人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

生き残るか? 見捨てられるか? 会社がいつまでも重宝する絶対スキル

「専門性」と「マネジメント力」はどちらも必要

高い専門性を持っている人であれば、リストラされることはありませんし、会社に頼らずとも転職や独立・起業、フリーランスとして活躍する道もあります。

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ただし、専門性を活かして転職や独立をするとしても、マネジメント力は必要です。指定された納期までにモノを納めなくてはならない、チームで一緒に働いている人に機嫌よくやってもらわなくてはいけない、仕事の経験が浅い人に教えなきゃならない、など、どんな組織や職種においても一定のマネジメント力は求められます。

また、高い専門性を持っていても、時代の流れとともに陳腐化してしまうリスクがあります。その技術や分野そのものが必要なくなってしまう場合も少なくありません。

IT系の企業で「50代の人はどうですか?」と聞くと「いやぁ、もう新しいスキルを身につけてくれないんですよね」といった話をよく聞きます。ゲームのプロダクションなどでも、第一線で活躍するクリエイターは若い人の感性みたいなものを求められますから、いつまでもピンのプレイヤーでやっていくのは難しい場合もあります。

高い専門性を持っていても、やはり一定のマネジメント力は必要です。また、自身の持っている技術・技能がこれから5年、10年、他にない価値を出せるかどうかも見極めなくてはなりません。もし時代に取り残されそうだったら、新しい知識やスキルを身につけることも必要でしょう。

歳を取っても生き抜く戦略は、「自身のスキルの体系化」

いずれにしても、40代、50代で必要になるのは、自身のスキルや経験を整理して、体系化しておくことです。これが3つ目の特徴で、最も重要なものになります。

体系化とは、「こうすれば成功する」「うまくいく」という自分なりのノウハウを棚卸しして、方法論として固めておくことです。

例えば、タスクマネジメントなら、明確な目標を設定し、そこに向かって計画を立て、リスクを想定したプランB、プランCを持っておいて、動き出したら、定期的な進捗の管理をし、リスクが発生した場合は、プランBを持って目標を達成する。どんな案件であっても、このノウハウを使って目標を達成できる。

ヒューマンマネジメントなら、部下の目指すべきキャリアビジョン・ライフビジョンを把握し、なければそれを考えさせ、そのうえで、そこに向かうためのキャリアプランや能力開発計画を一緒につくる。その進捗管理をすることが人材育成の体系のひとつです。

そして、部下の話を最後まで聞き、相手が考えていることをちゃんと掴んだうえで、「こうじゃないの?」と的確に伝え、部下が「そうですよね」と言ってくれるかどうかなど、コミュニケーションとは受信力と発信力と体系的に定義する。

ある程度のキャリアを積んできたら、このように自分が培ってきたマネジメント力や専門性を体系化し、普遍的なノウハウや仕組みに落とし込むことが必要です。

企業の昇格試験に立ち会っていると、「こうやったらうまくできます」と自身の方法論を確立できている人と、「うーん、それはケースバイケースですね」としか言えない人がいます。前者が体系化できている人、後者が体系化できていない人です。

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ケースバイケースで終わってしまうと、「じゃケースによって、うまくいく場合とうまくいかない場合があるんですね」となって、「部署や環境が変わったら成果を出せるとは限らない」と判断され、昇格は難しくなります。

一方、体系化したノウハウを複数のケースで試して成功した経験を持っている人は、「どんな部署や環境でもうまくいくよね」と判断され、重要な役職に昇格できます。

歳をとっても会社で生き残っているのは、あるいは世の中で広く活躍しているのは、自身の成功事例を体系化し、仕組み化できている人たちです。

「これをやったらうまくいく」「失敗する」という成功事例や失敗事例は、20年、30年と社会人をやっていれば必ずあるはずです。これまで培ってきたマネジメント力や専門性を汎用的に使えるよう体系化・仕組み化しておきましょう。それが歳を取っても会社で生き残ることにつながり、リストラ時代を生き抜く戦略になります。

次回につづく

 

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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