ななせ ふう

ななせ ふう

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恋愛 連載中 長編
「お姉様のお名前なんて、書き写せばよろしいでしょう?」 妹がわたくしの婚約と、金庫の鍵を持っていったとき、父は譲渡の書面にご署名なさり、母は妹の髪を撫でておりました。この十年、この家でわたくしの名を呼んだ人はおりません。「お前は強い子だから」と、それだけは何度も言われましたけれど。 ですから、惜しくはございません。屋敷も、婚約も、家督も、すべて差し上げます。 ただひとつだけ、お渡しできないものがございます。 ——信用でございます。 十七の年から、仕入れの支払いはすべてわたくしが立ててまいりました。春の麦も、夏の鉄も、冬の炭も。商会が三月お代を待ってくださるのは、コルビエ伯爵家に対してではなく、わたくしの署名に対してでございます。 譲れと仰るなら、いくらでもお譲りいたしますわ。 けれど信用は、こちらから差し上げるものではございません。向こう様がお決めになるものでございますから。 来月の仕入れから、現金でお支払いくださいませ。 ※初日以降は毎日12時・22時に更新します。
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小説 403 位 / 233,094件 恋愛 224 位 / 67,260件
文字数 81,709 最終更新日 2026.10.01 登録日 2026.09.14
恋愛 連載中 短編
「辺境の娘は要らない。王太子妃に迎える時代は、もう終わった」 夜会の広間で、殿下はそう仰いました。お隣には、王都育ちの侯爵令嬢。 ええ、承りました。引き留めるつもりも、昔の盟約を持ち出すつもりもございません。私は夜明けに、辺境へ帰ります。 ただ、殿下はご存じないのでしょう。国境の向こうの辺境伯家から、この二十年、毎年同じ縁談が届いていたことを。 父がそれを封も切らずに返し続けてきたのは、辺境伯家の娘は王家に嫁ぐという、古い盟約があったからです。 その婚約をお返しになったのは、殿下のほうでございます。 今年の縁談の封を、父は初めて切りました。 国境の両側がひとつの縁で結ばれる日を、殿下は王都でお聞きになるのでしょう。 ※前作の反省を踏まえ、殿下の視点・クラーラの視点のお話も入れました。 ※物語を全面的に書き直しています。第2話以降はいったん非公開にし、書き直しが整い次第、その翌日の10時から順に公開いたします。
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小説 46 位 / 233,094件 恋愛 32 位 / 67,260件
文字数 2,150 最終更新日 2026.09.28 登録日 2026.09.28
恋愛 完結 長編
「王命のお相手を、彼女に替えていただけるよう陛下にお願いする」 幼なじみの手を取ったまま、婚約者はそう仰いました。父は「王命だ、我慢しろ」とだけ言い、母は目を伏せました。 ええ、構いません。泣いてすがるつもりも、陛下に申し上げることもございません。 ただ、あの勅書は、読めば分かるように書かれております。 婚約を命じられたのは、侯爵家と伯爵家ではございません。「侯爵家の嫡男」と——私の名です。 名で下された王命は、陛下にしか書き換えられません。そして陛下は、一度下した命を書き換えないお方です。 替えられるのは、私のほうではございませんでした。 今さら勅書を読み返しても、もう遅いのです。
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小説 67 位 / 233,094件 恋愛 46 位 / 67,260件
文字数 84,445 最終更新日 2026.09.27 登録日 2026.09.21
恋愛 完結 長編
私は三年間、あの方の半歩後ろに立ってきた。 あの方は、人の言葉を書いてあるとおりにしか受け取れない。だから私は扇の陰で一言だけ添える。その侯爵は本気で怒っている、そちらの夫人は同意していない、いま笑ってはいけない。三年、一度も外さなかった。誰も気づいていない。あの方自身も。 その方が、大広間で私を呼び出した。証人も証拠も揃っている。 「申し開きはあるか」 ございません。わたくしは何も申し上げません。 否認も弁明もせず、私は黙って立っていた。だからあの方は、生まれて初めて自分で場を読むことになった。 味方として名を挙げた侯爵の顔が、なぜ動かないのか。証人の声が、なぜ途中で細くなったのか。「皆もそう思うであろう」と広間に向けた同意の求めに、なぜ誰も応えないのか。 わたくしはもう、お教えいたしません。 ※初日以降は毎日12時・22時に更新します。
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文字数 83,402 最終更新日 2026.09.20 登録日 2026.09.03
恋愛 完結 長編
婚礼の夜、夫は寝室に来なかった。三年、一度も。代わりに来たのは書類の束だった。 伯爵家に嫁いで三年。私は帳簿を締め、領民の訴えを聞き、商人と話をつけた。夫は舞踏会で笑い、私の仕事を自分の手柄として語った。 「君との結婚は、家同士の義務だったんだ」 幼馴染の令嬢を後妻に迎えるつもりらしい。分かりました。離縁いたします。 ただ、ひとつだけ確認していただきたいものがあります。この三年で交わした契約書、二百八十七通。羊毛の買い付けも、石工の手配も、橋の普請も、署名はすべて私の名です。あなたは一度も目を通さず、面倒くさそうに私へ押しつけてこられました。 契約は、人に付きます。家にではなく。 夏が来て、伯爵領に商人が来ない。 私は隣の辺境伯領で、同じ仕事をしています。ここの領主は、差し出した書類を最後まで読んだ。読んでから、こう言った。 「あなたの名で結んでください。私の名ではなく」 ※毎日19時に2話ずつ更新します。
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小説 753 位 / 233,094件 恋愛 410 位 / 67,260件
文字数 80,843 最終更新日 2026.09.02 登録日 2026.08.17
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