夜行列車の仕立て屋と、ほどける乗客
失職した仕立て屋リオが見つけたのは、夜行列車シエル号での十夜分の針仕事だった。
夜だけ現れる橋を渡れば、頭上に店が並ぶ逆さ市場も、硝子の木が鳴る森もある。乗客の姿はさまざま。最初の注文主ネイは、四本の腕を二本袖の礼服へ押し込んだ音楽家だった。
知らない体を測り、動くための服を縫う。そんな旅になるはずが、一人の乗客から「体だけ」が奪われる。窓は閉じている。服の内側には、誰かが丁寧にほどいた跡が残されていた。
名工の美しい衣装、無料の採寸札、盗まれた通行環。別々に見えた出来事がつながり、ネイにも危険が迫る。
鋏で切っていいものと、切ってはいけないもの。若い仕立て屋が乗員や乗客とともに、その境目を探す旅と救出のファンタジー。
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