Z世代を甘やかすな

「この仕事、何の意味があるんですか?」面倒くさいZ世代部下を黙らせる答えはこちら

2026.01.16 公式 Z世代を甘やかすな 第2回
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視野の狭いZ世代には「基準値」を示して言い訳を封じる

「責任の圧力」はかけ方を間違えると「入社したばかりの自分には無理です」「業務量が多すぎます」といったカウンターが飛んでくる。これに対してつい、「俺の若い頃はこの2倍量はやらされたぞ」と感情的になりがちだが、ぐっと堪えて「基準値」で封じるのが鉄則だ。

「我が社では、新人であっても、この業務に関しては、このレベルのパフォーマンスを出すことが前提だ」

「これは君への個人的な無茶振りではない。職務記述書にこのポジションに求められる基準がこれだ」

と、事前に作った会社の職務記述書などの基準値を示すのだ。たとえば営業成績なら、数字を可視化すれば言い訳の余地はなくなる。「結果が出れば評価される。出なければ相応の報酬や評価しか得られない」。この極めてシンプルなロジックは、「この仕事、何の意味があるんですか?」などと聞いてくるZ世代にはむしろ納得感が高い。彼らは明文化されたルールは順守するからだ。

Z世代の市場価値をコントロールせよ

彼らが現状を認識したところで、次は彼らを自走させるための「餌」が必要になる。それが「仕事の報酬化」、つまり「市場価値」の提示だ。

Z世代が仕事に対してどこか冷めたように見えるのは、「仕事と報酬の関係性」が見えていないからだ。お金になるなら人は前のめりで仕事をするし、Z世代も必死になる。

まずは、日本の労働市場の現状を見てみよう。日本では未だに「長く勤めていれば、いずれ給料が上がる」という幻想を抱いている労働者も少なくない。しかし、世界標準の現実は残酷だ。筆者はサラリーマン時代、多くの米国企業を見てきたが、彼らの常識は「同じ仕事をしている限り、給料は上がらない」だ。 ざっくりとした相場感として、米国での社内昇給率は、成果を出してもせいぜい年3~5%程度。現状維持なら降格すらあり得る「昇進か退場か(Up or Out)」の厳しい世界だ。

一方で、転職時の昇給率は10~20%が一般的だ。だからこそ、彼らは数年ごとに転職を繰り返し、自分で給料を上げていく。欧州や中国でも基本的に事情は同じだ。「転職しないと大幅な給与アップは望めない」のが世界のスタンダードなのだ。

日本も、世界基準に近づいてきている。日本では「頑張っても報われない」と嘆く声は多い。だが、単に「長く働く」「同じ業務を続ける」ことを努力と呼んでいるなら、それは方向性が間違っている。 確かに長くやれば熟練度は上がるが、同じ労働には同じ値札しかつかないのだ。給与を上げたければ、ハイスキルを身につけ、経験値を積んで転職市場に出るしかない。

筆者の親族に、ITエンジニアが2名いる。彼らは新卒時の年収は300万円台だったが、20代のうちに戦略的にスキルを磨き、転職を繰り返して年収1000万円を超えた。これは特別な魔法ではなく、再現性は高く誰にでもできる。市場で需要のあるスキルを、募集要項を見て確認し、それを現職の実務を通じて獲得していっただけだ。今後、日本の雇用流動性はさらに高まり、この感覚が一般化していくだろう。

この文脈において、上司は圧倒的な「強者」となる。なぜなら、「高く売れる実務経験」を提供できるのは、他ならぬ上司であるあなただからだ。与える仕事によっては、Z世代部下の市場価値を下げることもできる。その一方で、「君の市場価値を高めるためのチケット」として仕事を提示することもできる。この構造を理解させることこそが、Z世代マネジメントの要諦である。

Z世代が磨く「個人のスキル」だけでは買い叩かれる現実

Z世代の多くは「市場価値」に対して誤解をしている。多くは「個人のスキル」こそが市場価値だと信じている。だからこそ、プログラミングや英語といった分かりやすい武器を欲しがり、誰でもできる雑用や調整業務を「市場価値が上がらない無駄な時間」と忌避する。いわゆる「それって僕の仕事ですか?現象」だ。

しかし、現実は非情だ。組織において「個人のスキル」だけで完結するスタンドプレーなど、早晩AIに代替されるか、より安価な労働力にアウトソーシングされるのがオチだ。本当の意味で市場価値が高い人材とは、「個人のスキル」に加え、「周囲を巻き込んで成果を出せる力」を持つ人間だ。「君に任せればチームが回る」「君がいれば、面倒な調整ごともスムーズに進む」。このような「協調性」や「調整力」を持たない人間は、いくら個人の能力が高くても、どの組織に行っても使い勝手が悪く、最終的には買い叩かれる運命にある。

「まずはチームに貢献して『信頼』という資産を稼げ。面倒な調整もやって、チームを勝たせたという経験こそが、君が欲しがる最強の履歴書のピースになる」

このロジックを提示することで、「雑用」や「調整」といった彼らが嫌がる泥臭い業務にも、「将来の市場価値を高めるための投資」という意味付けを与えることができる。

会社・上司・Z世代「三方よし」のロジック

筆者自身、かつて外資系企業に身を置いていた時期がある。当時の上司との関係は、極めて健全な「取引」だった。上司は筆者にこう示した。「これから君に任せる連結決算や国際経営企画の業務は、市場価値が極めて高い。だが、それを任せるには周囲の信頼が必要だ。今の泥臭いタスクでチームを助け、信頼を勝ち取れ。そうすれば、君が望む高付加価値な仕事を任せる」

実際、転職検索をすると、確かにこのような会計職におけるレアスキルは今の自分の年収より高値で買われていた事実を確認できた。

俄然やる気になった。「会社のため」ではない。「自分の市場価値を高めるため」に、目の前の仕事に没頭したのだ。最初の頃は慣れない業務に苦心惨憺し、ホテルに泊まり込んで仕事を仕上げた。大変なことも多かったが、結果として、会社には成果がもたらされ、上司は管理目標を達成し、筆者は「高く売れる実績」を手に入れた。いわゆる三方良しという状態である。

これこそが、現代の上司が目指すべき「勝ち筋」である。上司は、部下に対して「君がお金を出しても買えない『市場価値が高まる経験』を、私が提供しよう」という、供給者側の優位性を持って接すればよい。

この構造を提示し、合意形成を図るのだ。仕事の割り振りは、もはや一方的な「命令」ではない。部下の将来のキャリアと、現在の労働力を交換する「有益な取引」へと変わる。

「厳しく言えない」と悩む必要はない。あなたが提示しているのは、彼らが喉から手が出るほど欲している「未来の食い扶持」なのだ。「この仕事をやり遂げれば、君の市場価値はこれだけ上がる。そのための責任を、君は負う覚悟があるか?」そう問いかけ、淡々と、しかし厳格に、プロフェッショナルとしての契約を履行させればよい。それこそが、互いに依存せず、自立したプロ同士の、健全な「大人の関係」である。

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プロフィール

黒坂岳央
黒坂岳央

1981年大阪府生まれ。実業家。学生時代から人間関係でなめられることに苦しみ、社会に出ても理不尽な扱いを受け続けた経験を持つ。しかし、その経験を逆手に取り、なめられないための戦略を研究、体系化した。現在は、本業のかたわら、アゴラ、プレジデント、Yahoo!ニュースなどネットメディアでニュース・オピニオン記事を執筆し、PVの最高値は1記事で150万PV超。テレビ朝日系、TBSラジオなどテレビ・ラジオ番組にも多数出演している。なめられる弱者だった立場から、自らを研究対象として積み上げてきた経験を土台に本書を執筆している。

著書

なめてくるバカを黙らせる技術

黒坂岳央 /
世の中「なめてくるバカ」が多すぎて、共感、感動、絶賛の声殺到! 大人気Web連...
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