「豪雨」の検索結果

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精密計器販売部門に在籍する鴻池俊輔は、社員から慕われる営業一課の課長である。 若い課員達は、俊輔の管理姿勢を歓迎し、それに応えるように販売予算の長期間達成を実現している、チームワークの良い課として知られていた。 総務課に所属していた湯元美由紀と福井信二は結婚を前提に付き合っていた。 同じ総務課の独身最年長女子社員、糸井良子が社内のブーイングを受けながらも福井信二に手を出し篭絡して結婚した。 元々、良子は多くの社員から嫌われる存在だった。結婚して退社したことを陰で喜ぶ社員は多かった。 福井夫婦には、結婚当初から夫婦仲が悪いと云う噂が流れていた。 上司は、信二の夫婦仲と職場での居心地を考慮して、東京支店転勤を命じた。 良子は信二の転勤には同伴せず、上司の配慮は良子からの離婚手続きを早めただけだった。 信二の離婚が成立し、暫く経った或る日、俊輔は美由紀から相談を受ける。 美由紀の父親と俊輔の妻律子の父親は、共に検事上がりの弁護士で、親しい付き合いがあった。律子と一緒になった俊輔も、律子と一緒に何度か湯元家を訪ね、懇意にしていた。 公私混同は一切しない俊輔は、美由紀と知り合いであることを社内では話していなかった。 美由紀から相談を受けた同じ頃、珍しく糸井良子が会社に顔を出した。再婚を嘗ての同僚に伝え、結婚式に出席を頼むためだった。 再婚相手は営業二課が担当する大北精工の専務で、社長の息子だった。 社内で来訪を歓迎する社員はいなかったが、ただ一人、同期入社だった営業二課庶務係の高原優子が話を聞いてやった。 暫くして、大北精工の経営不振に伴う計画倒産が分かり、営業二課の手形不渡が心配される事態が起きる。大北精工の社長と専務は早々に姿をくらましていた。 俊輔の部下たちは、会社が被る損害を憂慮し、営業二課の担当にも関わらず、迅速に情報収集に奔走した。 冷たい雨が、激しく叩きつけるように降る日だった、各地で局地的豪雨による交通事故が多発していた。 人家の少ない山間を走る未舗装の山道で、ガードレールを突き破る、自動車の転落事故が報じられた。 転落事故の運転手は、行方をくらましていた大北精工の専務で、同乗していたのは糸井良子だと報じられた。二人は重篤な状態でICUに収容される大事故だった。 多くの社員が、良子の人騒がせな所業を忌避していた。良子を諫めたい思いはありながら、手を下せずにイラつくひと達に、叩きつけるような激しい氷雨が手を貸した……。 美由紀と良子の行く先には、周りの多くが納得する、真逆の結末が待っていた……。 (固有名詞等すべてフィクションです)
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文字数 44,131 最終更新日 2024.03.16 登録日 2024.03.16
 現在とはまだ地続きの距離。少し前に、世界は一度崩壊している。  旧世界のネットワークと技術は悉く失われ、世界には幾つもの見えない境界が走る。政府は野良犬じみた縄張り争いを繰り返しているが、人々の生活は強かで力強い。まるでごった煮のスープのような有様である。境界を越えて上京した吹雪も、その熱気に翻弄されつつ、少しだけ後戻りした世界を生きる。  お盆も終わる盛夏、境界川で一つの死体が発見された。事件は吹雪が雑用として勤める民政府警備隊に持ち込まれ、猟奇殺人の域を超えて厄介な様相を呈する。  次々と川に流れ着く死体、幽霊騒ぎ、戦前の失われた技術、川向こうの小さな工場、官民両政府の利権争い、対岸からの客人。全てを混ぜていく局地豪雨。  川を繋ぐ橋を越え、他人に触れ、境界を越える時にはいつも痛みがある。土砂降りの橋で、水没する民政府の研究所で、吹雪はまさに境界の縁を歩く事になる。境界川である多摩川を挟んで、やがて川の対岸、自らと他者、生と死、全ての境界は重なっていく。
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文字数 121,998 最終更新日 2022.09.09 登録日 2022.07.15
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