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ファンタジー 連載中 長編
世界は救えない。だが領地なら、千年かければ変えられる。 ここはカリデア国の辺境、アペルティア領。 領主オーダ・ルーメンは、千年領主と呼ばれている。なぜそう呼ばれるのか、彼自身は多くを語らない。 月光教団が支配するこの世界では、病は「月の試練」とされ、文字の記録は「選別の刃」として忌避される。民は智を持つことを許されていない。疫病が流行れば祈祷で対処し、子どもが死ねば「月の召命」として受け入れる——それがこの国の在り方だった。 しかし新月の夜——稀に、奇妙な訪問者が現れる。 〈迷子〉。地球で後悔を抱えて死んだ現代人が、この世界に転移してくるのだ。 最初に森で目覚めたのは、看護学生の少女。パンデミックの病棟で実習中、何もできないまま命を落とした彼女は、前世で救えなかった「一人」を背負っていた。 続いて現れたのは、教師の青年。理想と現実のギャップに潰されて命を絶った彼は、子どもたちに何も残せなかった後悔を抱えていた。 オーダは教団の目を盗み、二人を保護する。 看護学生は診療所を立ち上げる。手洗い、洗濯、隔離、消毒——前世で当たり前だった衛生の知識を、この世界に根づかせようとする。教師は板壁の小さな教室を作り、領民の子どもたちに読み書きと算術を教え始める。 しかし、月光教団はそれを許さない。 「手洗いは祈りを介さぬ不敬」。「隔離は共同体の契約破り」。「文字は選別の刃」。 善意は軋み、隔離で家族が裂け、取り返しのつかない傷も残る。 そして過去最大級の疫病が、アペルティアを襲う——。 異端審問の場で、千年領主オーダは何を語るのか。書記官リテアが読み上げる「助かった名/死んだ名」の名簿が、祈りの場を静かに揺らす時、信仰と科学のどちらが「女神の望み」と判定されるのか。 派手な戦闘も、俺TUEEEもありません。 あるのは、一つの辺境を千年かけて変えていく、地道で確かな手触りだけ。 ——千年に至る長い物語の、最初の一章が始まる。
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文字数 61,101 最終更新日 2026.05.26 登録日 2026.05.26
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