忌引きの透子

17歳の天峰透子は、明るくて、友達思いで、誰からも好かれる“普通の女子高生”だった。
家では、少し不器用だが優しい父と、穏やかな母の三人暮らし。
家族写真の笑顔も、家族団欒の時間も、すべてが“失われる未来などない”と信じられる日常だった。

──父が 強盗殺人・放火 の容疑で逮捕されるまでは。

一夜にして家族は崩壊し、母は精神を壊し、親族は手のひらを返し、父の会社からは「厄介者」として排除され、
学校では透子に向けられる視線が急激に冷えていく。

そして父は、あまりにも早く死刑が執行された。

忌引きで学校を休んだその夜、透子は夢の中で父に出会う。

「透子……父さんは、やっていない。どうか、信じてくれ。」



その声は優しく、確かに聞こえた。
だがその姿は──逮捕前の父よりも、ずっと若い姿をしていた。

父は冤罪なのか?
それとも、透子の願望が生んだ幻想なのか?

父を見捨てた親族から、ひとり、またひとりと“事故死”や“自殺”が連続する。
透子は毎回、当然のように 忌引き を取り、
目を赤くして教室へ戻る。

しかし屈託の無いその笑顔の奥に、クラスメイトは言い知れぬ違和感を見るようになる。

一方、父の会社関係者の不可解な事故、親族の不審死、刑事・橘は透子の“完璧すぎるアリバイ”に疑念を抱く。

透子は気づかれないように笑い、誰からも疑われないように悲しみ、そして何もかも計算しながら人を消していく。

冤罪の真相は曖昧なまま、透子の人格は静かに“父の影”と溶け合い、気づけば日常のすべてが透子の心情のままに動いていく。


──全ては父親の刑死による忌引きから始まった。透子にとっての“忌引き”とは。
それはこれから始まる“長い長い犯罪史”の第一章にすぎなかった。
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