小川流2018燕改革!

若手中継ぎ陣の台頭はなぜ起こったか?
鍵は、実戦における「小さな成功体験」

2018.08.24 公式 小川流2018燕改革! 第11回

球場の違い、環境の違いに左右されず、
普段の実力をいつでも発揮できるように

――「ホーム」と「ビジター」という観点からお尋ねします。ホーム・神宮球場では満員御礼が続いていて、大歓声の中でのびのびとプレーしているように思えます。その一方では、なかなかドーム球場で勝てなかったり、マツダスタジアム、甲子園球場など、相手チームの応援に圧倒されるケースでは、なかなか勝てないですね。

小川 確かに球場の違い、環境の違いというのはあります。ドーム球場だからどうとかは思わないけど、たとえばナゴヤドームのような広い球場では、投手の攻め方も変わってきます。ナゴヤドームだと大胆に攻められるのに、神宮だとホームランが出やすいので慎重になりすぎてフォアボールを出すこともあります。それぞれの球場に特徴があり、それを生かしたプレーや采配をしなければいけない。でも、なかなか結果が出ないのは事実です……。バレンティンは、「甲子園はホームランが出にくいからイヤだ」と冗談を言っていますね(笑)。

――真っ赤に染まるマツダスタジアム。あるいは、黄色一色の甲子園球場。この辺りは、選手のプレーにも影響を与えるものなのですか?

小川 当然、影響はあります。大したピンチじゃないのに、ものすごくピンチのように感じるケースはあると思いますね。たとえば、まだ3点リードしているのに、相手ランナーが一人、出塁しただけで大ピンチのように感じさせてしまう。神宮だったら、決してそんな雰囲気にはならないのに、ビジター球場だと、ついそんなムードになってしまう。もしも、ここでホームランを打たれたとしても、「まだ1点、勝ってる」とはなかなか思えない。そんな感じです。

――そうすると、神宮球場が多くのヤクルトファンで満員になり、球場全体が緑に染まる中で大声援を受けるというのは、選手たちにとってのエネルギーになっているのですね。

小川 もちろんです。本当に、ファンの方の声援というのはとてもありがたいし、選手たちの力になっています。今シーズンも、ホームでの成績が圧倒的に勝率がいいというのは、そういう要因がとても大きいと思っています。でも球場や環境の違いを気にすることなく、実力を発揮できるようにならないといけないと思っています。

――さて、ペナントレースも、残り30試合強となりました。当然、クライマックスシリーズ(CS)も視野に入れての戦いが続くと思います。どのような展望を持っていますか?

小川 昨年、あれだけ負けて、今年も5割前後を行ったり来たりしているチームがこんなことを言うのはおこがましいとはわかっていますが、それでも当然、他球団との争いが続いている現状では、CSも視野に入れる必要があると思っています。でも、今はまだ「目の前の一勝」にこだわる姿勢の方が大切だと考えています。性格的な問題もあるのか、僕はまだ慎重な姿勢を崩していないけれど、野手ミーティングにおいて、石井琢朗はかなりCSを意識した発言をしていますね。

――石井コーチは、どのような発言をしているのですか?

小川 「オレたちが目指すのは上しかないんだ」とか、「打倒カープだ」と、選手たちを鼓舞しています。それはとてもありがたいことですね。僕自身は、「まだまだおこがましい」という思いがあって、自分の頭の中だけで意識していることです(笑)。とにかく、目の前の試合を一戦、一戦、大切に残り試合に臨んでいきます。

 

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プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

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