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1章【そんなに強引にしないで】

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 今まで体験したことがない、圧迫感。
 後孔に突き挿れられる異物感に、カナタは息を呑んだ。


『い、やだ……っ! くる、し……っ』


 涙をボロボロと溢れさせるカナタを見て、ツカサは切なそうに眉を八の字にする。


『お腹、苦しい? 痛くはない?』


 ──どうして、ツカサは狂人なのか。

 歪んだ優しさを向けられたカナタは、涙を流したまま首を横に振る。


『痛くは、ない、です……けど、っ』
『良かった。……じゃあ、ゆっくりシようね? 徐々に慣れると思うから、ちょっとだけ我慢して?』


 言葉通り、ツカサはゆっくりと腰を落としていく。

 異物によって内側が押し広げられていく感覚は、未知のもの。

 ──嫌だ、怖い、と。

 ──やめてほしいと思っても、口にはできない。

 カナタはシーツを握り締めて、耐えるように息を止めた。
 けれど、カナタの姿勢にツカサは目敏く気付く。


『カナちゃん、息を止めちゃダメ。唇も、噛んじゃダメだよ』


 そう言い、ツカサは自分の指をカナタの口へ差し込んだ。


『俺の指なら噛んでいいから、ね?』


 その声も、手つきも、眼差しも……。
 先ほど脅してきた男とは、まるで別人。

 色々なことが、あまりにも唐突に舞い込んだ。平凡なカナタの頭では、処理しきれないほどに。
 カナタはゆっくりと、考えることを放棄していく。

 言われるがまま、カナタは呼吸をした。
 強い違和感を与えられると、素直にツカサの指を噛んだ。


『ふぁ、ぁ……ぃ、う……っ』
『ん……っ。奥まで入ったよ、カナちゃん。……カナちゃんのナカ、凄く気持ちいい……っ』


 指を引き抜き、ツカサは両腕でカナタの体を抱き締めた。


『可愛いよ、カナちゃん。カナちゃんが世界で一番可愛い……。カナちゃんが可愛すぎて、俺、どうにかなっちゃいそう……っ』


 思考放棄をしたカナタは、与えられる言葉だけを受け止める。

 ──可愛い。

 そう言われると、カナタは全てどうでもよく思えてきた。


『動くね、カナちゃん。……一緒に、気持ち良くなろう? 俺、カナちゃんのこと気持ち良くできるように頑張るから』
『ん、ふぁ……っ』


 ゆっくりと、内側を擦られる感覚。

 カナタの体を気遣ってか、初めのうちは優しい腰遣い。
 けれど、カナタの声が甘い色を含み始めると……その動きは、次第に激しさを増していく。


『やだ、やっ、あっ! 奥、そんなに……いっぱい、突かないでぇ……ん、ぁあ、っ!』
『お尻きゅんきゅんさせて、カナちゃんホンット可愛い……っ! カナちゃん、俺のこと好き? 俺のこと、彼氏って思ってくれている?』


 確かにカナタは、ツカサに対して胸を高鳴らせた。
 けれどそれは、決して好意ではない。

 今すぐどちらかに分類するのならば、カナタにとってツカサはきっと、ツカサが望まない返答の側に分けられる。

 ──だが、素直にそう答えたとしたら?


『答えて、カナちゃん。カナちゃんのその可愛い声で、俺のことをどう思っているか、正直に教えて?』


 ツカサの意にそぐわない答えを、カナタが紡いだとしたら、きっと。

 ──頬に添えられたツカサの手は、すぐさまカナタの首に添えられるのだろう。


『す、好き、です……っ。ツカサさんのこと、ちゃんと……彼氏だって、思っています……っ。だから、酷いことしないで、ください……っ』


 これが、最良の言葉。
 たとえそれこそが、嘘の言葉なのだとしても。

 こう答えることが、正しいことなのだと。
 そう思い込むことしか、カナタにはできなかった。




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