第4回ライト文芸大賞終了

第4回ライト文芸大賞

第3回ライト文芸大賞

選考概要

第2回を大きく上回る応募数となった今回は、何気ない日常を丁寧に切り取った物語や、青春の出会いと別れを描き切ったお話、仕事や部活動での人間関係を主軸としたものなど、幅広いテーマの作品が集まった。終始あたたかい雰囲気の物語が多い一方で、切ない感情や重い悩みを主題とした小説も目立った。

多数の応募の中から、編集部内で大賞候補作としたのは、「たっくんは疑問形~あなたと私の長い長い恋のお話~」「スパイスカレー洋燈堂 ~裏路地と兎と錆びた階段~」「咲夜。人の寿命が見える私と、来年までに死ぬ彼の話。」「おいしいふたり暮らし~今日もかたよりご飯をいただきます~」「たとえ空がくずれおちても」「好きなひとは ちがうひとの 生きる希望」「同じ星を目指して歩いてる」「ガールズ!ナイトデューティー」「ベビー・アレルギー」「この世界で僕だけが透明の色を知っている」「雨が乾くまで」「雪町フォトグラフ」「呪われ少女は不幸になりたい」の13作品。

これらの候補作の中で、編集部内で最も支持を集めた「おいしいふたり暮らし~今日もかたよりご飯をいただきます~」を大賞に選出した。さらに、テーマ別の賞として、透明人間のように周囲に認識されなくなっていく少女を救おうとする「この世界で僕だけが透明の色を知っている」を切ない別れ賞に、離島を舞台に繰り広げられる高校生の恋模様を描いた「好きなひとは ちがうひとの 生きる希望」を青春賞とした。また、最終選考に残ったものの、惜しくも受賞に至らなかった作品を奨励賞とした。

「おいしいふたり暮らし~今日もかたよりご飯をいただきます~」は、元料理人の主人公が、偏食家でズボラな恋人の食生活をwebカメラを通じて抜き打ちチェックする話。料理の描写が非常に丁寧で食欲をそそり、また、主人公と恋人の両方が好感を持てる人物造形をしている点も高く評価された。

「この世界で僕だけが透明の色を知っている」は、男子高校生の主人公が、突然周囲の人に認識されなくなってしまった幼なじみの少女を救うために奔走する物語。ヒロインである幼なじみが不安を抱えながらも明るく懸命に生き抜こうとする姿が印象的で、切なくも読後感のよい作品だった。

「好きなひとは ちがうひとの 生きる希望」は、幼い頃に主人公と結婚の約束をした幼なじみの少年が、余命僅かな少女を恋人として連れて帰ってくるというストーリー。主人公を始めとする各々のキャラクターの苦悩や心の揺らぎが繊細なタッチで描かれ、構成力の高さが窺えた。

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応募総数1,171作品 開催期間2020年05月01日〜末日

編集部より

彼女の食生活をオンラインで見守るというインパクトのある設定から丁寧に語られていく二人の等身大の物語に、一気に引き込まれました。料理の描写もとてもお上手で、頼子のズボラ飯の作り方やその後の食べている様子を読むだけでお腹が空くような、魅力的な作品だと感じます。


編集部より

ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。さっぱりした性格のヒロイン・響子と、浩一朗をはじめとした三人の男性キャラクターの気がおけない関係に引き込まれました。また、彼らが生み出す刺激的な恋愛模様も面白く、人気の高さにも頷けます。


編集部より

「透明病」を患ったヒロインがキラキラと消えていく描写が、とても美しく秀逸でした。主人公がヒロインの絵を描き続けることで、彼女を記憶に留められるというラストも素晴らしかったです。切なくもどこか爽やかな印象の作品でした。


編集部より

一つ一つのシーンから全体までよくまとまっていて、主人公の丁寧な心情描写に引き込まれました。幼馴染はもちろん、恋敵から徐々に打ち解けていく幼馴染の恋人や恋心をひた隠してずっと主人公を支えた幼馴染の弟など、周囲のキャラクターにも好感が持て読後感のよい作品でした。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

第2回ライト文芸大賞

選考概要

第1回を大きく上回る応募数となった今回は、大切な人との切ない別れを描いた物語や、家族の在り方を主軸としたもの、瑞々しい青春を描いた小説など、幅広いテーマの作品が集まった。社会問題や主人公の抱える悩みを描きつつも重い雰囲気になりすぎず、ラストでは希望や救いを見出すような、読後感のよい作品が多かった。


多数の応募の中から、編集部内で大賞候補作としたのは、「命のバトンは未来へ繋がる ~The Last 100 day~」「『私メリーさん、今あなたのおうちの前にいるの』」「力士かと思ったら僕のカノジョだったよ」「未来からの小説、過去からの恋」「余命5分の恋人 ~死神にあらがうために、僕と君は恋をする~」「さよなら、幽霊(キミ)とバッドエンド」「八月の魔女」「ハナサクカフェ」「アパートの一室」「サマーエンディングストーリー」の10作品。


それぞれ個性的で異なる魅力があったが、いずれも大賞には一歩及ばなかったため、新たに優秀賞を設けて編集部内での評価を集めた「八月の魔女」を選出した。また、テーマ別の賞として、甘酸っぱい恋心を描いた「さよなら、幽霊(キミ)とバッドエンド」を青春賞、恋人との未来をつかもうとする「余命5分の恋人 ~死神にあらがうために、僕と君は恋をする~」を切ない別れ賞、主人公の懸命な姿を描いた「命のバトンは未来へ繋がる ~The Last 100 day~」を命の輝き賞、子育てをテーマとした「ハナサクカフェ」を家族愛賞とした。
さらに、これらの作品にわずかに及ばずながらも優れた作品であった「『私メリーさん、今あなたのおうちの前にいるの』」「サマーエンディングストーリー」の2作品を特別賞に選出した。
また、最終選考に残ったものの、惜しくも受賞に至らなかった作品を奨励賞とした。


「八月の魔女」は、魔女の力を受け継ぐ高校生の主人公が、自分の将来について悩みながら祖母の家でひと夏を過ごし、成長する物語。ハーブやまじないの言葉を使って日々を丁寧に過ごす様子や、作品に流れる優しい雰囲気が心地よく、物語に緩急がある点も高く評価された。

「さよなら、幽霊(キミ)とバッドエンド」は、雨の日だけ幽霊が見える主人公が、記憶喪失の幽霊と出会って恋に落ちるというストーリー。幽霊に恋心を抱いてしまった主人公の苦悩や心の揺らぎが繊細なタッチで描かれ、構成力・筆力の高さがうかがえた。

「余命5分の恋人 ~死神にあらがうために、僕と君は恋をする~」は、“死神チェック”により余命を宣告された主人公が、同じ境遇の少女と恋人になり、未来を覆そうとする物語。恋愛模様に加え近未来的な設定が目を引き、インパクトのある作品だった。

「命のバトンは未来へ繋がる ~The Last 100 day~」は、命を救われた主人公が救命士となり、救命現場で奮闘する姿を描いたもの。主人公の生き様から伝わる信念や「命」というテーマが明確で、読者へのメッセージ性を強く感じられた。

「ハナサクカフェ」は、子育てに悩む客の視点で、赤ちゃん・乳児専用カフェでの出来事を語った作品。育児の悩みがリアルに描かれつつも、店員の温もりや苦悩を打ち明けて前に進もうとする親から希望が感じられ、読後感のよい作品だった。

「『私メリーさん、今あなたのおうちの前にいるの』」は、主人公の家に親戚の女の子が突然訪ねてきたことから始まるストーリー。前半は軽い筆致でありながらも、終盤は雰囲気が一変して謎が提示されるという、意外性を狙った構成が巧みだった。

「サマーエンディングストーリー」は、故郷に戻った主人公が幼馴染や家族との繋がりを改めて考え直す物語。物語全体に漂う夏を感じさせる空気感や、どこかノスタルジックな趣のある情景描写が巧みで、筆力の高さがうかがえた。

応募総数833作品 開催期間2019年04月01日〜末日

なし


編集部より

ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。キャラクター達が生き生きと表現されており、読んでいるこちらまで元気になるほどのエネルギーを感じました。日常と非日常を魅せる舞台設定が巧みで、その場に自分がいるかのように思わせる世界観が、多くの読者をひきつけたのではないかと思います。

八月の魔女

71位 / 833件

編集部より

祖母の家へ帰省した夏の、穏やかに流れる時間や暮らしの風景が丁寧に描かれている作品でした。主人公をはじめ、登場人物たちが各々の抱える苦難を乗り越えて成長していく様子なども、繊細に表現されていると思います。魔女や妖精というファンタジー要素も日常の中に違和感なく溶け込んでいて、非常に魅力的でした。

さよなら、幽霊(キミ)とバッドエンド

鞠坂小鞠
48位 / 833件

編集部より

雨の日だけ幽霊が見えるという主人公の設定に加え、幽霊の正体に関する伏線が巧みでした。顔の見えない幽霊に恋心を抱き、いつしか雨の日を待ち遠しく思う主人公の心情が丁寧に描かれていて、爽やかさと共に切なさが伝わってきます。感情移入せずにはいられない、最後まで目が離せない作品でした。

余命5分の恋人 ~死神にあらがうために、僕と君は恋をする~

友理 潤(じゅー)
36位 / 833件

編集部より

AIが予測した未来に抗おうとする少年少女の懸命な姿が瑞々しいタッチで描かれていて、別れの予感に切なさを覚えつつも、読後には爽やかな気持ちになれます。SFや青春、恋愛といった要素が物語にうまく絡んでおり、十代に限らず、上の年齢層にも支持される作品だと感じました。

命のバトンは未来へ繋がる ~The Last 100 day~

雪柳 京司朗
7位 / 833件

編集部より

主人公が救命の現場で苦悩しながら、救助者の命を繋ごうと懸命にひた走る姿が印象的でした。主人公はもちろん、一見、飄々としているように見える貝塚医師や、医師として命を懸けた神谷など、キャラクターひとり一人の「生」に対する信念が描かれており、読み応えのある作品だと思います。


編集部より

悩みを抱えながらも子供に愛情を注ぐ親の姿が、リアルに描かれた作品でした。それぞれの親の視点で語られることで、キャラクターの感情がうまく表現されています。また、親たちに寄り添う店員たちの優しく温かい雰囲気も心地よく、こんなカフェが身近にあったらと思わせる魅力的な物語でした。

「私メリーさん、今あなたのおうちの前にいるの」

猫野ミケ
11位 / 833件

編集部より

キャッチーなタイトルと導入に加えて、読者の裏をかく展開が巧みでした。また登場人物に人間味があり、メリーのために諦めず必死になる主人公と、彼を心から助けてくれる周囲のキャラクターの姿に、思わず胸が熱くなりました。切ないけれど最後には心温まる作品だと思います。

サマーエンディングストーリー

にぎた
329位 / 833件

編集部より

「ひと夏の物語」を感じさせる空気感や懐かしさの漂う情景描写が、物語の主題と合っていました。悩みを抱えながらも強く生きる幼馴染や、幼い頃に亡くなった父との邂逅を経て、自分を見つめ直していく主人公にも好感が持てます。じんわりと心に沁みる味わい深い作品でした。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

第1回ライト文芸大賞

選考概要

初開催にして、応募数が508作にものぼった第1回ライト文芸大賞。多数の作品から編集部内で大賞候補作としたのは「僕とエリナの、最後の半年間について」「伊緒さんのお嫁ご飯」「世界の終わり、茜色の空」「ミヤコワスレを君に」「足リナイ脳ノ補イ方」「まよいが」「いつか、俺が俺を好きであるとき」の7作品。

中でも選考員の評価が高かったのは「僕とエリナの、最後の半年間について」「ミヤコワスレを君に」「足リナイ脳ノ補イ方」の3作品だった。いずれもそれぞれの魅力を持つ力作であったが大賞には一歩及ばず、新たに優秀賞という枠を設けて「僕とエリナの、最後の半年間について」「足リナイ脳ノ補イ方」を選出、「ミヤコワスレを君に」には特別賞を授与することとした。

「僕とエリナの、最後の半年間について」は、自分が死ぬ日を知っている無気力な少年と、そんな彼に近づこうとする少女の物語。読者のターゲット層をしっかり定めて設定が練られており、少年と少女それぞれの視点から語られることで、より感動を呼ぶストーリー構成となっていた。

「足リナイ脳ノ補イ方」は、発達障がいの診断を受けた青年が、自分自身や初めての恋と向き合いつつ成長していくという意欲作。非常に繊細なテーマを扱いながらも、ユーモアあふれる文体と個性的なキャラクターたちが独自の世界観を築き上げ、類稀なセンスのうかがえる話に仕上がっている。

「ミヤコワスレを君に」は、田舎の少年と都会出身の少女が不器用ながらも距離を縮めていく様子が丁寧に描かれた良作。主人公の兄にまつわる過去の見せ方もうまく筆力の高さが感じられたが、突出した引きに欠け、全体を通して地味な印象を受ける点が惜しかった。

また授賞には至らなかったが、「伊緒さんのお嫁ご飯」は、仲睦まじい夫婦の食卓が温かな視点で描かれ、心がほっこりする作品。親しみ深い料理がたくさん登場し、読者の食欲をそそるが、夫婦の会話以外に物語の広がりがなく、単調に感じられる点が残念だった。

「世界の終わり、茜色の空」は、世界が終わる前の数日間を繰り返し体験する少年少女の物語。設定が魅力的で、ノスタルジックなキャラクター像や日常描写が独特の空気を作り出していたが、唐突感のあるラストがマイナスとなってしまった。

「まよいが」は、社会に疲れた人々が奇妙な屋敷にいざなわれ、そこで新たな自分を見つけるまでの様子が高い筆力で描かれていた。どの登場キャラクターにも親近感が湧く一方、それぞれのエピソードが薄く、既視感のあるものに感じられた。

「いつか、俺が俺を好きであるとき」は、記憶を失った主人公にまつわる伏線がよく練られた作品。そのアイデアには評価が集まったものの、やや無理のある設定、描写力の粗さが目立ち、うまくまとめきれていない印象を受けた。

応募総数508作品 開催期間2018年04月01日〜末日

なし


編集部より

ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。航空自衛隊を舞台としている点が目新しく、楽しい作品でした。整備士であるヒロインとパイロットであるヒーローの掛け合いが軽妙で、二人の距離が徐々に近づいてゆく過程に多くの読者が胸をきゅんとさせたことと思います。


編集部より

自身の死ぬ日を知っている主人公の文成と、そんな彼にちょっかいをかけるエリナが生き生きと描かれた作品でした。「その日」までのカウントダウンが進むにつれて二人が心を通わせていく姿が切なく、読者へ強く訴えかけるものがあったのではないでしょうか。エリナの心情が後章で明かされたとき、それまで以上に物語に引き込まれ、胸が熱くなりました。

足リナイ脳ノ補イ方

EITO8×8
64位 / 508件

編集部より

小説として完成度が高く、読み応えのある作品に仕上がっていると思います。純粋に生きる「六六六」や彼を支える「死神」、病気を抱える「空」など、登場人物がみな個性的で、ユーモアと優しさにあふれた物語でした。発達障がいという主題の難しさがありながらも、嫌味なく書ききった筆力にも評価が集まりました。


編集部より

主人公とヒロインの心情描写が丁寧に描かれており、彼らの純粋にお互いを思いやる姿が感動的でした。亡くなった主人公の兄に関する伏線の張り方がうまく、ストーリーをクライマックスで盛り上げるなど、構成力の高さが感じられます。また、随所で用いられる比喩表現が巧みで、物語に引き込まれました。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。