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おい、ちょっと聞いてくれ。俺、神崎譲(かんざき・じょう)、しがない高校生だったはずが、トラックに轢かれて異世界転生ってやつを果たした。ここまではテンプレだ。問題は、転生のオマケで俺を担当した女神が、ポンコツを極めたドジっ子だったこと。
「ジョウさんには、わたくしのとっておきの祝福を!【万人愛されカリスマ】です!」
キラキラのエフェクトと共に女神がくれたスキル。これでハーレム生活間違いなしかと思いきや、こいつがとんでもない欠陥品(バグ)だった。なんと、好感度の上限設定を忘れてやがったんだ!
結果、どうなったか? 俺に向けられる好感度がMAXの100に達した瞬間、相手の愛情エネルギーが暴発して…物理的に『爆死』するようになった。最初の犠牲者は、俺に懐いてくれた可愛い野良猫だった。撫でてやったら、好感度100になった瞬間、木っ端微塵に消し飛んだ。…トラウマだよ!
つまり俺は【ヒロインに好かれると相手を爆殺してしまう、歩く恋愛地雷】になったってわけ。
それなのに、運命のいたずらか、パーティを組むことになった聖女リリアが、もう最高に俺のタイプで…。でも、彼女の頭上に見える好感度メーターは、出会って数秒で【80/100】! ヤバい、ヤバいって! このままじゃ、あと20で聖女様がピンクの煙になっちまう!
「おい聖女!そんな貧相な祈りじゃ魔物も逃げんぞ!罰として、俺の汗臭い鎧をその胸でピカピカに磨け!」
「ひゃっ!? は、はいぃっ!」
彼女を救うため、俺は血の涙を流しながらクズを演じる。最低なセクハラだって厭わない。なのに、なんでだよ! なんで涙目で頬を染めながら「ジョウ様は、私を強くするために…なんて不器用な優しさ…!」とか言って、好感度が【85/100】に上がってんだよ!?
ポンコツ女神は「てへっ、ごめんなさーい!修正パッチ作成中(納期未定)でーす!」とか夢枕でほざくし、ツンデレ王女にクールな女騎士まで「お前のその屈しない瞳、気に入った」とか言って絡んでくるし! 俺の胃はもう限界だ!
頼むから俺を嫌ってくれ! 俺はただ、好きな子に「好き」って言って、平穏にイチャイチャしたいだけなんだよ!
これは、嫌われるほど好かれ、クズを演じるほど聖人扱いされる俺が、ヒロインたちの貞操と命(物理)を守り抜く、絶体絶命の勘違い異世界ラブコメディ!…誰か、俺の胃薬もってきてくれ。
文字数 7,315
最終更新日 2025.06.25
登録日 2025.06.24
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