幼い頃の想い出小説一覧
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※こちらは、恋愛小説「笑顔の魔法」に登場する真城輝史視点の物語です。「笑顔の魔法」の補足的意味合いが強いので、「笑顔の魔法」をお読み頂いてからお楽しみください。以下シナリオです。
大学進学後、勉強だ何だと忙しくなった俺は、あまり、マコトの家には出向かなくなった。
気付けば交流を断っていて、今はもう、マコトがどこで何をしているのかさえ、知らない。
マコトの家に行けば居るかもしれないが、今更、顔を出すのはどうも気が引けた。
彼女が十八歳の俺のことを覚えていてくれて、どこかで、幸せに生活してくれているのなら、それでよかった。
別れてからの歳月を考えると、そろそろ十八歳だろうか。マコトのことだから、明るく元気に育っているに違いない。
きっと、たくさんの友達に囲まれて、荘司さんと律子さんが居る幸せな家庭の中で、今日も笑っているのだろう。
…律子さんに似て美人になって、男達にはモテモテで、……かっこいい彼氏だって、いるかもしれない。
いつか、会えたら良い。お前は覚えていないかもしれない。けど、お前のおかげで、俺は変われたんだって、まだ立派とは言えないけれど、教師になったんだって伝えたかった。
しかし、そんな俺の願いは虚しくも崩れた。
「…人違いです。私は、古谷真琴ではありません」
かつての母校に転勤後、出会った少女は冷めた表情を浮かべて答える。
早瀬真琴。
マコトと同名のその少女は、どこかマコトに似た風貌で、それでも、マコトが絶対に見せない表情を浮かべていた。
「早瀬は、本当に俺のことが嫌いなのな」
マコトなのか、…いや、マコトじゃなかったとしても、俺は彼女のことを構わずには居られなかった。
何故、そんなに寂しそうな表情を浮かべるのか、知りたかったから。
「真城先生…、どうされたんですか?」
「……いや、ちょっとな。…昔のことを、思い出していた」
彼女に触れようと伸ばした手は空を切り、…実感する。もう、自分は若くはないのだと。
文字数 29,485
最終更新日 2017.12.12
登録日 2017.12.01
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