「一言」の検索結果

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ライト文芸 完結 短編
記憶の中にいる彼女を思い出す時、いつも雨が降っている。 彼女は雨が好きだった。その理由は…大切な、大好きな人に会えるから…本当は知りたくなかったけれど、知ってしまった。だからこそ俺は自分にできることをやろうと思った。 彼女がずっと待っているかけがえのない存在を見つけるために、期限付きで住み慣れた町を出た。かき集めた少ない情報を頼りに『彼』を捜してたどり着いた地に残されていた最後の足跡。 残された時間と、何も得られていない現状に落ち込んでいた時、偶然迷い込んだ場所で出会った人から受け取った大切な情報を手に、彼女の元へと戻った。 数年ぶりに町に戻った俺を待っていてくれたのは、あの頃とほとんど変わらない町並みと、かけがえのない悪友。そして…ずっと会いたかった彼女。 俺は離れていた時間で得たことを彼女に話すため、二人で思い出の場所へと向かう。事実を伝えた時、彼女がどんな反応を示すのかが不安で少し怖かったけれど、すべてを話した。そうすることが俺のやるべきことだと思っていたから… 新たに語られた俺の知らない彼女の時間の中にはやっぱり『彼』がいて、それを語る彼女はとても幸せそうに見えた。 きっと俺の気持ちを伝えることはないだろうと思っていた。それほどまでに彼女にとって『彼』は特別な存在なのだと理解してしまったんだ。 「会いたくなったらいつでもここに来れば良い。」 その一言を信じて彼女はずっと待っている。寂れ果てた思い出の場所で彼女の心は一人、取り残されているのかもしれない。 雨の降る庭で交わした最後の言葉… 「ねぇ。ボクに会いたくなったら、いつでもここにおいで。だからボクも、会いたくなったらここに…」 結局その言葉に込められた本当の意味はわからないまま、『彼』は彼女の前から姿を消した。 いつからだろう。彼女のことを思う時、浮かんでくる姿がいつも雨の中にいることに気が付いたのは… もしかしたら俺たちは、雨によって創り出された不思議な世界に迷い込んでしまっていたのかもしれない。だとしても、俺は変わらず何度でも彼女を見つけ出してこの手を伸ばすだろう。 彼女にとって『彼』がそうであるように、俺にとっての彼女は失ってはいけない、大切な…存在だから。 「♪~てるてる坊主 てる坊主 あーした天気に…」 霧雨の中をゆっくりと歩きながら、また歌っているんだろうか…
大賞ポイント 2pt
文字数 73,199 最終更新日 2025.07.03 登録日 2025.07.03
青春 完結 短編 R15
「間違いだったのか、それとも――まだ間に合うのか。」 夢を追いかけるということは、何かを手に入れることではない。 それは同時に、何かを失っていくことでもある――。 かつて、何も持たなかった五人は、ただ音楽が好きだという理由だけで集まり、「another5」というバンドを結成した。小さなライブハウス、わずかな観客、思うようにいかない日々。それでも彼らは信じていた。いつか、この五人で大きなステージに立つと。 しかし、十年という時間は、夢と現実の境界線を容赦なく浮き彫りにする。 圧倒的な才能を持つベーシスト・梨々香は、成功への扉を開き、人気ガールズバンド「チェリープラネット」へ。 ボーカルの直斗もまた、大手事務所スターミュージックに見出され、華やかな世界へと足を踏み入れる。 それは、彼らが望んだ“成功”のはずだった。 だが――。 スポットライトの中心に立ちながら、胸の奥に残り続ける違和感。 数万人の歓声の中でさえ埋まらない、たった四人分の空白。 「楽しくない」 その一言が、すべてを壊し、そして動かし始める。 選ばなかった道。 置いてきた仲間。 言えなかった想い。 それぞれが別々の場所で“正解”を掴みかけたとき、彼らはようやく気づく。 本当に欲しかったものは、成功そのものではなかったのだと。 ぶつかり、すれ違い、離れ離れになった五人が、もう一度同じ場所に立つために選んだ道は――あまりにも不器用で、あまりにも真っ直ぐだった。 「一度きりの人生だ。やりたいことのために生きろ」 その言葉を胸に、彼らはもう一度、音を鳴らす。 これは、夢を叶える物語ではない。 夢の“意味”を取り戻す物語だ。 もし、あの時違う選択をしていたら。 そんな“もう一つの人生”を胸に抱えながら、それでも前へ進むすべての人へ。 胸の奥にしまっていた何かが、きっと音を立てて動き出す。
大賞ポイント 0pt
文字数 55,145 最終更新日 2025.02.13 登録日 2025.02.08
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