やけに多彩な壊れ方 小説一覧

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指名手配勇者

真暗い深海に堕ちるように、闇の帳は世界を覆っている 
深い闇の中でなお、人は神を信じ、勇者を讃え、魔物を恐れながら生きていた  だがその光は、あまりにも脆く、儚い   その世界を、一人の勇者が逃げ続けている  風縫いとさえ謳われた勇者“だった”者 
だが今や彼は魔物として人々から指名手配され、処分対象として教会から追われる存在だった   彼は人間を嫌悪していた 
何にでも縋り、他者を容易に穢し、醜く生き延びようとする人間を 
なにより、怯懦に塗れ何もできなかった自分自身を    「僕は僕が気持ち悪かった。だから、僕と同じ生物のお前たちもまた、吐き気がする」    そんな青年の隣にはいつも一人の男がいる  軽快な笑みを浮かべた彼の片割れたる勇者 
彼は決して強くはない  
だが、それでいて妙に肝が据わっていて、死を目前としてさえどこか飄々とするような性格だった    逃亡の果てに辿り着くのは、腐敗都市 
死体を縫い合わせ命を繋ぐ医師 
無垢に人へ寄り添おうとする娼婦 
神の不在へ絶望しながら、それでも祈りを捨てられない神父  そして、獣のように全てを笑い噛み潰す女    深海のように死が降り積もる水底 
死骸の上に築かれた世界 
死滅の際に放たれる、微かな光    これは、死を恐れる勇者が終わりへと奔りながらもなお生を渇望する物語 
これは、死骸群生のように、壊滅の輪に燐光を灯し続ける人間たちの残光の物語
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