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第六章
127話
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『…まだだ…まだ………よし、今だ』
俺の合図で上昇すると、櫓の高さでピタッと止まったマリンから櫓へ飛び降りた俺は、眠たそうにしていた見張り役の男の背後に降り立った。
着地の際の物音を聞いた見張り役の男は後ろに振り向こうとしたが、それよりも刃先に俺の手が男の口を塞いだ。
「フガ!?!!」
いきなり口を塞がれて驚いた様子だったが、直ぐに襲撃されていると理解した男は腰にある剣に手を伸ばそうとする。
しかし、それより先に俺が手にしたサバイバルナイフが男の喉元を切り裂き、辺りに鮮血をまき散らした。
暫く暴れていた男は次第に動かなくなり、その人生に幕を閉じた。
その男と男の所持品をアイテムボックスに入れて辺りを見回すが、こちらに気が付いた様子はない。
潜入成功のようだ。
俺達は山頂部分にある櫓にいる。
時間は真夜中。たぶん2時か3時くらいの1番眠くなる時間帯。
ここを選んだ理由は1番警備が薄そうだったからだ。
何故かというと、この山頂の裏側、要塞(たぶん砦なんだけど、見た目要塞だからね)側と反対側は切り立った崖になっていた。
とてもではないが、通常はこの崖から人は登ってこれないだろう。
プロのクライマーでも厳しいんじゃないかと思えるほどだ。
そのせいか、山頂の櫓にいた見張りは崖側はほぼ見ておらず、山のふもと側にある要塞方向ばかり見ていた。
1番大きくがっしりとした建物も山頂近くにあり、崖側から攻められる可能性が低いと考えていると思える。
この建物の様子から、幹部連中などがいるんじゃないかと予想している。
そしてその建物から少し離れた壁の近くにあるのが、エルベルトが捕らわれている牢屋がある建物だ。
この他にも倉庫や厩舎なども確認でき、位置も把握している。
そして出入り口は麓の一カ所のみ。
どうしてわかったかというと、マリンの背に乗って上空から見たからだ。
マリンは空を飛べるのではなく浮くことができる。そして自由に歩くこともできるという、まさにファンタジー。
重力だとか、力学だとか全くの無視である。
まぁ、詳しく説明されても一般素人には理解できないのだが。
しかしそのお陰で要塞内の建物の位置関係は把握できたんだ、ありがたい。
侵入に成功した俺は、このままエルベルトの元に向かう。
この要塞の壊滅もしたいが、先ずは要人救出ミッションをコンプリートさせる。勿論子供も救出だ。
エルベルトと共にこの要塞を脱出後、シウテテまでエルベルトと子供達を連れて帰る。
その後にもう一度ここに戻ってきて、この要塞を木っ端微塵にしてやる。
子供を使って自爆テロをさせるような、生きる価値もない屑集団はこの世界にはいらない。
そう考えていると再び怒りが沸々と沸いてきた。
『マリン、侵入成功だ。こちらに気付いた様子はない。このまま当初の予定通りエルベルトが捕らわれている建物まで行く』
『わかりました。天気も味方してくれていますからね』
空には厚い雲が出てきて月を隠してくれている。
俺達が空から偵察しているときは月に少しくもがかかる程度だったが、今は完全に雲に隠れている状態だ。
それだけでなく、遠くで雷鳴がなっているのが聞こえる。
もしかすると雨が降る可能性もある。
月明かりが無い状態だと本当に真っ暗なので、暗視ゴーグルを装着して周りが見える用意している。
マリンはこの状態でも何ら問題なく周りが見えているらしい。
夜目が利くっていいよね。
さて、俺とマリンの会話だが、マリンは兎も角、俺も声を出さずに会話をしている。
これは、マリンを意識しながら頭の中で話しかける事で、その内容がマリンに伝わることをマリンに教えてもらったのだ。
これはマリンが俺に話しかける方法と同じらしく、主従関係になったことで可能になっているらしい。
これのお陰で音を発すことなく会話ができるという、隠密潜入には持って来いだ。
スニーキングのスペシャリスト、BIGボスも驚きだろう。
俺は再びマリンの背に乗り地上に降りると、危険察知の赤いシルエットに注意しながら進んで行く。
歩く音を極力抑えるためあまり速度を出せないが、確実に一歩ずつエルベルトの元に近付いていく。
幾つかの角を周りあと少しでエルベルトが捕らわれている建物に辿り着く所までやって来た。
『よし、ここを曲がって真っ直ぐ行けばエルベルトの所だ』
今の所気が付かれている気配はない。
深呼吸をして新鮮な空気をはいいっぱいに入れて吐き出し心を落ち着かせる。
辺りを見ると、今隠れている建物の反対側の道を歩いてくる者がいた。
タイミング的に今移動するとこいつらに見つかる可能性が高い。
少し考えた後、彼奴らをやり過ごすことに決めたその時、後ろを警戒していたマリンからこちらに向かって来ている奴らがいると伝えてきた。
マズいな。
このまま最初に確認した奴らが真っ直ぐに進んでくれるとしても、後ろから来ている奴らに見つかる。
もし真っ直ぐに行かず、こちらに来ると前後から挟まれる形になってしまうか……。
少し考えた後、このまま最短距離を行かずに迂回することにした。
『マリン、このままだと挟まれる可能性もあるから迂回するよ。このまま真っ直ぐに進んで次の角を曲がろう』
『はい、私もその方が良いと思います』
マリンの賛同も得られたところで辺りを確認し、角を曲がらず真っ直ぐに進む。
その先で元いた場所を見ていると、最初に確認した奴らが曲がり、俺達がいた方へと向かって行く。
ホッ。あのままいたら絶対に見つかっていたな。
迂回する方を選んで正解だったわ。
ひとまず危険を回避した俺はそのまま進み、次の角を曲がった。
そして目の前の建物が倉庫であることに気が付いた。
これは倉庫の裏側か。
ん?もしかしたら……。
俺は辺りをもう一度見回してからマリンに話しかけた。
『この中にはたぶんここの連中の物資が置かれている。あの窓から侵入して中にある物を根こそぎ奪ってくるよ。倉庫内の物資がゴッソリなくなったら連中大慌てだろうな』
『入口を警備している者にとってみたら、気が付かないうちに自分達が守っていたものがなくなっているなど、たまったものではないでしょう』
『だね。よし、あの窓まで頼むよ』
俺はマリンの背中に乗り、8m位の高さにある屋根付近の窓まで運んでもらう。
窓には木製の格子が取り付けられていたが、俺のサバイバルナイフで2本ほど切断。
ほんと俺のサバイバルナイフは異常に良く切れるわ。
とはいえ、布のを切るように短時間とは行かないまでも、それなりに短時間で切断できているのはチート様々だろう。
入口を確保すると、アイテムボックスから長縄を取り出し、片方をマリンに持っていてもらう。
『じゃあ、俺が下まで降りたら入ってきてね。外にいると見つかるかも知れないから』
『はい、わかりました』
縄を伝ってスルスルと降りる……ほども無く、2m程で物資の上に足が届いてしまった。
結構天井近くまでものを積み上げられていた。
俺が降下し終わったのでマリンも中に入ってきた。
『さてと、この中のものは全てもらっていこう。マリンは適当に休んでいてね』
マリンは首を縦に振りしたまで下りて行った。
それを確認して、俺は手当たり次第物資をアイテムボックスに入れていった。
木箱に入れられている物は中身の確認は後回しにした。
木箱意外には槍や弓、矢などが多く保管されていた。また保存の利く食料もここにあるようで、それも全ていただいた。
2分ほどで倉庫内全ての物資をアイテムボックスに入れ終わった。
小さくなっているマリンに再び長縄を持って天井付近にある窓から外に出てもらいう。
小さい体を大きくしてもらった後、そこから長縄を降ろしてもらい俺も脱出する。
これでよしと。いつこの倉庫の扉が開かれるのがいつか知らないけど、相当驚くだろうな。
ここの倉庫入口は2人が見張りをしているのがわかっている。
このまま倉庫横の道を行けば必ず見つかるので、もう一つ向こうの道から回ってエルベルトがいる建物まで行くことにする。
辺りの様子を窺いながら歩いていると、ポツリポツリと雨が落ちてきた。
やっぱり降り始めたか。
でも雨音で俺の足音も消えるからラッキーだな。
そんな事を考えつつ進むと、入口に3人、建物裏の角にそれぞれ2人の見張りがいる建物が見えてきた。
その建物こそが今回の目的地、エルベルトが捕らわれている牢屋なのだった。
俺の合図で上昇すると、櫓の高さでピタッと止まったマリンから櫓へ飛び降りた俺は、眠たそうにしていた見張り役の男の背後に降り立った。
着地の際の物音を聞いた見張り役の男は後ろに振り向こうとしたが、それよりも刃先に俺の手が男の口を塞いだ。
「フガ!?!!」
いきなり口を塞がれて驚いた様子だったが、直ぐに襲撃されていると理解した男は腰にある剣に手を伸ばそうとする。
しかし、それより先に俺が手にしたサバイバルナイフが男の喉元を切り裂き、辺りに鮮血をまき散らした。
暫く暴れていた男は次第に動かなくなり、その人生に幕を閉じた。
その男と男の所持品をアイテムボックスに入れて辺りを見回すが、こちらに気が付いた様子はない。
潜入成功のようだ。
俺達は山頂部分にある櫓にいる。
時間は真夜中。たぶん2時か3時くらいの1番眠くなる時間帯。
ここを選んだ理由は1番警備が薄そうだったからだ。
何故かというと、この山頂の裏側、要塞(たぶん砦なんだけど、見た目要塞だからね)側と反対側は切り立った崖になっていた。
とてもではないが、通常はこの崖から人は登ってこれないだろう。
プロのクライマーでも厳しいんじゃないかと思えるほどだ。
そのせいか、山頂の櫓にいた見張りは崖側はほぼ見ておらず、山のふもと側にある要塞方向ばかり見ていた。
1番大きくがっしりとした建物も山頂近くにあり、崖側から攻められる可能性が低いと考えていると思える。
この建物の様子から、幹部連中などがいるんじゃないかと予想している。
そしてその建物から少し離れた壁の近くにあるのが、エルベルトが捕らわれている牢屋がある建物だ。
この他にも倉庫や厩舎なども確認でき、位置も把握している。
そして出入り口は麓の一カ所のみ。
どうしてわかったかというと、マリンの背に乗って上空から見たからだ。
マリンは空を飛べるのではなく浮くことができる。そして自由に歩くこともできるという、まさにファンタジー。
重力だとか、力学だとか全くの無視である。
まぁ、詳しく説明されても一般素人には理解できないのだが。
しかしそのお陰で要塞内の建物の位置関係は把握できたんだ、ありがたい。
侵入に成功した俺は、このままエルベルトの元に向かう。
この要塞の壊滅もしたいが、先ずは要人救出ミッションをコンプリートさせる。勿論子供も救出だ。
エルベルトと共にこの要塞を脱出後、シウテテまでエルベルトと子供達を連れて帰る。
その後にもう一度ここに戻ってきて、この要塞を木っ端微塵にしてやる。
子供を使って自爆テロをさせるような、生きる価値もない屑集団はこの世界にはいらない。
そう考えていると再び怒りが沸々と沸いてきた。
『マリン、侵入成功だ。こちらに気付いた様子はない。このまま当初の予定通りエルベルトが捕らわれている建物まで行く』
『わかりました。天気も味方してくれていますからね』
空には厚い雲が出てきて月を隠してくれている。
俺達が空から偵察しているときは月に少しくもがかかる程度だったが、今は完全に雲に隠れている状態だ。
それだけでなく、遠くで雷鳴がなっているのが聞こえる。
もしかすると雨が降る可能性もある。
月明かりが無い状態だと本当に真っ暗なので、暗視ゴーグルを装着して周りが見える用意している。
マリンはこの状態でも何ら問題なく周りが見えているらしい。
夜目が利くっていいよね。
さて、俺とマリンの会話だが、マリンは兎も角、俺も声を出さずに会話をしている。
これは、マリンを意識しながら頭の中で話しかける事で、その内容がマリンに伝わることをマリンに教えてもらったのだ。
これはマリンが俺に話しかける方法と同じらしく、主従関係になったことで可能になっているらしい。
これのお陰で音を発すことなく会話ができるという、隠密潜入には持って来いだ。
スニーキングのスペシャリスト、BIGボスも驚きだろう。
俺は再びマリンの背に乗り地上に降りると、危険察知の赤いシルエットに注意しながら進んで行く。
歩く音を極力抑えるためあまり速度を出せないが、確実に一歩ずつエルベルトの元に近付いていく。
幾つかの角を周りあと少しでエルベルトが捕らわれている建物に辿り着く所までやって来た。
『よし、ここを曲がって真っ直ぐ行けばエルベルトの所だ』
今の所気が付かれている気配はない。
深呼吸をして新鮮な空気をはいいっぱいに入れて吐き出し心を落ち着かせる。
辺りを見ると、今隠れている建物の反対側の道を歩いてくる者がいた。
タイミング的に今移動するとこいつらに見つかる可能性が高い。
少し考えた後、彼奴らをやり過ごすことに決めたその時、後ろを警戒していたマリンからこちらに向かって来ている奴らがいると伝えてきた。
マズいな。
このまま最初に確認した奴らが真っ直ぐに進んでくれるとしても、後ろから来ている奴らに見つかる。
もし真っ直ぐに行かず、こちらに来ると前後から挟まれる形になってしまうか……。
少し考えた後、このまま最短距離を行かずに迂回することにした。
『マリン、このままだと挟まれる可能性もあるから迂回するよ。このまま真っ直ぐに進んで次の角を曲がろう』
『はい、私もその方が良いと思います』
マリンの賛同も得られたところで辺りを確認し、角を曲がらず真っ直ぐに進む。
その先で元いた場所を見ていると、最初に確認した奴らが曲がり、俺達がいた方へと向かって行く。
ホッ。あのままいたら絶対に見つかっていたな。
迂回する方を選んで正解だったわ。
ひとまず危険を回避した俺はそのまま進み、次の角を曲がった。
そして目の前の建物が倉庫であることに気が付いた。
これは倉庫の裏側か。
ん?もしかしたら……。
俺は辺りをもう一度見回してからマリンに話しかけた。
『この中にはたぶんここの連中の物資が置かれている。あの窓から侵入して中にある物を根こそぎ奪ってくるよ。倉庫内の物資がゴッソリなくなったら連中大慌てだろうな』
『入口を警備している者にとってみたら、気が付かないうちに自分達が守っていたものがなくなっているなど、たまったものではないでしょう』
『だね。よし、あの窓まで頼むよ』
俺はマリンの背中に乗り、8m位の高さにある屋根付近の窓まで運んでもらう。
窓には木製の格子が取り付けられていたが、俺のサバイバルナイフで2本ほど切断。
ほんと俺のサバイバルナイフは異常に良く切れるわ。
とはいえ、布のを切るように短時間とは行かないまでも、それなりに短時間で切断できているのはチート様々だろう。
入口を確保すると、アイテムボックスから長縄を取り出し、片方をマリンに持っていてもらう。
『じゃあ、俺が下まで降りたら入ってきてね。外にいると見つかるかも知れないから』
『はい、わかりました』
縄を伝ってスルスルと降りる……ほども無く、2m程で物資の上に足が届いてしまった。
結構天井近くまでものを積み上げられていた。
俺が降下し終わったのでマリンも中に入ってきた。
『さてと、この中のものは全てもらっていこう。マリンは適当に休んでいてね』
マリンは首を縦に振りしたまで下りて行った。
それを確認して、俺は手当たり次第物資をアイテムボックスに入れていった。
木箱に入れられている物は中身の確認は後回しにした。
木箱意外には槍や弓、矢などが多く保管されていた。また保存の利く食料もここにあるようで、それも全ていただいた。
2分ほどで倉庫内全ての物資をアイテムボックスに入れ終わった。
小さくなっているマリンに再び長縄を持って天井付近にある窓から外に出てもらいう。
小さい体を大きくしてもらった後、そこから長縄を降ろしてもらい俺も脱出する。
これでよしと。いつこの倉庫の扉が開かれるのがいつか知らないけど、相当驚くだろうな。
ここの倉庫入口は2人が見張りをしているのがわかっている。
このまま倉庫横の道を行けば必ず見つかるので、もう一つ向こうの道から回ってエルベルトがいる建物まで行くことにする。
辺りの様子を窺いながら歩いていると、ポツリポツリと雨が落ちてきた。
やっぱり降り始めたか。
でも雨音で俺の足音も消えるからラッキーだな。
そんな事を考えつつ進むと、入口に3人、建物裏の角にそれぞれ2人の見張りがいる建物が見えてきた。
その建物こそが今回の目的地、エルベルトが捕らわれている牢屋なのだった。
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