小さな幸せの見つけ方

心から大切な人がいると、人は強くなれる

2017.11.06 公式 小さな幸せの見つけ方 第7回
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人を大切に思う「無条件の優しさ」

自分の恐怖心や不安な気持ちを差し置いて、弟の恐怖心や不安を取り除こうとするお姉ちゃんの姿、これはなかなか真似できることではありません。

普通は、まず自分の恐怖心や不安な気持ちでいっぱいになって、周りの人のことなど考えようとしないのではないでしょうか。もし私が、お姉ちゃんの立場であったなら、きっと一緒に弟と泣いて、迷子になった場所から動けずにいたと思います。

しかし、どうしてお姉ちゃんはこのような勇気ある姿勢をとることができたのでしょうか? 私はいろいろと考えた結果、一つの理由に辿り着きました。それは、お姉ちゃんは弟のことが大好きで、とても大切に思っていたからです。

極めて単純ですが、お姉ちゃんの強さの原点はここなのです。人は心から大切に思う人がいると、強くなれるのですね。それこそ、自分のことなど考えもせず、その大切な人に寄り添おうとするのです。これは理屈ではありません。その姿勢には、見返りを期待したり後先を考えるような、「はからい」の気持ちなどありません。ただ必死なのです。

今日、私たちにもそれぞれ大切な人がいると思います。しかし、その人はどのような意味で大切なのでしょうか? その人が好きだから、自分にとって都合がいい人だからなど、いろいろな理由があるでしょう。しかし、数多くいる大切な人の中に、無条件に大切だと思える人は、いったいどれくらいいるでしょうか?

お姉ちゃんを見ていて、人を大切に思う「無条件の優しさ」の姿というのは、本当に素敵だなと思いました。それは見ている人をも感動させます。

しかし、ここで忘れてはならないのは、私たちは気が付かないだけで、家族や周囲の方から「無条件の優しさ」を受け取っているということです。これに気が付くためには、まず自分が「無条件の優しさ」を実践することです。

お姉ちゃんがお母さんの顔を見た時、きっとお母さんの顔は、走ってきたので息も切らし、心配でたまらない真っ青な表情だったと思います。しかし、その顔には「無条件の優しさ」が溢れていたのだと思います。それを感じ取ったからこそ、お姉ちゃんは安心して泣いたのです。

ぜひとも、ご自身が大切に思う人への気持ちに寄り添って行動してみて下さい。そこからきっと、寄り添われていた優しさが見えてくるはずです。

 

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プロフィール

大來尚順
大來尚順

浄土真宗本願寺派 大見山 超勝寺 住職
著述家/翻訳家

1982年、山口市(徳地)生まれ。龍谷大学卒業後に渡米。米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。僧侶として以外にも通訳や仏教関係の書物の翻訳なども手掛け、執筆・講演・メディアなどの活動の場を幅広く持つ。2019年、龍谷大学 龍谷奨励賞を受賞。著書に『あなたは、あなた。』(アルファポリス)『超カンタン英語で仏教がよくわかる』(扶桑社) 『小さな幸せの見つけ方』(アルファポリス)など多数。

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