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恋愛 完結 長編
別れのあと、彼女は床屋に入った。 理由を説明するためでも、誰かに見せるためでもなく、ただ自分の髪を切るために。 駅裏の古い理容店。 赤白青の回転灯。 静かな店内で、彼女はロングヘアから、ショートへ、スポーツ刈りへ、そして坊主、スキンヘッドへと、自分の髪を段階的に失っていく。 落ちていく髪。 変わっていくシルエット。 鏡に映る、知らなかった自分。 理容師・榊は、踏み込まない距離を保ったまま、彼女の選択を淡々と受け止める。 問い詰めない。慰めない。押しつけない。 ただ、切るべきものを、確かな手つきで切っていく。 髪を切るという行為は、彼女にとって「喪失」ではなく、「整理」だった。 誰かの好みのために存在していた自分。 守られることで保たれていた弱さ。 それらを、音と振動と冷たい外気の中で、少しずつ手放していく。 そして、すべてを剃り終えたあとに残ったのは、 裸の頭と、逃げない視線と、静かな再起動。 恋はまだ始まらない。 けれど、戻ってこられる場所と、選び直せる自分が、そこにはある。 床屋という密閉された空間で描かれる、髪と身体と心の変化。 切ることと、伸びること。 終わることと、続くこと。 これは、恋愛小説であり、 同時に「自分を取り戻す物語」である。
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文字数 18,708 最終更新日 2026.02.09 登録日 2026.01.27
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