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期間工としてラインで働いていた青年・ナオキ。
同じ作業の繰り返し、騒音と油の匂いにまみれた毎日。
それでも、彼には守りたいものがあった。
ある日、配属されたばかりの新人の女の子が、
慣れない手つきでラインの“危険ゾーン”に足を踏み入れる。
「危ない!」
ナオキは迷わなかった。
体が勝手に動き、彼女を突き飛ばす。
視界の端で迫る機械、耳をつんざく金属音——
そして、白い光。
次の瞬間、世界が途切れた。
目を開けると、そこは鉄と火の匂いに満ちた小さな鍛冶場だった。
ナオキは異世界で、鍛冶屋夫婦の“息子”として生まれ変わっていた。
前世の記憶は、はっきりと残っている。
工場での作業手順、安全ルール、上司の顔、寮の部屋、
そして——助けた少女の怯えた表情まで。
(ちゃんと助かっていてくれ……)
そんな思いを胸の奥に抱えたまま、
ナオキは村の鍛冶屋の子どもとして育っていく。
🔧 成長するにつれて顔を出す“期間工の本能”
幼い頃から、ナオキの“手”は異常だった。
金属を持てば重さとバランスが直感で分かり、
木材に触れれば内部の節や歪みの場所まで感覚で読める。
工具を握れば、どの角度でどれくらい力を込めればいいのか、
頭で考える前に“体が知っている”。
壊れた鍋を直せば、前より使いやすく。
木のおもちゃを修理すれば、子どもたちが驚くほど滑らかに動く。
古びた剣を研げば、騎士たちが目を丸くする。
「なんだこの精度は……?」
「こんな仕事、普通は熟練の職人でも難しいぞ」
ナオキ本人は、「自分はまだまだだ」と苦笑するだけだ。
彼の中では、工場で培った“普通の組立スキル”の延長にすぎない。
しかし——それはまだ 序章 に過ぎなかった。
🌌 やがて目覚める、“世界を組み替える力”
歳を重ねるにつれ、異世界の“理”と前世の経験が静かに噛み合い始める。
金属の結晶構造。
魔力を帯びた鉱石の流れ。
さらには、空気や水、人の体を流れる力の筋まで——
ナオキの目には、すべてが“組み立て前の部品”として見え始める。
《組立神理》
それは、物質を“原子レベルの部品”として捉え、
最適な形へと再構成する、神にも等しい能力。
一本の剣を、一本の剣としてではなく、
「切れ味」「強度」「重心」「用途」という要素に分解し、
理想のバランスで再設計する。
やがて、その対象は剣や道具だけではなく、
建物、街のインフラ、戦略、さらには“世界の仕組み”にまで広がっていく。
文字数 946
最終更新日 2025.11.24
登録日 2025.11.24
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