49 / 128
洗脳
すっぽんは凄かった
しおりを挟む
「凄い騒ぎだったね」
「暴動でも起きたのかと思いました」
「最悪だよ」
昨日は疲れ果てて眠り、朝気持ち良く仕事に出た俺だが、今日も朝から問題は山積みで日中は走り回っていた。ようやく夜になって仕事が終わり、バーで3人に今日のことを報告する。もちろん勇者絡みだ。
「昨日マスターも言ってただろ?勇者がなにかコソコソ調べてるって」
「ええ、他人の家の中に無断で入る所を見たという者も」
「それだよ。昨日あたりを付けて、今日は家主がいる昼間にどうどうと家に入って、家財やなんかをひっくり返して捜索して回ったらしい」
「は?」
「なんやのそれ」
「器物破損、窃盗。止めようとした民の中には、怪我をした者までいる」
「嘘でしょ?あいつ関係無い街でもそこまでしたの!?もう勇者なんかって言ってる場合じゃないよ!とっ捕まえよう!」
「と、俺もそう思った。街の衛兵もそう判断し、勇者と知ってはいたが拘束しようとした」
「まさか、あの騒ぎは」
「そうだよ。街中で衛兵を相手にあいつが暴れ回ったんだ」
「被害は?」
「衛兵はほぼ全滅。死んではいないが重症だ。それに屋台や牛舎、外壁、街の至る所が破壊された。あいつの戦闘によって」
「あいつはどこ?」
「行くなよ、アルフィ。今は無人になった何処かの家に潜伏してるんだろう。街の人間には極力家から出るなと言って回った」
「それは聞こえてました」
「ほんまに酷いな。おばちゃんが一回しばいたろか?」
「本当にそうして貰いたい気分だけど、もう一度だけ、俺にチャンスをくれないか」
「まだ話し合いを続けるの?」
「せめてあいつがなんでそんなことをしたのか知りたい。アルフィを探すなら俺を攻撃した方が早いんだし、街の人間を襲う理由がわからない。もしも意味無く民を傷付けたのなら、この件が終わった後にこの土地を預かる貴族として、国王に正式に苦情と共に勇者への相応の罰を進言する」
「あいつにまともな思考なんてないよ。それよりこれ以上は街の人達も危険だ」
「わかってる。危なくないように、街の人間を先に隣街へ避難させよう。マスターは避難訓練通り民を先導してくれ」
「了解しました」
「なんも出来へんのは辛いなぁ」
「すまんオカン。その代わり夜の方ではしっかり役に立ってる!」
「それは職人冥利に尽きる言葉やなぁ」
「とりあえず今日はシャルル様にご馳走を!いっぱい食べて精を付けて貰わないと!」
「そうだな、今日の夜もまた魔道具で楽しむわけだし」
「おばちゃんの力作が今晩もまた火吹くで」
「そんなわけでマスター!すっぽん鍋を!」
「夜もばっちり特性すっぽん鍋でございます」
「おお」
「見てるだけでドキドキしてきた」
「こりゃ凄いなぁ」
結果的にすっぽんは凄かった。今すぐしたくなる程度には効果抜群だ。ムラムラドキドキする俺は、気持ちを切り替えて作戦のために一度屋敷へ戻る。
まだ日が落ちたばかりで街の人間は起きているだろう。不安で家に篭っているであろう民に対して、俺は屋敷の煙突から避難指示を示す赤い狼煙を上げる。夜でも見易いように工夫しているし、民は全員何度もこれを見ているので見過ごすことはない。家の角度的に見えない人間も居るので、このまま街を移動してもう3箇所でも狼煙を上げる。これで全員避難の準備をして、朝日が昇る前に隣街へと避難するはずだ。
「暴動でも起きたのかと思いました」
「最悪だよ」
昨日は疲れ果てて眠り、朝気持ち良く仕事に出た俺だが、今日も朝から問題は山積みで日中は走り回っていた。ようやく夜になって仕事が終わり、バーで3人に今日のことを報告する。もちろん勇者絡みだ。
「昨日マスターも言ってただろ?勇者がなにかコソコソ調べてるって」
「ええ、他人の家の中に無断で入る所を見たという者も」
「それだよ。昨日あたりを付けて、今日は家主がいる昼間にどうどうと家に入って、家財やなんかをひっくり返して捜索して回ったらしい」
「は?」
「なんやのそれ」
「器物破損、窃盗。止めようとした民の中には、怪我をした者までいる」
「嘘でしょ?あいつ関係無い街でもそこまでしたの!?もう勇者なんかって言ってる場合じゃないよ!とっ捕まえよう!」
「と、俺もそう思った。街の衛兵もそう判断し、勇者と知ってはいたが拘束しようとした」
「まさか、あの騒ぎは」
「そうだよ。街中で衛兵を相手にあいつが暴れ回ったんだ」
「被害は?」
「衛兵はほぼ全滅。死んではいないが重症だ。それに屋台や牛舎、外壁、街の至る所が破壊された。あいつの戦闘によって」
「あいつはどこ?」
「行くなよ、アルフィ。今は無人になった何処かの家に潜伏してるんだろう。街の人間には極力家から出るなと言って回った」
「それは聞こえてました」
「ほんまに酷いな。おばちゃんが一回しばいたろか?」
「本当にそうして貰いたい気分だけど、もう一度だけ、俺にチャンスをくれないか」
「まだ話し合いを続けるの?」
「せめてあいつがなんでそんなことをしたのか知りたい。アルフィを探すなら俺を攻撃した方が早いんだし、街の人間を襲う理由がわからない。もしも意味無く民を傷付けたのなら、この件が終わった後にこの土地を預かる貴族として、国王に正式に苦情と共に勇者への相応の罰を進言する」
「あいつにまともな思考なんてないよ。それよりこれ以上は街の人達も危険だ」
「わかってる。危なくないように、街の人間を先に隣街へ避難させよう。マスターは避難訓練通り民を先導してくれ」
「了解しました」
「なんも出来へんのは辛いなぁ」
「すまんオカン。その代わり夜の方ではしっかり役に立ってる!」
「それは職人冥利に尽きる言葉やなぁ」
「とりあえず今日はシャルル様にご馳走を!いっぱい食べて精を付けて貰わないと!」
「そうだな、今日の夜もまた魔道具で楽しむわけだし」
「おばちゃんの力作が今晩もまた火吹くで」
「そんなわけでマスター!すっぽん鍋を!」
「夜もばっちり特性すっぽん鍋でございます」
「おお」
「見てるだけでドキドキしてきた」
「こりゃ凄いなぁ」
結果的にすっぽんは凄かった。今すぐしたくなる程度には効果抜群だ。ムラムラドキドキする俺は、気持ちを切り替えて作戦のために一度屋敷へ戻る。
まだ日が落ちたばかりで街の人間は起きているだろう。不安で家に篭っているであろう民に対して、俺は屋敷の煙突から避難指示を示す赤い狼煙を上げる。夜でも見易いように工夫しているし、民は全員何度もこれを見ているので見過ごすことはない。家の角度的に見えない人間も居るので、このまま街を移動してもう3箇所でも狼煙を上げる。これで全員避難の準備をして、朝日が昇る前に隣街へと避難するはずだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる