ミステリー 祇園 小説一覧
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甘い白粉と線香、湿った木の匂い――その匂いが、国語教師・上原詩乃の感情の扉を揺らした。流産と離婚から半年、泣けないまま日常をやり過ごし、心だけを固く閉じて生きている。
冬の京都、八坂で授かった「澪守」のお守りを境に、詩乃は数日後の授業中に倒れ、大正十二年の祇園で目を覚ます。そこで彼女は「立花志乃」と呼ばれ、喜びも悲しみも秤にかけられ、貨幣として売買される世界に放り込まれる。
痛みだけが、狙われている。痛みを売る女たち、悼めなくなる母、静かに壊れる街。志乃はやがて協力者とともに“感情犯罪”の連鎖を追い、政府の裏機関「情動管理局」の通達――『女から痛みを奪え』へ辿り着く。
奪われた痛みを世界へ返す禁術「澪の還流」。その代償は、あまりに大きい。悼みは救いか、呪いか。泣けない国語教師は、痛みの意味を取り戻せるのか。
文字数 13,975
最終更新日 2026.03.04
登録日 2026.03.01
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