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12.智紀、ピー太に呼ばれる

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 部屋に戻ったら、何故か窓の外にピー太がいた。
 自分の家に帰ったんじゃなかったのか?

「村西、ごめん。窓開けていいか?」
「断らなくていいよ」

 村西は苦笑した。でもこういうのって断らないといけないと思うんだよな。俺一人の部屋じゃないしさ。
 それに村西は鳥が苦手っぽいし。
 窓を開けるとピー太が窓枠に留まった。

「ピータ、トモーノリー」
「うんうん、どうした?」

 とりあえず制服から部屋着に着替えた。ここは二階だし東側は林だか森だから誰も見る人はいない。つーか俺の裸なんか見ても誰も興奮しないだろう。興奮されても困る。
 ピー太はコキャッと首を傾げると、林の方へ飛んで行った。そしてまた戻ってきた。

「なんだ?」

 またバサバサと林の方へ飛んで行き、一度木に止まってから戻ってくる。
 この行動の意味はなんだろう。

「ピータ、トモーノリー」
「うん」

 ピータはまた首をコキャッと傾げた。その首が元に戻らない。

「……コッチー」
「ああ……」

 以前覚えた言葉を思い出したらしい。

「トモーノリー、コッチー」

 ピー太はそう言うとまた林へバサバサと飛んで行き、一度木に止まってから戻ってきた。体力あるなぁ。
 じゃなくて。

「大林、多分林の方へ来いって言ってるんじゃないか?」

 村西がピー太の意図に気づいてくれたらしい。

「あ、そっか」

 俺はどうも察しが悪いみたいだ。

「ピー太、もしかして……林の中を案内してくれるのか?」

 ピーッ! とピー太が鳴く。当たりみたいだ。特に用事もないので付いていきたいのはやまやまだが、確か林の中へは一人で入っちゃいけないことになっている。

「誰か一緒に行ってくれる奴がいればいいんだけどな。村西、これからなんか予定ある?」

 とりあえず聞いてみる。村西は苦笑した。

「いいよ。付き合うよ」
「やった! ありがとー。あ、そうだ、稲村も誘っていい?」
「いいよ」
「ピー太、寮の玄関の方に先に行っててくれ。俺たちいくらなんでもここからは行けないから」

 二階から飛び降りて行けないことはないだろうが、怪我をしそうで嫌だ。
 ピー太はわかったと言うようにピーと鳴き、窓から出て行った。窓を閉めてパーカーを羽織り、村西と部屋を出た。稲村の部屋は二階の一番西側の部屋である。わかりやすくていい。
 誘ったら「行く行くー!」と面白がって出てきてくれた。
 で、階段を下りてから寮監がいる入口の受付に顔を出した。出かける時は一応伝えないといけないんである。

「嵐山さん、ちょっと出てきます」
「んー? 行先は? ざっくりでいいけど」
「東の林に行ってきます。ピー太がなんか来てほしそうなんで」
「えっ? じゃあ僕も行くよ!」
「ええ?」

 ってことで何故か嵐山さんも一緒に行くことになってしまった。嵐山さんも受付を無人にするわけにはいかないということで、「ちょっと待ってて!」とどこかへ電話をかけた。ピー太を待たせてしまうのも悪いので一旦寮の表へ出ると、ピー太が飛んできて俺の頭に乗った。留まりやすいのはわかるけど頭の上とかホント勘弁してほしい。
 爪が食い込んで痛いんだっての。

「ピー太、嵐山さんも一緒に行くことになったから、ちょっと待ってもらえるか?」

 腕に移ってもらって聞くと、ピー太はコキャッと首を傾げた。

「もう少し待ってくれ」

 ピー、とピー太は鳴き、早く行こうとばかりに林の方へ飛んだ。

「待って!」

 ピーッ! と呼ばれる。俺は首を振った。

「言葉がわかってそうでわかってないのか?」
「わかってても聞けない場合もあるんじゃないかな~」

 村西と稲村がのん気に何か言っている。またピー太が飛んできて俺の頭に留まる。それらの行動を何度かくり返してからやっと嵐山さんが出てきた。

「ごめんごめん、遅くなった。三年の生徒に受付は頼んだから行こう」
「はーい」

 ピー太はやっと来たとばかりに軽く嵐山さんをつついた。なんだよ、わかってるんじゃないかよ。

「ピー太君、ごめんよ~」

 嵐山さんが笑っている。
 ピー太が林の方へ飛ぶのをみんなで追っていく。ピー太は目の届くところで待っていてくれた。
 林に入ってから十分程歩いただろうか。ピー太はある木の枝に留まった。俺たちがその木の下に着くと、トトトトッと木を少し上った。

「あっ、巣かな?」
「僕が作った鳥小屋だよ」

 嵐山さんが得意そうに答えた。林の中はけっこう涼しい。
 ピー太は小屋に入ると顔を出し、ピーと鳴いた。
 どうやら巣を見せてくれたらしい。かわいいところもあるじゃないかと思った。
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