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第四章

☆2

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レミィが店内に入るとカウンターで酒に入り浸り赤い顔をした男がいた。ロブである。

「俺は人間って種族はだいっきらいなんだ。偉そうでこっちを下僕のように扱う。昔から、人間は半獣を馬鹿にしている。俺を馬鹿にしやがる!」

マスターを捕まえてロブは恨みがこもった低い声で言うと、カウンターテーブルを拳でバンバンと叩いた。そして、気分が高揚して声が段々と大きくなってくる。
グラスの中に入った酒が大きく揺れて跳び跳ねた。
ちらり、と酒と気のおける友人との会話を楽しんでいる客が迷惑そうにロブを見ていた。内容も気分のいいものではない。

「だから、この間、魔物退治に誘って俺を殺そうとしたってわけか、ロブ」

レミィは腕を組んで口元を歪めた。
親兄弟がどうのこうの、ではないらしい。
昔からの云々。
下らない、とレミィの瞳が冷たく光る。

「……れ、レミィ、お前生きていたのか!」

ロブは幽霊を見るようなぎょっとした顔でレミィを見て驚きのあまり、椅子から滑り落ち尻もちをついている。

「地獄から蘇った、なんてな」

「…くそ!死ね!俺はお前を気に食わなかったんだ、馬鹿にしやがって!あいつみたいに俺を心の中で侮辱してるんだろ、あいつが、俺を馬鹿にしてたみたいにな!人間なんてくそ!」

ロブは憎しみをレミィに向けて爆発させるとうおおお!と雄叫びをあげて突進してくる。
レミィは素早く身をかわすとロブの後頭部を的確に狙うと肘鉄を食らわせた。がく、と意識を失うロブ。

「お前の被害妄想で、人間が殺されるのは、困るんだよ」

ロブが見境なく人間の命を狙う殺人鬼になりかねない。
人間と半獣が争うようになる火種は見過ごせない。

「…お見事!うるさくて、読書に集中出来なかったから助かったよ」

ぱちぱち、と拍手を送られレミィはそちらに視線を向けた。

「私はジェイ。本と酒をこよなく愛する者だ。その男を警備隊に引き渡すのだろう?私も証言してやる、警備隊に知り合いがいるから事情をよく聴いてくれるはずだ」

「それは助かる。俺はレミィザロ・ガシス。半獣に逆恨みされ、銃で撃たれたまぬけだ」

皮肉を言ってレミィは手を差し伸べてくるジェイと握手を交わした。
半獣の口添えがあると確かに心強い。

レミィの言葉を聞くとジェイは面白そうなモノを見るような眼差しを向けた。

「それはよく生きていたね」

「…心優しい天使が助けてくれた」

その天使は翼ではなく、本当は耳と尻尾、おまけに全身もこもこ毛並みの可愛い猫だが。と、レミィは心の中で呟いた。
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