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第三章 シエラの能力と呪い
13.シエラの強さ
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剣と斧がぶつかり合う金属音が響くたび、私はビクビクと肩を震わせた。
「なんだ、人間の小僧にしてはやけに強いな」
余裕だった食人鬼が焦っている様子で声を張り上げた。
シエラはいつもの気だるそうな雰囲気が嘘のように俊敏に動き、剣術の心得のない私でさえ息を吞むほど強そうなオーラを放っていた。
「なんて目つきだっ! 小僧、普通の人間ではないな。何者だ?」
動揺した食人鬼は一歩後ろに下がった。その隙をついて、シエラは相手の心臓に向けて短剣をぐさりと突き刺した。
「ぐぎゃあああっ!」
緑色の血を噴きながら、食人鬼は地面へ倒れた。シエラが短剣を抜くと、傷口からさらに緑のしぶきが上がった。
「噓みたい……」
誰も倒せなかった食人鬼をシエラが退治してしまうなんて。
シエラは剣についた血を振り払って鞘に仕舞い、こちらに向かって歩いてきて、
「アイネ、大丈夫?」
と手を差し出してくれた。
「すごいわ、シエラって強いのね」
シエラにしがみついて私は涙をこぼした。本当に怖かった。
シエラは何も言わず私の体を抱き寄せて、震える背中を撫でてくれた。
***
小屋に帰ってシエラは食人鬼の血のついた体や剣をきれいにし、夕食を食べ終えると、よほど疲れたのかだるそうにテーブルへ頬杖をついて、いつも以上にアンニュイな表情でぼーっとしていた。
私は食人鬼を倒した時の凛々しいシエラの姿を何度も思い出しては、密かに胸をドキドキさせていた。助けてくれたお礼に今夜はなんだってしてあげようと思っていた。
彼は夜な夜な「添い寝をしてほしい」「おやすみのキスがほしい」と私に要求する。
「添い寝」では私の体を抱きしめる彼の指が寝間着に入り込み乳房や秘部を弄び、「おやすみのキス」では舌を絡ませた甘く深いキスに発展する。
母なる愛情を求めている一方、女の子の体に興味津々の年頃の男の子なのだった。
しかしシエラは食後のミントティーを飲み終えるとすぐに、
「早いけどもう寝るね、おやすみ」
とダイニングを出て自分の部屋へ向かってしまった。
今日は魔女の彼女と散々イチャイチャしてきたのだから、私になんて興味がないのだろうか。
そもそも彼女がいるならなぜ私に触れるのだろう。私は母代わりなのだから普通に母親に対する甘え方だけすることだって出来るのに。
まさか、純情な私をからかって楽しんでいるのか。
そう思うと胸が痛んだが、私は彼を追いかけて閉まりかけたドアを開けて彼の部屋の中に入った。
ちゃんとお礼が言いたかったのだ。
「シエラ、あのね」
「なあに?」
本当にもう寝るつもりだったようで、彼はベッドに入っていた。
「今日は本当に助けてくれてありがとう。その、何かお礼を、と思ったんだけど……」
「気持ちだけで十分だよ。おやすみ」
彼の冷たい言い方に悲しくなったが、私は彼に違和感を抱いた。
夕食のときは気づかなかったが、ベッドのそばに置かれたろうそくの光でもわかるほど明らかに顔色がいつもと違う。
「ねえ、どうしたの、具合が悪いのかしら?」
何だか熱があるみたいで、顔が火照っているように見える。
「なんだ、人間の小僧にしてはやけに強いな」
余裕だった食人鬼が焦っている様子で声を張り上げた。
シエラはいつもの気だるそうな雰囲気が嘘のように俊敏に動き、剣術の心得のない私でさえ息を吞むほど強そうなオーラを放っていた。
「なんて目つきだっ! 小僧、普通の人間ではないな。何者だ?」
動揺した食人鬼は一歩後ろに下がった。その隙をついて、シエラは相手の心臓に向けて短剣をぐさりと突き刺した。
「ぐぎゃあああっ!」
緑色の血を噴きながら、食人鬼は地面へ倒れた。シエラが短剣を抜くと、傷口からさらに緑のしぶきが上がった。
「噓みたい……」
誰も倒せなかった食人鬼をシエラが退治してしまうなんて。
シエラは剣についた血を振り払って鞘に仕舞い、こちらに向かって歩いてきて、
「アイネ、大丈夫?」
と手を差し出してくれた。
「すごいわ、シエラって強いのね」
シエラにしがみついて私は涙をこぼした。本当に怖かった。
シエラは何も言わず私の体を抱き寄せて、震える背中を撫でてくれた。
***
小屋に帰ってシエラは食人鬼の血のついた体や剣をきれいにし、夕食を食べ終えると、よほど疲れたのかだるそうにテーブルへ頬杖をついて、いつも以上にアンニュイな表情でぼーっとしていた。
私は食人鬼を倒した時の凛々しいシエラの姿を何度も思い出しては、密かに胸をドキドキさせていた。助けてくれたお礼に今夜はなんだってしてあげようと思っていた。
彼は夜な夜な「添い寝をしてほしい」「おやすみのキスがほしい」と私に要求する。
「添い寝」では私の体を抱きしめる彼の指が寝間着に入り込み乳房や秘部を弄び、「おやすみのキス」では舌を絡ませた甘く深いキスに発展する。
母なる愛情を求めている一方、女の子の体に興味津々の年頃の男の子なのだった。
しかしシエラは食後のミントティーを飲み終えるとすぐに、
「早いけどもう寝るね、おやすみ」
とダイニングを出て自分の部屋へ向かってしまった。
今日は魔女の彼女と散々イチャイチャしてきたのだから、私になんて興味がないのだろうか。
そもそも彼女がいるならなぜ私に触れるのだろう。私は母代わりなのだから普通に母親に対する甘え方だけすることだって出来るのに。
まさか、純情な私をからかって楽しんでいるのか。
そう思うと胸が痛んだが、私は彼を追いかけて閉まりかけたドアを開けて彼の部屋の中に入った。
ちゃんとお礼が言いたかったのだ。
「シエラ、あのね」
「なあに?」
本当にもう寝るつもりだったようで、彼はベッドに入っていた。
「今日は本当に助けてくれてありがとう。その、何かお礼を、と思ったんだけど……」
「気持ちだけで十分だよ。おやすみ」
彼の冷たい言い方に悲しくなったが、私は彼に違和感を抱いた。
夕食のときは気づかなかったが、ベッドのそばに置かれたろうそくの光でもわかるほど明らかに顔色がいつもと違う。
「ねえ、どうしたの、具合が悪いのかしら?」
何だか熱があるみたいで、顔が火照っているように見える。
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