。
ガゴッ
石積みに斜めに線が入り、滑るように上半分が地面の落ちた。
『おおっ』
モブと化してくださった騎士さん方から漏れる声。
「これは……」
自分の剣を見つめて驚くイスリオ。
それはそうだよね。
「どうやらクリシャ様がかけてくださった魔法は、それぞれの武器に宿っている精霊を顕現するもののようです。
精霊は気まぐれですから、名を与え、その存在を認め、意志を伝えることで初めてその持ち主の力になるのでしょう」
ここまで事前に説明しとかないと、使えるわけないじゃん。
クリシャ自体が使えないわ。
と、唐突にイスリオから抱きしめられた。
「ありがとう、アン。
これで進むべき方向が見えた」
イスリオもボロボロになるまでがんばってた……て、うわっ、体重かけすぎっ。
抱きしめられたままよっかかられて、ずりずりと腰から地面についてしまった。
「え? イスリオ?」
イスリオの顔を覗き込むと、え?、人を抱き込んだまま、寝てる?
見上げてシリル副団長さんに助けを求めると、イスリオを引きはがして、手を取って立たせてくれた。
「これは不調法なことを。
申し訳ございません、アン殿。
団長も諸事雑務を一手に引き受けられ、団員が修練するための時間を最大限確保するために動いていらっしゃいまして。
幾度となくお休みいただくよう進言したのですが聞き入れていただけず……
それがようやく付与いただいた魔法を生かせる道がわかり、安堵なさったのでしょう」
やっぱり、才能やキラキラだけでは重責はこなしきれない。
メインキャラたちも、キラキラの陰で、小説では書かれていないところで努力や苦労や苦悩をしてるんだろうなぁ。
モブには関わりなくて、申し訳ないけど。
その後、意識のないイスリオを騎士さん方がお風呂に入れてあげて宿舎の寝台に放り込んだ。
シレルさんの判断で、翌日は休養日。
私も、武器の手入れがおすすめ、と差し出口を入れたので、もしかしたら幾人かは手入れしてくれるかも。
物につく精霊は、やっぱりその物が大切に扱われると、機嫌がよくなるしね。
で、夢うつつのイスリオを宿舎の部屋に覗きに行ったら、寝台からにゅっ、って腕が出てきて、そのまま抱き枕にされました。
実は起きてるんじゃないのーーっ、って、厚い胸板に顔を押しつけられながらもごもごしてみたけど、本当に寝ぼけてるだけみたい。
なぜわかったのかというと、本気で目が覚めたイスリオが、『ずいぶんいい夢だと思ってたんだ』っていって、抱き着きなおしてきたから。
なんだか可愛くなって、胸に抱きしめて、よしよしと頭を撫でていたら、なんだか可愛くない動きを見せ始め……翌朝ツヤツヤに輝くイケメンメインキャラと、寝台から起き上がれないモブ。
なんか最近、どっかでもあった風景。
騎士さん方の宿舎なんで、身の回りをしてくれる女性はいない。
水とか食料とか持ってきてくれる騎士さんに対して、イスリオは一歩も部屋に入れないどころか、扉を完全に閉めた状態で廊下に置いておかせて、立ち去った後に物を部屋に入れる徹底ぶり。
そんなに秘密主義だと、団長としてみんなの信頼を得られないのでは?
いらぬモブの心配だけど。
そんなことやこんなことがあって、魔王討伐向けて浮ついた空気の王宮。
私もモブなりにその空気に乗って、役に立たずに王宮内をうろつきまわって、あちこちのお手伝いなんかしてた。
その日、用事がなんとか片付いたんで、自分の部屋の扉を開けた。
…………。
私の寝台の上に、なにか乗ってる。
一度扉を閉める。
周りを見回す。
ここは私の部屋。間違いない。
もう一度、扉を開ける。
やっぱり寝台の上に物、というか者が乗ってる。
しかもちょこん、とか人の部屋にお邪魔してます、って風情じゃなくて、完全にくつろぎぎってる。
「遅いではないか。
我を待たすとはいい度胸だの、アンよ」
一見美少年の、実は相当若作りが判明の大魔導士が、私の部屋の、私の、寝台の上にいる。
…………。
私はもう一度扉を閉めた。
…………今晩は、廊下で寝ようかな。
う~ん。
私ごときで、お役に立つことがあるのやら……。
ほけほけと王宮騎士団の訓練場に行ったら、行ったんだけど……
なんかみなさんがんばり過ぎじゃありませんかっ。
クリシャの修行(という名のイタズラ)を受けてるのは、メインキャラの魔法士たちなのに、どうして騎士さんたちがボロボロに?
「おぉ、アン殿。
お忙しいところ、誠に申し訳ない」
いえいえ。
程々の動きしかしていないので、お構いなく。
にしても、騎士さんたちってば、なんでこんなにボロボロ?
「みなさまのご尽力を得て、我らもそれぞれの武器にクリシャ様からの魔法強化を頂いたのですが……」
ですが?
「どうも扱いが難しく。
もちろん、実戦に赴くまでにはこの命をかけても何とかいたします。
ですが、今のところ情けない話ですが如何ともし難く」
いえいえ。
命のかけどころ間違ってますから。
「クリシャ様はなんと?」
もし不良品だったら、もう一度塔に戻って、部屋中蹴っ飛ばしまくってやる。
「何度かお伺いに行っておるのですが、どうもご多忙らしく『そっちで何とかせよ』との仰せで」
…………蹴っ飛ばし + ほうきで棚のもの叩き落とすの決定。
本人もスキを突いて蹴っ飛ばしてやろ。
それはとにかく、モブ魔法士の私の目線で見てみる。
確かに武器には魔法がかけられてる。
でもそれが一定じゃない、というかよく見るとそれぞれ違う。
同じ形の大剣を扱っている騎士さん同士でも、違ってる。
それに、微かに聞こえる囁きのような音……
これって……
「精霊?」
まさかね?
「アン? なぜここに?」
呼ばれて振り向くと、予想通りボロボロのイスリオ。
イスリオの大剣も、他の騎士さんのとはまた違ってる。
団長として色々試したんだろなぁ。
ボロボロ具合が他の騎士さんたちより激しい。
それなのにキラキライケメンなのは、メインキャラの為せる技ね。
「シレル、アンは呼ばないようにと……」
お?
ご指名はシレル副団長の独断でしたか。
「しかし、団長。
我らも死力を尽くしておりますが、未だ武器の制御を行えたものはおりません。
このままでは来るべき魔王との戦いにおいても、どれほどのお役に立てるものか。
恥を忍び、たとえアン殿にみっともない姿をお見せしようとも、騎士の本分を全うせねばなりませんっ」
いえいえ。
なにおっしゃいますやら。
「人々を守るため、日々訓練に明け暮れていらっしゃる騎士様方を、敬いこそすれそのお姿をみっともないなどと思う訳はございません。
汗と土にまみれていらっしゃるお姿こそ、厳しい鍛錬の証でございましょう」
テキトーに過ごしている私のほうがいたたまれません。
「アン……」
「アン殿……」
なぜかイスリオも感激の面持ちで見てくる。
ついでに、声が聞こえて範囲の騎士さんたちも、手を止めて見てくるんですけどっ。
モブごときがっ、上から目線ですみませんっ。
ちょっとでも状況を挽回すべく、イスリオに剣を見せてもらう。
たしかに魔法なんで、『拡大』ができるはず。
なぁんか音、というか囁きが聞こえるような………って『拡大』しまくっていると、聞こえた。
『…………、……っ。…………』
とても口に出す気にはなれない言葉で、最上級に丁寧な言葉で要約すると、『早くイスリオの手にもどせ××ババア』と仰っている。
…………へし折ったろか。
「アン? どうかしたのか?」
剣を抱え込んでプルプルしたら、それは心配になるよね。
良からぬ病気ではございません、はい。
ただ感情の高ぶりがですね、
『…………っ』
うっさいわ、この精霊。
どうやらクリシャは、それぞれの武器に精霊を顕現させてみたい。
フツーに魔力込めれば済む話だったのに、無駄に物事を複雑化してるよ、古の大魔道士サマめ。
なんとなく対処法はわかったので、イスリオに大剣を返す。
「あのね、そうだなぁ、馬みたいに接してみて」
「馬?」
「そう」
なんか精霊が『馬ごときとっ』って気配を出してくるけど、だからうっさいって。
もう少し丁寧なお言葉をお使いくださいませ。
「騎士だったら、自分の乗馬は大事にするでしょう?
名前をつけて、世話を焼いて、話しかけて。
それをこの剣にもしてみて」
イスリオは不思議そうな顔で、自分の剣を見る。
それはそうだよね。
いきなり無機物に名前をつけろっていわれても。
「それは、大事な名前がいいのか?」
「そうだね、愛しめるのがいいかな」
「アン……はダメだろうな……血を浴びることもあるだろうし、万が一、折れでもしたら……」
はいはい。
ぶつぶついってないで、さっさと決めるっ。
「では、『リア』にする」
結構可愛い名前。
「いや……お前の名前は、アンジェリカだと知ったので……リカよりはリアの方が呼びやすいし……」
なにか呟いてるけど、別になんでもいいよ。
昔の恋人の名前でもなんでも。
精霊も文句はないみたいだし。
「次は、正しく扱ってあげることと、意志を伝えること。
口に出す必要はないから、心で思うだけでいいと思う。
でも、できるだけ具体的に」
馬だって、手綱とか鐙とかで意思を伝えている(って何かで読んだ気がする。馬、乗ったことないけど)ので、それを剣に伝えてあげたらいい。
「そうだね、例えばあれ」
私は少し離れたところにある、修練場の石積みを指した。
普段ならそれに藁や布を巻いて、槍を突く訓練をするためのものなんだけど、今は石だけになってる。
「あれを切るのをイメージして」
イスリオが剣を構える。
普通の剣なら届くわけもない距離。
だけど、この剣の精霊なら…………
イスリオが剣を振り下ろす。
ガゴッ
石積みに斜めに線が入り、滑るように上半分が地面の落ちた。
『おおっ』
モブと化してくださった騎士さん方から漏れる声。
「これは……」
自分の剣を見つめて驚くイスリオ。
それはそうだよね。
「どうやらクリシャ様がかけてくださった魔法は、それぞれの武器に宿っている精霊を顕現するもののようです。
精霊は気まぐれですから、名を与え、その存在を認め、意志を伝えることで初めてその持ち主の力になるのでしょう」
ここまで事前に説明しとかないと、使えるわけないじゃん。
クリシャ自体が使えないわ。
と、唐突にイスリオから抱きしめられた。
「ありがとう、アン。
これで進むべき方向が見えた」
イスリオもボロボロになるまでがんばってた……て、うわっ、体重かけすぎっ。
抱きしめられたままよっかかられて、ずりずりと腰から地面についてしまった。
「え? イスリオ?」
イスリオの顔を覗き込むと、え?、人を抱き込んだまま、寝てる?
見上げてシリル副団長さんに助けを求めると、イスリオを引きはがして、手を取って立たせてくれた。
「これは不調法なことを。
申し訳ございません、アン殿。
団長も諸事雑務を一手に引き受けられ、団員が修練するための時間を最大限確保するために動いていらっしゃいまして。
幾度となくお休みいただくよう進言したのですが聞き入れていただけず……
それがようやく付与いただいた魔法を生かせる道がわかり、安堵なさったのでしょう」
やっぱり、才能やキラキラだけでは重責はこなしきれない。
メインキャラたちも、キラキラの陰で、小説では書かれていないところで努力や苦労や苦悩をしてるんだろうなぁ。
モブには関わりなくて、申し訳ないけど。
その後、意識のないイスリオを騎士さん方がお風呂に入れてあげて宿舎の寝台に放り込んだ。
シレルさんの判断で、翌日は休養日。
私も、武器の手入れがおすすめ、と差し出口を入れたので、もしかしたら幾人かは手入れしてくれるかも。
物につく精霊は、やっぱりその物が大切に扱われると、機嫌がよくなるしね。
で、夢うつつのイスリオを宿舎の部屋に覗きに行ったら、寝台からにゅっ、って腕が出てきて、そのまま抱き枕にされました。
実は起きてるんじゃないのーーっ、って、厚い胸板に顔を押しつけられながらもごもごしてみたけど、本当に寝ぼけてるだけみたい。
なぜわかったのかというと、本気で目が覚めたイスリオが、『ずいぶんいい夢だと思ってたんだ』っていって、抱き着きなおしてきたから。
なんだか可愛くなって、胸に抱きしめて、よしよしと頭を撫でていたら、なんだか可愛くない動きを見せ始め……翌朝ツヤツヤに輝くイケメンメインキャラと、寝台から起き上がれないモブ。
なんか最近、どっかでもあった風景。
騎士さん方の宿舎なんで、身の回りをしてくれる女性はいない。
水とか食料とか持ってきてくれる騎士さんに対して、イスリオは一歩も部屋に入れないどころか、扉を完全に閉めた状態で廊下に置いておかせて、立ち去った後に物を部屋に入れる徹底ぶり。
そんなに秘密主義だと、団長としてみんなの信頼を得られないのでは?
いらぬモブの心配だけど。
そんなことやこんなことがあって、魔王討伐向けて浮ついた空気の王宮。
私もモブなりにその空気に乗って、役に立たずに王宮内をうろつきまわって、あちこちのお手伝いなんかしてた。
その日、用事がなんとか片付いたんで、自分の部屋の扉を開けた。
…………。
私の寝台の上に、なにか乗ってる。
一度扉を閉める。
周りを見回す。
ここは私の部屋。間違いない。
もう一度、扉を開ける。
やっぱり寝台の上に物、というか者が乗ってる。
しかもちょこん、とか人の部屋にお邪魔してます、って風情じゃなくて、完全にくつろぎぎってる。
「遅いではないか。
我を待たすとはいい度胸だの、アンよ」
一見美少年の、実は相当若作りが判明の大魔導士が、私の部屋の、私の、寝台の上にいる。
…………。
私はもう一度扉を閉めた。
…………今晩は、廊下で寝ようかな。
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