【完結】三年間あなたの領地を切り盛りしてまいりましたが、離縁いたします。帳簿も契約書もすべて私の名で結んでおりますので、どうぞご自由に
婚礼の夜、夫は寝室に来なかった。三年、一度も。代わりに来たのは書類の束だった。
伯爵家に嫁いで三年。私は帳簿を締め、領民の訴えを聞き、商人と話をつけた。夫は舞踏会で笑い、私の仕事を自分の手柄として語った。
「君との結婚は、家同士の義務だったんだ」
幼馴染の令嬢を後妻に迎えるつもりらしい。分かりました。離縁いたします。
ただ、ひとつだけ確認していただきたいものがあります。この三年で交わした契約書、二百八十七通。羊毛の買い付けも、石工の手配も、橋の普請も、署名はすべて私の名です。あなたは一度も目を通さず、面倒くさそうに私へ押しつけてこられました。
契約は、人に付きます。家にではなく。
夏が来て、伯爵領に商人が来ない。
私は隣の辺境伯領で、同じ仕事をしています。ここの領主は、差し出した書類を最後まで読んだ。読んでから、こう言った。
「あなたの名で結んでください。私の名ではなく」
※毎日19時に2話ずつ更新します。
伯爵家に嫁いで三年。私は帳簿を締め、領民の訴えを聞き、商人と話をつけた。夫は舞踏会で笑い、私の仕事を自分の手柄として語った。
「君との結婚は、家同士の義務だったんだ」
幼馴染の令嬢を後妻に迎えるつもりらしい。分かりました。離縁いたします。
ただ、ひとつだけ確認していただきたいものがあります。この三年で交わした契約書、二百八十七通。羊毛の買い付けも、石工の手配も、橋の普請も、署名はすべて私の名です。あなたは一度も目を通さず、面倒くさそうに私へ押しつけてこられました。
契約は、人に付きます。家にではなく。
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※毎日19時に2話ずつ更新します。
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