人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

50代社員は、年下上司とどう付き合うべきか

上司だって悩んでいる。上司の良き相談相手になる

年下上司も楽ではありません。年下上司が困っているときは、相談相手になってあげるのです。相手のほうが立場は上でも、年齢も経験もこちらが上。「そういうときは、こうしたらいいんじゃないの?」と助言してあげられることが何かあるはずです。年下上司の良き相談相手になることも、年上部下の重要な役割です。

また、年下上司の上長が出世した自分の同期ということもあるでしょう。そういう場合は「あいつ同期だから俺から言っとくよ」「一本電話入れとくから、あとで相談に行ってみな」などと言ってあげるのもいいと思います。そういうことができる年上部下はカッコよくないですか? 年下上司にとっても頼もしい存在になるはずです。

上司と部下は、組織における役割でしかありません。学校でいえば、相手は学級委員、こちらは飼育係、その程度の違いと考えてみてくだい。同級生が困っていたら助けるのは当たり前。まして相手は年下の後輩です。相談に乗ってあげたり、フォローしてあげるのは、先輩として当然の務めなのです。

後輩が上司になったからといって、自分を卑下する必要なんてありません。萎縮する必要もありませんし、遠慮する必要もありません。自分のできることや得意なこと、これまでの経験や人脈を活かして、お互いに助け合える関係を築いていけばいいのです。

後輩が上司になってもタメ口でいい。呼び方も変えないのが理想

「部下や後輩が出世して上司になった場合、今まで通りタメ口でもいいのでしょうか?
 呼び方も変えたほうがいいのでしょうか?」
50代の方々から、このような悩みもよく伺います。部下や後輩が上司になったらタメ口から敬語に変えた方がいいのか? 呼び捨てをやめて「さん」付けで呼んだほうがいいのか?

会社の雰囲気や相手との関係性にもよりますが、私はタメ口のままでいいと思います。
多くの人々の前など、丁寧な言葉を使った方がいい場面もあるかもしれませんが、1対1の会話だったら、これまで通りの話し方でいいのではないでしょうか。

呼び方も「〇〇課長」などと役職をつけて呼ぶのはありですが、普段の会話では「〇〇さん」と敬称をつけたりせず、これまで通りの呼び方でいいと思います。

相手が出世しても、先輩・後輩の関係は変わりません。急に態度を変えたりせず、これまで通りの関係を続けることが私は理想だと考えます。年下上司にしても立場が変わったからといって、先輩が急に態度を変えたらしんどいのではないでしょうか?

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上から目線で年下上司を馬鹿にしたり、「俺の後輩なんだからな」みたいな偉そうな態度をとるのはNGですが、立場をわきまえながら、普通に話したらいいのではないでしょうか。「俺はこう思うけど、お前はどう思う?」そんなスタンスで全然OKだと思います。

年下上司にしても、立場が上になったからといって急に威張り出したりするのはどうかと思います。年上部下が急に態度や呼び方を変えたら「いやいや、そのままでいてください」「さん付けなんてしないでください」と伝えることも、年下上司の大事な役割です。職位というのは、役割の違いであって、偉さの違いではないのです。

今、定年後再雇用制度によって60歳を過ぎて定年になっても多くの人が再雇用されることが現実的に起こっています。65歳以降も努力義務になっていますから、役職から外されてプレイヤーとして働く中高年がどんどん増え、年上部下は今後ますます増えていくでしょう。

これからは会社全体として、あるいは社会全体として、年上部下と年下上司がお互いをリスペクトし合い良い関係を築いていくことが望まれていくはずです。サッカーの三浦知良選手も50代になってもプレイヤーとして活躍しています。おそらく年下のコーチとも良い関係を築いているのではないでしょうか。50代は、そんな働き方を目指していきましょう。

次回につづく

 

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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