ホラー、お寺、住職。幽霊、お経。小説一覧

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ホラー 連載中 ショートショート
大病をして、生死を彷徨った、A子は、 まだ、体力が、回復しないにも関わらず、 最後の一人旅にと、20年ぶりにとある神社へと辿り着く。 そこから、彼女の不思議な旅が始まった。 人の気配の無い神社で、御神籤を一枚引いたら、そこには偶然にも、彼女の状況が、ドンピシャリと書いてあり、最後の数行は、ひたすら神仏に祈れ祈れ祈れと書かれてあった。 その時、ふっと何気に彼女は、自分の手のひらを見てみた。 生命線が途中で切れていた。 ここで自分の人生を終わりたくないと、願ったA子は、生命線を少しでも伸ばそうと思って、御神籤に書かれてあったように、神仏に祈るた為に、対象とする神仏を探そうと、あ魂の旅に出た。 不思議な偶然が、幾度も重なり、A子は、ある過疎地のお寺に辿り着いた。 そこには、住職が、微笑みながら、大玉の翡翠の美しい数珠を手に持ち、彼女を待っていた。 その山奥のお寺に自然と住むようになった彼女は、住職の手伝いをしながら、みるみる内に体力が、回復し、生気を取り戻していった。 それと同時に不思議な現象が、彼女の身の回りに起きるようになった。 住職にその現象を、相談すると、「魂ってあるやろう?」とニコニコ微笑みながら言うばかりである。 ある時は、部屋で般若心経を複数で合唱する声が聞こえてくる。透き通った、ウィーン少年合唱団のような声である。 最初、ソレが聴こえた時は、蚊が飛んでいるのかと思ったが、どうも違うような気がして、じっと聞き耳を立てる。と、「ハンニャ〜ハ〜ラ〜」と般若心経の一部が聴こえて来た。 また別の日には、台所で椅子に座っている時に、右の耳元で「タッ!タッ!タッ!タッ!タッ!」と音がする。不思議と怖くは感じなかったA子は、住職に聞いてみた。 「ああ、ずっと前から居てるで。昔亡くなった人やけどなぁ。ワシがこの寺に来る前からや。村の役場に勤めてた、頭の賢いお婆さんやったらしいで。娘さんと仲が悪くて、遺骨を、どっかにやってしもうたみたいで、成仏出来んのちゃうか?」 後日、そのお婆さんの親戚の法事が、寺であった。 親戚の男性が、申し訳なさそうに、言ってきた。「出るでしょう?すんまへんなぁ。迷惑かけて。」とA子に謝ってきた。 またある日、生前そのお婆さんと仲良しだった女性が、嬉しそうに言って来た。 「出たの?出たの?あの人、生きてはった時、本当に明るい、えぇ人やってん!」 なるほど。だから、耳元で「タッタッタッ!」と言われた時、そんなに怖くなかったんだ。からかわれたのか。 妙に納得してしまったA子。 だが、なんとかしたいので、台所の塩を一掴みと、水をテーブルの上に置いてみた。 それと、お煎餅を一枚。 そんなこんなで、日々の暮らしが、あの世の人とこの世と境目のような状態に加え、神仏プラスな毎日を、現在進行形で過ごしている。
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文字数 3,446 最終更新日 2020.07.09 登録日 2020.07.09
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