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ヒロイン視点〜王子にストーカーされてます〜
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男爵令嬢のリリィ・バーロットである私はうんざりしていた。
入学の日。門でぶつかったのは、やはりゲームのキャラの王子で。家に帰って鏡をよく見れば、私はヒロインで。
その時の絶望は表現のしようがない。
「私が? 王子たちを攻略? 無理、むり、ムリ、無理! 私は地道に目立たず平凡に生きる。いや、生きないといけないのに」
そもそも私は…………あれ? あのゲーム、こんな設定だった? いや、いや。あれは乙女ゲーム。こんな設定ありえない。
なら、ここはゲームの世界ではない? いや、あの場面とこの顔が揃っていてゲームとまったくの無関係、というのはないだろう。
「似た世界なのか……とにかく、王子たちには関わらないようにしよう」
その日から私は人と関わることを少なくした。それなのに――――――――
勉強をするために図書館へ行けば、キラキラ金髪王子。ご飯を食べるために食堂へ行けば、キラキラ金髪王子。人が少ない裏庭へ行けば、キラキラ金髪王子。
始めは、すごく偶然が重なるな、と思っていた。でも、途中で気がついた。
これ、ストーカーだ!
私が動けば、教室内の誰かがさりげなく出ていって報告に行っている。中庭を歩けば、校舎の屋上から視線。
その後で現れるのは、キラキラ金髪王子。
このことに気づいた時、私は寒気を通り越して気絶しかけた。
相手は王太子。国家権力者。周囲は貴族でその味方。
私は完全に孤立無援。誰にも相談できない。もちろん、両親にも。いや、両親にこそ相談できない。もの凄く心配させてしまう。
私は気合いを入れるため、袖で顔をこすった。
今は勉強に集中。あと半年もすれば、あのキラキラ金髪王子は卒業する。そうすれば、邪魔する人はいなくなる……
「あら、あら。淑女が袖で顔を拭くなど、もってのほか。これをお使いなさい」
目の前に差し出されたレースのハンカチ。顔をあげると見たことがある人が。
人の顔を覚えるのが苦手な私が覚えている、数少ない人の一人。
公爵令嬢のローズなんとか。前世の妹が悪役令嬢がなんとか、処刑される運命がなんとか、と言っていた。
ゲームに興味がなくて真剣に聞いていなかったため、記憶はウロ覚え。もう少しちゃんと聞いていれば良かった。
私は心の中で後悔しながら、ローズに頭を下げる。
「ありがとうございます。ですが、男爵家の私などがローズ様のハンカチを使うなんて、失礼になります」
「まあ、奥ゆかしい。ですが、ここは学園内。身分を気にする必要はありませんよ」
にこやかに微笑む姿は聖母そのもの。太陽ように眩しく輝く金髪。翡翠よりも鮮やかな切れ長の瞳。筋が通った鼻に、薔薇の花びらのような唇。
その立ち姿から、すべてが彫刻のように完璧。存在自体が眩しく美しい。
「ローズ、様……」
そういえば、ローズは私が困っているといつもさり気なく助けてくれていた。
高位貴族の社会ルールを知らずに孤立することが多い私。そこに、ローズ様が颯爽と現れて丁寧に教えてくれ、必ず微笑みを残して去る。
頑張って。あなたなら、できますわ。
そう心の声が聞こえるような。いや、私の妄想だと分かっている。それでも、あの無駄なキラキラ金髪王子より、よっぽど癒やされるし支えられている。
「どうなさったの?」
不思議そうに首を傾げて私を見るローズ。
そうだ。ローズは私に絡んでくるキラキラ金髪王子にも説教をしていた。公爵家だから、王家に物言いができる。
もしかしたら、味方になるかも。いや、味方とまでは言わなくても、現状を良い方向にできるなら。
私は一縷の望みをかけて、ローズに現状を訴えることにした。
入学の日。門でぶつかったのは、やはりゲームのキャラの王子で。家に帰って鏡をよく見れば、私はヒロインで。
その時の絶望は表現のしようがない。
「私が? 王子たちを攻略? 無理、むり、ムリ、無理! 私は地道に目立たず平凡に生きる。いや、生きないといけないのに」
そもそも私は…………あれ? あのゲーム、こんな設定だった? いや、いや。あれは乙女ゲーム。こんな設定ありえない。
なら、ここはゲームの世界ではない? いや、あの場面とこの顔が揃っていてゲームとまったくの無関係、というのはないだろう。
「似た世界なのか……とにかく、王子たちには関わらないようにしよう」
その日から私は人と関わることを少なくした。それなのに――――――――
勉強をするために図書館へ行けば、キラキラ金髪王子。ご飯を食べるために食堂へ行けば、キラキラ金髪王子。人が少ない裏庭へ行けば、キラキラ金髪王子。
始めは、すごく偶然が重なるな、と思っていた。でも、途中で気がついた。
これ、ストーカーだ!
私が動けば、教室内の誰かがさりげなく出ていって報告に行っている。中庭を歩けば、校舎の屋上から視線。
その後で現れるのは、キラキラ金髪王子。
このことに気づいた時、私は寒気を通り越して気絶しかけた。
相手は王太子。国家権力者。周囲は貴族でその味方。
私は完全に孤立無援。誰にも相談できない。もちろん、両親にも。いや、両親にこそ相談できない。もの凄く心配させてしまう。
私は気合いを入れるため、袖で顔をこすった。
今は勉強に集中。あと半年もすれば、あのキラキラ金髪王子は卒業する。そうすれば、邪魔する人はいなくなる……
「あら、あら。淑女が袖で顔を拭くなど、もってのほか。これをお使いなさい」
目の前に差し出されたレースのハンカチ。顔をあげると見たことがある人が。
人の顔を覚えるのが苦手な私が覚えている、数少ない人の一人。
公爵令嬢のローズなんとか。前世の妹が悪役令嬢がなんとか、処刑される運命がなんとか、と言っていた。
ゲームに興味がなくて真剣に聞いていなかったため、記憶はウロ覚え。もう少しちゃんと聞いていれば良かった。
私は心の中で後悔しながら、ローズに頭を下げる。
「ありがとうございます。ですが、男爵家の私などがローズ様のハンカチを使うなんて、失礼になります」
「まあ、奥ゆかしい。ですが、ここは学園内。身分を気にする必要はありませんよ」
にこやかに微笑む姿は聖母そのもの。太陽ように眩しく輝く金髪。翡翠よりも鮮やかな切れ長の瞳。筋が通った鼻に、薔薇の花びらのような唇。
その立ち姿から、すべてが彫刻のように完璧。存在自体が眩しく美しい。
「ローズ、様……」
そういえば、ローズは私が困っているといつもさり気なく助けてくれていた。
高位貴族の社会ルールを知らずに孤立することが多い私。そこに、ローズ様が颯爽と現れて丁寧に教えてくれ、必ず微笑みを残して去る。
頑張って。あなたなら、できますわ。
そう心の声が聞こえるような。いや、私の妄想だと分かっている。それでも、あの無駄なキラキラ金髪王子より、よっぽど癒やされるし支えられている。
「どうなさったの?」
不思議そうに首を傾げて私を見るローズ。
そうだ。ローズは私に絡んでくるキラキラ金髪王子にも説教をしていた。公爵家だから、王家に物言いができる。
もしかしたら、味方になるかも。いや、味方とまでは言わなくても、現状を良い方向にできるなら。
私は一縷の望みをかけて、ローズに現状を訴えることにした。
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